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再生ABS‐GF VRヘッドセットハウジングと重量35%低減

再生ABS‐GFによるVRヘッドセットハウジングと重量35%低減の実際
はじめに:VRヘッドセットの進化と素材課題
近年、VRヘッドセットはエンターテインメントや産業用途において急速に普及しつつあります。
特に、装着感や長時間使用時の疲労軽減が強く求められる中で、筐体(ハウジング)素材の選定は極めて重要な課題です。
そんな中でも「再生ABS‐GF(ガラス繊維強化再生ABS)」の活用と、重量の飛躍的な低減が注目されています。
本記事では、再生ABS‐GFを採用することでどのようにVRヘッドセットの重量35%低減を実現したのか、製造業現場目線で深掘りし、バイヤーやサプライヤー、そして製造現場で働く方々に向けて分かりやすく解説します。
業界トレンド:サステナブル素材への転換
今、世界中の製造業が「サステナビリティ」と「省エネ化」を至上命題としています。
ここ日本でも、従来型の新材重視から再生樹脂導入にシフトするメーカーが増えつつあります。
それでも「昭和型の大量生産・大量消費」から抜け出せない現場も少なくなく、アナログ的な素材選定や製造手法が根強く残っています。
特に生産現場では「品質が不安定ではないか」「金型が合わないのではないか」「価格メリットが読み切れない」といった不安がサプライヤーにもバイヤーにもつきまといます。
しかし、実際には再生ABS‐GFは徐々に業界に受け入れられ、本格的な普及が始まっています。
再生ABS‐GFとは何か?その特徴と利点
再生ABSは、家電や自動車部品など既廃プラスチックを再生利用した樹脂であり、樹脂原料コストやCO2排出量の低減が見込まれる素材です。
ABS単体だと靭性や加工性は良いのですが、剛性や耐熱性が限られる場合があります。
そこで「GF(ガラスファイバー)」を加えることで材料強度や剛性、耐熱性が飛躍的に向上します。
再生ABS‐GFの特徴として、
・再生材による環境負荷の低減
・ガラス繊維による強度確保と薄肉化設計の可能性
・成形時の寸法安定性や反り低減
などがあります。
VRヘッドセットハウジングに再生ABS‐GFを選択する理由
VRヘッドセットのハウジングに求められる仕様は多岐にわたります。
・長時間装着しても首や顔に負担が少ない軽量性
・落下や曲げにも耐えうる強度や靭性
・複雑な形状が安定して出せる成形性
・外観としての光沢や色調
こうしたニーズに一般的なABSやポリカーボネート(PC)だけでなく、再生ABS‐GFがフィットする理由は「強度を保ちつつ薄肉・軽量化可能」であり、「サステナビリティ要件」も満たすことにあります。
35%の重量低減、その本質と設計思想
そもそも、なぜこれほどの重量低減が可能なのでしょうか。
再生ABS‐GFは、同じ強度を保ったまま従来比でより薄く設計できるため、材料使用量自体を低減できます。
従来の新材ABSと比較すると、
・厚肉設計(2.0mm→1.3mm)でも剛性を維持
・ガラス繊維の補強による曲げ、ねじれへの高耐性
・薄肉化で全体重量低減
というダブルの効果が発生し、最終的に35%の軽量化を達成できるのです。
設計担当や工場現場からすると「本当に大丈夫か?」という疑問が出るのも当然ですが、材料物性シートや検証試験データの積み重ねによって信頼度は着実に向上しています。
「最初にチャレンジしたモノ勝ち」、そんな空気感も現場には漂っています。
調達購買・バイヤーの視点:コストとリスクコントロール
バイヤー視点では、再生ABS‐GF採用には大きく3つのポイントがあります。
1. 調達コストの最適化
2. 安定供給体制(リスク分散)
3. サステナブル経営対応、SDGs・カーボンニュートラル対応
再生ABS‐GFは原材料市場の需給変動に強く、サプライヤーネットワークの多様化も進んでいます。
調達先を開発することで、時として新材ABSよりもコストを抑えつつ、品質保証や納期の安定化を図ることができます。
また、サプライチェーンの透明化やトレーサビリティ確保の面でも、先進的なアプローチが志向されています。
サプライヤー視点:競争力をどう高めるか
サプライヤー側から見れば、
・単なる安売りでなく技術面で他社にない強みを出す
・「薄肉化設計支援」「成形技術提案」などの付加価値
・エンドユーザー志向での共同開発スタンス
こうした点で新たな競争力が求められます。
特に、昭和型の素材提案ではなく、
「軽量化」「CO2排出量削減」「サステナブル認証」といった要素を持ち出す営業・技術提案が今後は主流です。
最終的には「お客様と一緒に問題解決する」姿勢が重要であり、資料や数字の裏付けを持って現場に踏み込むことが大きな信頼につながります。
現場設計者・生産担当者のリアルな課題と対応策
現場では、素材変更による成形条件の調整や製品仕様の見直しが不可避となります。
・流動性確保のための金型設計修正
・ハウジングのバリやウェルド・ライン(溶着線)対策
・GF含有による表面品質制御
・二次加工(塗装、印字等)への対応力
こうした「泥臭い調整」が必要です。
実は、ヒューマンネットワークや生産現場の暗黙知がモノを言う領域でもあり、いかに情報交換できるかが肝となります。
従来品との違いを十分理解し、現場主導で「実験→フィードバック→量産最適化」をまわしていくアプローチが実効性を高めます。
サプライチェーン・全社的な変革と意識改革の必要性
仮に技術的な課題がクリアされても、全社的な変革を阻む壁が残る場合があります。
・稟議決裁まで時間がかかる組織構造
・「前例踏襲」が根強い日本的企業文化
・形式重視の品質保証体制
ここを突破するには、生産技術や調達、営業、品質など多部門横断の協力が不可欠です。
また、積極的に新しい市場動向や法規制(プラスチック資源循環促進法など)へのキャッチアップも必要です。
これを怠ると、競合他社に一気に差を付けられてしまいます。
ラテラルシンキングで生みだす付加価値
再生プラスチックや軽量設計といった「現場の定石」をさらに超えるにはラテラルシンキング、つまり既存の枠組みにとらわれずに考える力が重要です。
例えば、「外形同一でインナー構造をハニカムにする」や、「モジュール設計による組立工数削減」などは、その結果さらなるコスト・重量低減や総合的な環境負荷の低減につなげることができます。
また、製品のLCA(ライフサイクルアセスメント)を軸に複数素材を組み合わせる「ハイブリッド設計」や、「スクラップ材の再度社内循環」など新しいサプライチェーンの構築も考えられます。
まとめ:再生ABS‐GFと製造業の未来
再生ABS‐GFを活用したVRヘッドセットハウジングの軽量化は、サステナブル社会の実現を志向する上で大きな一歩です。
バイヤー、サプライヤー、現場設計者、それぞれの立場から見ても、「やってみたい」「挑戦してみたい」テーマであることがお分かりいただけたと思います。
昭和的なアナログ思考にとらわれず、現場から新たな価値を創造し、業界全体の変革をリードしていきましょう。
「失敗を恐れずチャレンジする現場風土づくり」こそ、これからの製造業の強さだと現場で感じています。
皆さんもぜひ、再生ABS‐GFによる軽量化やサステナブル設計に注目し、自分たちなりの新しい価値創造に取り組んでみてください。
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