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共同配送の導入で地方拠点の内陸費を安定的に下げる

目次
はじめに―地方工場の物流コスト、なぜ高止まり?
日本の製造業において、地方拠点の物流コスト、特に内陸費が慢性的に高止まりしている現状は、多くの現場で頭を悩ます問題です。
都市部に比べて輸送距離が長く、荷量の変動が大きく、チャーター便や小ロット輸送が中心となるため、効率的な配送が難しいのが地方拠点物流の特徴といえるでしょう。
加えて、2024年問題と呼ばれるトラック運転手の時間外労働規制や、燃料費の高騰、ドライバー不足など、業界構造は急激に変化の波に直面しています。
そこで今、地方工場の内陸物流コストを安定的に、かつ着実に下げるための新たなソリューションとして「共同配送」の導入が注目されています。
今回は、現場歴20年以上の立場から共同配送の導入メリットや現実的な運用ポイント、昭和的アナログ体質が根付く業界ならではの実情も踏まえ、徹底的に深掘りしていきます。
共同配送とは何か?現場視点で定義する
共同配送とは、複数のメーカーやサプライヤーが、それぞれ個別にチャーターしていた貨物輸送を1つに集約し、同じ配送網を活用して納品先に一緒に運ぶ物流手段です。
トラック1車両の積載率を向上できるので、コスト削減、CO2排出削減、配送回数削減、ドライバーの負担軽減など、サプライチェーン全体への好影響が期待されています。
都市部よりも配送先が分散している地方拠点では、特にその恩恵が大きくなります。
例えば、ある地域に工場A社、B社、C社があり、それぞれの取引先・納品先が同じエリアに点在している場合、従来は3台のトラックが別々のルートを走っていたものが、共同配送によって1台または2台に絞ることができます。
ここで大事なのは「競合同士」ではなく「取引先が被らない隣り合うサプライヤー同士」「製品ジャンルや取引ネットワークが重複しない企業同士」が自然にタッグを組むことです。
これにより、メーカー・サプライヤー・バイヤーの三者にとって無理のない、現場目線の運用が可能となります。
地方拠点で共同配送が活況なワケ
輸送距離とトラック稼働率の問題
地方工場は、都市部のように量産品を一斉に大量出荷する機会が少ないです。
また、納品先や販売網も分散しているため、輸送距離が長くなりがちです。
個別配送では積載率が50%未満であることも多く、結果として1個当たりの送料負担が高騰します。
共同配送で近隣拠点の荷物を束ね、トラック1台あたりの稼働効率を引き上げることで、自然と「物流のムダ・ムラ・ムリ」を削減できるのです。
求められる安定供給とコンプライアンス対応
大手メーカーに限らず、昨今はサプライヤーにも「納期遵守」「在庫ロス低減」「エコロジー対応」など、SCM全体の高難度な要求が突きつけられています。
ドライバーの労働時間管理・物流2024年問題への対応など、物流契約の厳格化も加速しています。
共同配送は、帳票・伝票のデジタル化や標準化を進めやすい仕組みでもあるため、コンプライアンス面でも現代的な解決策となります。
アナログからの脱却、昭和的な壁をどう超える?
業界に根付く「うちのやり方絶対主義」
今も多くの地方メーカーでは、「納品は朝8時きっかり」「伝票は紙」「運送会社は昔からの付き合い」など、柔軟性に乏しい習慣が根強く残っています。
こうした伝統的なアナログ文化が、なかなか共同配送の構築を困難にしています。
現場からは、「他社と荷物を混ぜて大丈夫か」「自社都合が通らなくなる」「責任範囲が曖昧になる」など、不安の声もよく聞かれます。
しかし、実際には工場ごとに固有の手配や出荷業務を「標準化」できる絶好のきっかけとなりえます。
みんなで集まり、議論し、共同配送のガイドラインを確認する過程こそが、現場改善・作業効率化の絶好の推進力になるのです。
「人情物流」「義理人情」からの脱却
かつては「うちの工場にはあの運送会社の◯◯さんしか入れない」「困った時は電話一本で何とかする」など、人と人とのつながりに頼った運用も多く見受けられました。
こうした昭和的アナログ調達も強みではありましたが、サプライチェーンの複雑化と業界再編の波の中で、今やリスクにもなり得ます。
共同配送を導入することで、物流品質・コンプライアンス・情報化の「見える化」が一段と進みます。
協力しやすいサプライヤーを選定することで、「選ばれる存在」「持続可能な物流インフラ」に近づくことができるでしょう。
共同配送導入の具体的プロセス
1. 地域・エリア特性の見極め
最初に着手すべきは「どの地域で」「どの取引先向けに」共同配送を導入するのが効果的か、エリア解析を行うことです。
地図上に納品先や拠点をプロットし、出荷量・頻度・製品の物理的特性(常温・温度管理・同梱可否など)をすべて見える化しましょう。
物流子会社や3PL(サードパーティ・ロジスティクス)とタッグを組み、交通事情や倉庫特性も考慮します。
2. 近隣サプライヤー・協力工場とのマッチング
共同配送は、適切なマッチングが成否を分けます。
自社と輸送エリアや荷物属性が重ならないサプライヤー、あるいは得意先での競合リスクがない協力工場など、柔軟にパートナーを選定します。
場合によっては商工会、ローカル産業団地、業界組合など第三者ネットワークの仲介を依頼するのも効果的です。
他社の稟議ルートや経営判断ペースも尊重して、長期的な信頼関係を意識しましょう。
3. 配送ルート・スケジュールの設計
最も工夫が求められるのがこのステップです。
納品タイミング、荷積み・荷降ろし手順、トラックの車種選定、立ち寄り順序など、物流現場と現場で柔軟に調整しなければなりません。
場合によっては荷役スタッフの標準教育や、バーコード・RFID管理などデジタル化も組み合わせていく必要があります。
「カイゼン」「5S」など日本製造業の現場力を徹底的に活かしましょう。
4. コスト配賦と運用協定の締結
配送費の配賦方法(荷量按分、距離按分、ストップ数均等割など)を公正に定めることが肝です。
また、問題発生時のトラブル対応フローや、品質管理ルール、運送会社・ドライバーの選定基準なども合意文書にまとめておきましょう。
協業トラブルを防ぐため、第三者立会いや監査の仕組みも重要です。
バイヤー・サプライヤー視点での共同配送導入効果
バイヤー:安定調達とサプライチェーン強化
共同配送により物流コストが圧縮されれば、その分を原材料高騰や急な発注増に備える費用に回せます。
サプライチェーン全体のリスク分散も進み、供給安定性が増すため得意先からの信頼向上にも直結します。
バイヤーとしては、自社要望ばかり押し通すのではなく、サプライヤーに「こうすればコストダウンできる」という物流側からの提案力も求められる時代です。
サプライヤー:スケールメリットと受注拡大
ロットあたりの物流コストが下がることで、同業他社との価格競争力も大きく向上します。
また、共同配送網にスムーズに適応できるサプライヤーは、顧客から「選ばれる仕事相手」になれます。
新規顧客開拓や受注窓口拡大にも繋がるのは、大きなポイントです。
成功事例:地方拠点の共同配送導入ストーリー
ある地方都市の食品加工メーカー数社は、これまで独自にチャーター便を手配し、それぞれの得意先へ個別配送していました。
しかし、燃料費高騰と人員不足による値上げ圧力が強まり、各社の物流担当者が集まり「共同配送可能性調査会」を設置。
外部コンサルのアドバイスで配送ルートを可視化し、荷物の品目・量・頻度の相性が良い企業からパイロットプロジェクトをスタートしました。
最初は契約書や配分ルール調整に苦労したものの、トラブル時の連携や物流ノウハウの共有を通じ、短期間で信頼関係が醸成されました。
半年後には物流コストが従来比25%削減、年間CO2排出量も2割カット。
従業員の働き方改革や繁忙期と閑散期の配送安定化にも繋がりました。
まとめ―新時代の現場力で持続可能な物流を
地方拠点の製造業が共同配送を導入し内陸費を安定的に下げるには、昭和的な慣習や既得権益から一歩踏み出した「新しい現場力」が求められます。
効率化と共助の精神で、周辺産業とのつながりや情報発信も大切にしつつ、これからのデジタル時代・カーボンニュートラル時代にふさわしい物流の形を一緒に創っていきましょう。
経営者も現場担当者も、ぜひ意識的に共同配送の可能性を探り、新たな生産・調達、サプライチェーンの主役になってください。
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