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設計公差の緩和で加工工数を半減させる図面リデザイン術

目次
はじめに:設計公差が工場の現場にもたらす影響とは
製造業に携わっていると、「図面通りに作っているのに工数ばかり増える」と悩む現場や、「もっとコストを下げたいのに、設計から降りてくる図面が高精度を要求しすぎて困る」と嘆く調達バイヤーの声をよく耳にします。
実はその原因の多くが、設計段階で“無意識のうちに付与された厳しい公差指定”に潜んでいます。
昭和型の慣習が色濃く残る業界では、設計と現場の壁も高く、「とりあえず余裕を見て厳しく公差を!」という発想も根強いものです。
ですが、今や調達購買・生産管理・現場の連携なくしてコスト競争力は維持できません。
本記事では、設計公差の緩和(リデザイン、リエンジニアリング)が現場の加工工数をいかに大きく減らせるか、具体的なノウハウや成功パターンを交えて深堀りします。
公差の「見直し」による効果の全体像
なぜ「指定通りに作る」だけでは限界なのか
設計図でしばしば発生するのが、「この寸法公差、本当に必要?」という疑問です。
設計者はリスクを最小化したい心理から、JIS基準や社内標準よりも厳しい公差をなんとなく盛り込みがちです。
しかし現場から見れば、1/100mm単位の厳密な加工や、高価な測定治具の投入、後加工や手直し工程の増加など、“見えないコスト”が雪だるま式に膨れあがります。
過剰品質になりがちな設計公差を緩和し、合理的なレベルに最適化できれば、加工時間・治工具費用・検査工数まで広範囲にコスト削減が実現するのです。
緩和できる公差・できない公差の見極め方
全ての公差を緩和するのは危険です。
“緩和できる”公差と“絶対に守るべき”公差を見極めるのが、リデザイン術の大前提です。
たとえば、
– 部品同士が嵌合・摺動する箇所
– 安全や規格に関わる要部
こうした箇所は公差緩和は慎重に。
一方で、固定穴・取付部や、外観に影響しない箇所については広めの公差へ見直しが可能なことがほとんどです。
この「メリハリ感覚」こそ、現場経験がものをいうポイントです。
加工工数を半減させる図面リデザインのステップ
1. 現場目線のフィードバックループを構築する
最初のステップは、「製造現場」と「設計部門」の間にフラットな連携サイクルを設けることです。
現場で工数がかかっている工程を棚卸しし、「どの公差が一番のネックか」を洗い出すワークショップや社内ミーティングを定期的に設けましょう。
現場の機械加工技能者や検査員が設計者に直接声を届けられるような現場巡回も有効です。
たとえば、ある自動車部品会社では、3カ月に1度、設計者と現場リーダーが一緒にラインを歩いて改善点を抽出。
「ここまで厳しくなくても組み立てに支障はない」といった現場のリアルな意見が、図面修正の大きなヒントになりました。
2. コストインパクトの可視化と定量化
公差を1/100mmから1/10mmに緩和した場合の、加工時間・検査頻度・材料コスト変化を定量的に試算します。
たとえばNC旋盤加工品の直径寸法公差を0.01mmから0.05mmへ拡大すると、セッティング時間は20%短縮、検査回数が半分になり、完成品不良も減少する……といった成果が明らかになります。
バイヤーの立場からも、「この部品の設計公差を緩和するので、見積りを再提示してください」といった価格交渉材料にもなります。
3. 「現場が困っている」設計公差“あるある”の具体例
たとえば、よく見かけるのが以下のパターンです。
・意味のない嵌合部分のミクロン公差指定
・溶接構造品の全長寸法に厳しい公差要求
・鋳造体ベースのザグリ穴に位置精度を追求
いずれも現場からは「ここまで気を使う必要はない」「組立工程で調整可能」など、余計な工数増につながりやすいポイントです。
現場経験者がプロジェクト初期段階からレビューに関わることで、こうした“無駄に厳しい公差”を大幅に減らすことができます。
4. サプライヤーからの逆提案を積極的に受け入れる
サプライヤー(協力工場)は実際に加工・検査・量産の現場を担うパートナーです。
現場の知見に基づく「この寸法なら±0.1mmでも十分です」といった逆提案を積極的に受け入れる姿勢が、調達・購買力の強化につながります。
バイヤーや設計者の方は、サプライヤーさんの「お願いです、この公差何とかなりませんか?」という声に耳を傾ける文化づくりがポイントです。
業界“昭和アナログ流”からの脱却—公差リデザインがもたらす新たな地平線
なぜ今、公差リデザインなのか
従来、設計部門と現場は縦割りで役割分担され、設計図面の見直しや公差変更のフローも煩雑でした。
事後的な現場クレームや、納期遅延、リワーク(手直し)費用が増え、結果として「現場泣かせの設計」が温存されてきたのです。
しかし、IoTやデジタルツイン時代を迎えた今、設計意図から現場実行までの情報循環を加速することで、“最小品質コスト、最大パフォーマンス”を追求する企業が勝ち残っています。
国内外サプライチェーンの再編と公差リデザイン
グローバル調達では、サプライヤーの加工技術力・検査レベルも千差万別です。
日本国内の調達基準のまま、海外量産サプライヤーに同じ公差を押しつけると、予想外の納期遅延や歩留まり悪化が頻発します。
逆に、国内でも最新の自動化設備を持ったサプライヤーなら、設計公差を大幅に最適化することで“劇的なコスト低減”の実現も夢ではありません。
加えて、SDGs観点で「過剰加工=リソース浪費=環境負荷増大」も重視される中、公差リデザインが経営資源と環境の両面での最適化につながっています。
実践事例――設計公差の緩和がもたらした工数半減の現場から
事例1:「無駄な公差0プロジェクト」の成功
大手電機メーカー部品の生産現場では、「設計公差の棚卸し」と題したプロジェクトチームを発足。
公差指定が厳しい部品をリストアップし、現場・設計・調達で徹底討論。
1年間で43%の部品で公差が緩和され、総加工工数が約半分に削減。
予備検査や加工待ち時間も大幅圧縮され、工場のスループット向上とコストダウンを同時に達成しました。
事例2:ボトルネック工程の公差緩和でリードタイム短縮
自動車部品メーカーでは、ボトルネックになっていた仕上げ工程を解析。
検査規格や公差要求を精査し「ここまでは緩和OK」という範囲を設定。
従来1個あたり20分かかっていた工程が、わずか8分に短縮されました。
これにより、生産能力アップ・納期遵守率の向上・現場作業者の負担減という“三方良し”の効果が生まれました。
公差緩和を進める上での注意点・リスクマネジメント
– 公差緩和の判断にはエビデンス(実機テスト・データ検証)がマストです。
– 要求機能・(組立・性能・品質)要件と直結する箇所は、必ず社内外の関係者と合意形成を行います。
– 「とりあえず全て緩める」のは逆効果。リスク評価シートやFMEA分析とセットで進めましょう。
まとめ:設計公差リデザインで、モノづくりの未来を切り拓く
設計公差の緩和=“手抜き”ではありません。
現場力を信じ、ムダな加工や検査の削減を図るリデザインは、より機能的でコスト競争力が高いモノづくり実現への必須条件です。
調達バイヤー・設計者・加工サプライヤーが、垣根を超えて“現場主義”で協働できれば、昭和から続く過剰公差・過剰品質の悪循環を断ち切れます。
現場の声とデータに裏打ちされた“メリハリ公差リデザイン”が、日本のモノづくりの次なる地平線を切り拓く——。
今こそ、自社図面の見直しに着手しましょう。
皆さんの現場でもぜひ、“加工工数半減”を実現する公差リデザイン、実践してみてください。
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