- お役立ち記事
- レーザー溶着の採用可否を遮光設計と樹脂選定で判断し組立工数を削減
レーザー溶着の採用可否を遮光設計と樹脂選定で判断し組立工数を削減

目次
はじめに:レーザー溶着がもたらす現場革新の可能性
製造業の現場では、品質向上とコストダウン、そして省力化が永遠のテーマです。
中でも、組立工程の合理化は現場スタッフから工場長、経営層に至るまで、目の色が変わる話題のひとつでしょう。
近年、組立の新スタンダードとして注目度が高まっているのが「レーザー溶着」です。
本記事では、レーザー溶着の採用可否を「遮光設計」と「樹脂選定」という現場密着型の観点から考察し、従来のアナログ組立を凌駕する省工数化への道筋を掘り下げます。
バイヤー志望の方やサプライヤーの皆様、製造業で働くすべての方に、現場の「本音」と「未来」をお届けします。
レーザー溶着とは:今なぜ製造現場で注目されているのか
レーザー溶着の基本原理
レーザー溶着は、高出力のレーザー光を樹脂部品の接合面に照射し、熱溶融させて短時間で溶着を実現する方法です。
従来の熱板溶着や超音波溶着に比べ、クリーンかつ強固な接合が可能で、微細精度も高く、異物混入リスクも大幅に軽減します。
アナログな現場にこそ活きるレーザー溶着の利点
昭和から続く現場では、未だにボルト締結や接着剤利用など手作業に頼る部分も多いのが現実です。
レーザー溶着は、一度条件さえ決めてしまえば極めて安定した接合品質を自動化ラインで再現できます。
「工数削減」「不良率の低減」「品質の平準化」など、現場課題への直接的な答えでもあるのです。
ただし、材料選定と設計要件の壁さえ乗り越えられれば――という条件付きで登場する点も製造現場らしい話です。
第1の関門:遮光設計がレーザー溶着可否の分水嶺
遮光設計=レーザー光をコントロールする基盤
レーザー溶着の最重要要件は、「レーザー光が適切に溶着部位へ届き、正しく吸収されること」に尽きます。
このため、まさに設計段階から「溶着面にレーザーが確実に到達」するよう、製品・部品レイアウトに徹底した“遮光設計”が求められます。
たとえば、部品の色や厚み、形状――。
これらが障害となって、レーザービームが想定溶着面にきちんと届かなければ、溶着そのものが成り立ちません。
特に、意外にもタブーとなるのは「不透明な着色樹脂の使用」や、「複雑なリブ構造」などです。
現場目線の遮光設計チェックポイント
1. 溶着ラインに他の部材や構造体が影を落とさないか
2. 溶着部がレーザー径より十分に広いか
3. レーザー照射中に部品がズレて遮光しないか
4. 必ずしも“漠然と樹脂黒色=ダメ”ではなく、波長に応じた吸収性を見極める
実際、開発段階においては3D-CAD上のシミュレーションだけでなく、簡易的なラジエーションチェッカーやテスト品を作成し、現物検証と現場の知見をフィードバックすることが功を奏します。
このアナログとデジタルの往復が、現場で「使える」レーザー溶着導入のリアリティなのです。
第2の関門:樹脂選定で決まる溶着品質と工場実装の成否
樹脂は溶着の“コア技術”に直結する
レーザー溶着には、少なくとも異なる2種類の樹脂特性が求められます。
ひとつは、レーザー透過層(通常は透明~半透明の上部樹脂)。
もうひとつは、レーザー吸収層(炭素ブラック等を練りこんだ下部樹脂)です。
選択肢に挙がるのは、ABSやPC(ポリカ)、PBTなどのエンジニアリングプラスチックが主流ですが、それぞれ溶着時の化学的親和性や熱膨張率などが関与します。
故に、「従来のお手頃価格の汎用樹脂でそのまま行ける」とは限らず、現場で起きがちな“予定外の材料変更依頼”には要注意です。
現場発想の樹脂選定チェックポイント
1. 必要な溶着強度が樹脂同士で発現できるか
2. 溶着部断面の溶け込みが均等に出るか
3. 成形時の離型性や寸法安定性(ヒケ・ソリ等)も視野に入れる
4. 想定条件下(高温・薬品など)使用環境に耐えうるか
工場レベルの量産時には、成形バラツキや不良も考慮し、品質保証側と連携した試作・測定の繰り返しで最適樹脂を見極める姿勢が不可欠です。
ここでも設計部門と現場の「壁」が立ちはだかりやすいですが、意思疎通を怠れば溶着不良リスクが跳ね上がるため、現場を巻き込んだ推進が最重要となります。
レーザー溶着導入 現場工数削減へのインパクトとは?
実務に基づく工数削減効果
・手作業でのボルト締結、接着剤塗布、クリップ嵌合と比較し、作業時間が最大70%以上短縮
・不良品の発生率削減(手作業特有ムラの解消・トレーサビリティも向上)
・材料・部品在庫も減少(溶着治具簡素化、部品点数削減)
・組立従業員の熟練度依存性の排除(省人化ラインへ置換)
これらは組立現場に直接的なコストメリットをもたらすばかりでなく、「より高度で付加価値の高い業務へ現場リソースをアサインできる」効果も実現します。
まさに、レーザー溶着の本当の価値は、技術アドバンテージだけでなく現場働き方改革への波及にあるのです。
既存生産現場への展開は“段階的導入”がカギ
完全自動化や全品レーザー化は理想的ですが、多くの工場では導入コストや既存治具の流用、樹脂材料の調達制約などで“一気通貫の転換”が難しいのも事実です。
このため、現実的には以下のような「段階的な運用」が推奨されます。
・まずは組立工数と品質問題のボトルネック工程から優先的に試験導入
・並行して従来プロセスを“バックアップ”として併用(突発対応力の維持)
・時間をかけて新工程の歩留まり・工数効果を現場スタッフ主体で評価
・成果大の工程を順次拡大していく“スモールスタート&カイゼン”
この「現場が納得しながら進める」実装アプローチこそ、昭和から続く現場に根付いた、日本製造業特有の強みなのです。
サプライヤー、バイヤーが知っておくべき「現場のホンネ」
サプライヤー視点:なぜバイヤーはレーザー溶着を求めるのか
・歩留まり向上による下流クレーム減少が期待できる
・開発初期から調達要件に「生産性可視化」「工数検証」を含めやすい
・自動化設備投資のROIが明確化し、全体最適の提案が可能
従来以上に「設計連携」「材料調達の柔軟性」「初期ヒアリングの密度」など“パートナー力”が要となる時代です。
バイヤー視点:サプライヤー選定の新潮流とは
・遮光設計~樹脂選定~ライン実装まで“一気通貫”対応できる企業に注目が集まる
・自社工程だけでなく、サプライチェーン全体の生産性/省人化に資する調達が評価される
・コストダウンのみの追求は時代遅れ、“品質×生産性×環境負荷”のバランス型選定へ
バイヤー志望であれば、単に価格交渉力だけでなく、“現場プロセス起点のバリューチェーン評価力”が問われる時代です。
まとめ:レーザー溶着で切り拓く新たな製造現場とは
レーザー溶着は、最先端の省力化技術であると同時に、「遮光設計」と「樹脂選定」の2大現場課題をクリアしなければ真の効果を発揮できません。
リアルな現場では、試作と検証を一体化させた段階導入や、部品の材料・設計・品質まで一貫して目利きできるバイヤー・サプライヤーの存在が不可欠です。
昭和のアナログな現場が持つ“試行錯誤の現場力”と、デジタル自動化の“技術進化”が融合することでこそ、組立工数の劇的削減と日本製造業らしい「高品質・高効率」の新たな地平線が切り拓かれます。
ものづくりの現場に携わるすべての方へ――。
ぜひ、遮光設計と樹脂選定という、技術×現場力の両輪から、次代の製造現場へ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)