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港選定と混載戦略で日本発輸送費を20%下げる実務

目次
はじめに:製造業の国際物流コストは「港」と「混載」で決まる
製造業がグローバル市場で競争力を保つうえで、避けて通れないのが国際物流コストの抑制です。
原材料や部品、完成品の輸出入では、サプライチェーンが複雑に絡み合い、調達・購買担当者を悩ませる課題も多岐にわたります。
特に日本発の輸送において“気がつけば莫大なコスト”となりがちなのが、港選定の固定化と、混載(LCL: Less than Container Load)戦略の軽視です。
昭和的な「長年使ってきた港だから」「フルコンテナ(FCL)でないと信頼できない」といった固定観念が、実は大きなムダを生んでいる可能性は意外と見過ごされています。
本記事では、20年以上の製造現場管理職経験者の目線で、港選定と混載戦略の見直しにより、日系メーカーの輸送費を平均20%削減した実務ノウハウを余すことなく公開します。
バイヤー志望者のみならず、サプライヤーサイドでバイヤーの本音を知りたい方にも役立つ内容です。
なぜ港の使い方で輸送費が20%も変わるのか?
港選定が抱える「使い続けるムダ」と隠れたコスト構造
多くの企業では、本社の物流部門や長年の商習慣により、特定の港を固定的に利用しているケースが目立ちます。
例えば、愛知・岐阜・滋賀などの中京圏のメーカーであれば、名古屋港や四日市港以外は検討すらしないことが多いです。
しかし、習慣的な港選定は「最適な潮流を見逃す」リスクを孕んでいます。
というのも、以下の点が物流コストに大きな影響を与えるからです。
- 港までのドレージ(トラック輸送)費用
- 港ごとのコンテナ輸送基本運賃の差
- 船積みスケジュールや本船到着の頻度
- 小口混載などの利便性やサービス品質
港までの陸送費が一見安くても、港から船に積み替えた先で航路選択の幅が少なく、結局運賃が上がってしまう例が多いです。
また、新しい港や混載業者を試さない風土が、“港・フォワーダー界隈のシェア独占と高止まり運賃”を裏で支えています。
混載サービスの進化、業界構造変化をキャッチできているか
一方で近年、混載(LCL)サービス各社の品質は急速に向上しています。
昭和時代の「まとまった大量ロットでなければFCLが常識」という発想から脱却できていない企業は、今なお多いです。
しかし、近年の混載業者は、
- ITによる出荷・到着ステータスの可視化
- 24時間内納品、きめ細かな分納や追跡機能
- 危険物・大型品への対応力強化
- サプライチェーン複雑化への柔軟性対応
など、FCLに近い信頼性とフレキシビリティを実現しています。
特に、コンテナ1本に満たない一定の少量以上、しかし各納品先ごとに分割して海外へ出荷したい場合など、混載は大きな貢献を果たします。
実務でコスト差が生じる3つのポイント
1. 港と納品先・仕向地のマッチング精度
同じ愛知発でも、
- 上海向けなら名古屋港から直行便が有利
- 東南アジア向けなら神戸、大阪港経由が安いことも
- 関東・北陸方面スタートなら、意外と名古屋より東京・横浜・新潟が有利
このように、出発地×目的地の組み合わせごとに最適な港が異なります。
特にアジア圏のように便数が多く、混載スペースも豊富な地域向け輸送の場合、「地元の港」が必ずしも適切ではありません。
工場ごとに陸送費・通関コスト・本船運賃・混載スペース可用性など、総合的なコスト比較を行う必要があります。
2. FCL信仰からの脱却と、最適ボリュームの算出
年間を通してFCL1本にも満たない出荷を“満コンテナ扱い“で手配していませんか?
ロットサイズが安定しないために、
- 船会社に余分な空間運賃を払っている
- 部分的に混載併用できるにも関わらず、手間を理由に全量FCL化
こうした無駄は珍しくありません。
混載に切り替えるだけで、重量単価あたりで最大30%以上コストダウンできた事例もあります。
特に自動車周辺部品やハーネス、弱電の金属プレス品など、複数の協力工場を集荷するタイプの商材は、混載との親和性が高いです。
荷姿もFCLにこだわる必要はなく、ケース単位・パレット単位等、柔軟な対応が可能な業者を見つけることが“新しい地平線”を切り拓く鍵となります。
3. 新興混載フォワーダー/ITプラットフォームの活用
AIやクラウドを活用した新興混載サービスが台頭し、高止まり運賃の構造は崩れつつあります。
従来型フォワーダーに比べ、価格ガラス張り・即時見積もり・複数社自動比較といったサービスを活用できれば、端的にコスト削減効果が現れます。
特に、以下のような点に注目しましょう。
- 混載スペースのダイナミックプライシング(価格の自動変動)採用企業
- 輸出入書類の電子化対応、B/LやINVOICEのオンライン処理
- リアルタイムトラッキング、到着予測の可視化
これらのシステムを組み合わせることで、手間を増やすことなく、港・混載業者の組み合わせ最適化に取り組めるのが特徴です。
現場目線での港・混載最適化プロセス
1. 輸送ボリュームと仕向地のデータ出し
まず、過去1〜2年の実績データから、
- 出荷頻度(ロット回数)
- 仕向先・拠点ごとの荷量・荷姿
- 現状の港利用パターン
を洗い出します。
製品群によって、パターンは大きく異なることも多いです。
例えば、Aラインの小型部品は毎週上海・ホーチミンへ、Bラインの大型品は月1回アメリカ西海岸へ、という具合に。
これを一覧化することで「どこで混載に切り替えられるか」「どの港が適切か」の第一歩を踏み出せます。
2. 複数港・混載業者による運賃・リードタイム見積もり
次に、現場に対して
- 港A or 港B or 港Cを使った場合
- FCL or LCL混載で分割した場合
のパターンごとに具体的な料金・リードタイムを現地の混載業者・フォワーダーに依頼します。
「やったことがない」「慣れていない」ことを理由に、他の港や混載を試さない企業が多いですが、実は業者側は(とくに新興勢力は)柔軟にテストパターンの見積もりを出してくれます。
ラテラルな視点では、“コストダウン=新規投資や削減交渉”と考えがちですが、既存業務の組み合わせ再設計こそ最大の成果を生むことがあります。
3. 社内手続きや税制・規則への適合性検証
新しい港や混載業者を使う場合、社内申請やクライアントとの取り決め(例:S/I、VGM、インボイス発行担当等)を整理する必要があります。
稟議制の強い企業ほどここで「前例がない」「担当者リソースが足りない」を理由に止まりがちです。
ですが、近年の業者は
- 書類一括フォーマット・電子化対応
- 指定倉庫から混載引取まで一貫体制
- 税制・法規での港間取り扱い差異の自動通知、および事前手続きサポート
といったサービスも強化しているため、外部ベンダーを積極的に巻き込むことが解決策を生みます。
4. 現場担当レベルの追加コスト・業務工数も定量評価
定量的な輸送費ダウンが実現できても、現場担当者の稼働工数が跳ね上がるなら本末転倒です。
「混載を増やしたらパレット積みや仕分け業務が激増した」
「新しい港への納入ルールを熟知するまでの教育コストが大きかった」
こうした可能性も棚卸しし、業者との分担や自動化を検討することが大切です。
AI・ITプラットフォームを積極活用して「現場の手を煩わせない混載輸送」に進化させることが現代流のミッションです。
リアルな成功事例集(実名不可の範囲で紹介)
- 愛知の精密機械メーカーは、上海・台湾向け部品出荷に「静岡・東京」「名古屋・大阪」の混載並行ルートを採用し、2割弱コスト削減。納期変動は最小限だった。
- 東大阪の切削部品工場、自動車部品月次出荷をFCLから中部→大阪港経由での混載に転換。一部積載だけ混載に切り替え、手配工数は増えたが、AI見積もりサービス導入で現場負担も軽減。
- 京都の電子部品メーカーはタイ・インド同時納品に「横浜・神戸港混載」「東京港新規フォワーダー」を組み合わせたことで、従来比21%の運賃ダウン。
これら実例に共通するのは、「現場や購買担当の抵抗感を、ITによる管理自動化や業者の現地説明会で払拭」した点です。
今後の輸送費ダウン戦略:次に来る潮流は何か
“昭和から抜け出せない”アナログ業界でも、デジタル物流サービスや混載データ活用の導入は急速に進んでいます。
大手のみならず、中小規模メーカーも
- AI・データ活用型の見積・管理システム
- 港間接続のシェアリング混載サービス
- 港〜工場・サプライヤー間のラストワンマイル自動手配
などに注目することで、「いままで通り」を繰り返さず劇的なコストダウンを果たすことができます。
外部への一部アウトソーシング、現場工程への自動化の導入も、今や手軽に行える時代です。
まとめ:変化を「チャンス」と捉え、本音ベースで最適化を
港選定と混載戦略の見直しは、既存の業務フローを一度見直す労力は必要ですが、これまで箱物(FCL)にとらわれていた思考を崩す絶好のチャンスです。
購買・調達担当者だけでなく、サプライヤーや現場担当者も本音ベースでコストと業務の最適化を繰り返すことで、日本発の製造業競争力は大きく高まります。
“やったことがない”“面倒そう”こそ、新しいパートナーやサービス導入で「自動化」「標準化」=誰にでもできる物流コスト改革へと進化できます。
来季のコストダウン目標を掲げた今こそ、港・混載戦略の見直しを現場目線で始めてみてはいかがでしょうか?
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