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複数用途で使える共通消耗品を選定して仕入れコストを削減する方法

目次
はじめに―製造現場が抱える「共通消耗品」調達の課題
日本の製造業は、いままさに大変革の只中にあります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)や自動化という新たな波が押し寄せる一方、多くの中小、時には大企業の名門工場ですら、昭和気質が色濃く残り、調達購買の現場にはアナログ的な課題が根深く残っています。
そのひとつが「消耗品調達」です。
工場で日々使われる消耗品は、ボルトやナット、グローブやテープ、クリーンルーム用ウェスといった部材から測定器の電池、潤滑油、事務用品に至るまで実に多岐に渡ります。
しかし、これら消耗品の多くは部門や用途ごとに個別に発注される傾向があり、その結果「同じ工場内で似たようなスペックの商品が複数ルートからさまざまな型番で購入されている」「少量・多品種発注によるコスト高」「棚卸や在庫管理の煩雑化」といった非効率がまかり通っています。
経営層も現場も「仕方ない」「そんなに大差がないだろう」「前例通りでよい」と問題を先送りしてしまう、その空気がコスト圧縮の大きなチャンスを見落とさせているのです。
本記事では、バイヤーや調達ご担当者、あるいはサプライヤーがバイヤーの考えを理解するための視点も取り入れて、複数用途で使える共通消耗品をいかに選定・導入し、仕入れコストを削減できるか、その実践的なノウハウをご紹介します。
共通消耗品選定のメリットとは何か
① 仕入れコストの削減効果
同一規格・用途で複数部門の消耗品を統一すれば、調達ボリュームを増やすことができ、スケールメリット(数量値引き)が働きます。
例えば、5S活動の一環で現場ごとにばらばらに発注していた軍手や雑巾、マスクなどを統一型番にまとめるだけでも、年単位で10%~20%程度のコストダウン効果が見込めるケースも少なくありません。
また、サプライヤー側も統一仕様での大量発注を歓迎しやすく、納期対応や特別値引きなど交渉面でも有利です。
② 管理業務の簡素化と現場利便性の向上
アイテムを集約することで、在庫管理・入出庫・補充が非常にシンプルになります。
倉庫でのピッキングミスの減少、棚卸作業の効率アップ、現場からの「どこに何があるか分からない」といった混乱防止など、間接的な生産性も大幅に向上します。
さらに、消耗品の標準化によって品質・性能が一定水準以上で担保され、現場作業者が「どれを使えばいいんだ?」と迷わずに済む効果も見逃せません。
③ 緊急時・異常時の対応力向上
東日本大震災や新型コロナウイルスなど大規模な災害・供給網混乱時に、統一消耗品であれば代替調達・拠点横断の支援・融通がかんたんです。
個々の現場独自品の在庫切れは、時に工場停止すら招きかねません。共通化はリスク管理でも大きな武器となります。
現場目線で考える「共通消耗品化」の進め方
ステップ1 消耗品リストの洗い出しと用途分析
まずは現場にどんな消耗品が使われているのか、棚卸しリストからの逆引きや購買システムの発注データ出力を活用し、全量・全アイテムを洗い出しましょう。
ここで重要なのは「なぜそれを使っているのか?」用途と実際の使用場面、必要スペック(例:耐熱、耐油、強度、法令規制品かなど)を現場と一緒に確認・分類することです。
サプライヤーを巻き込み、実物+カタログ比較で「A現場とB現場、実は同じスペックで共通化可能」といった観点も必ず取り入れて下さい。
昭和の現場では「ずっとこれを使ってきたから」「設計図がこうなっているから」と、理由も曖昧なまま同等品・他メーカー型番を区別している実態も多いものです。
ステップ2 対象品目の選定と性能比較
次に「本当にスペックダウン不可なのか」「過剰品質では?」「他用途でも同型で問題ないか」など、現場ヒアリングやテスト導入を重ねます。
例えば、切削油や潤滑剤は、設備ごとにメーカーやグレードがバラバラに採用されていませんか?
実際には、主要成分がほぼ同じ商材も多く、用途別に1種類まで集約できる場合も。消耗品メーカーの技術部門に実サンプルを提出し「AとBは完全代替可能」といった評価書を得ることも、根拠作りに役立ちます。
現場責任者やベテラン作業者を巻き込んでの「レビュー会議」「実地テスト」も、スムーズな共通化・切替のために極めて重要です。
ステップ3 サプライヤーとの交渉・契約
集約候補の消耗品一覧をもとに、既存サプライヤーあるいは複数社への入札形式で見積を取得します。
このとき「単品価格」だけでなく、「リードタイム」「納品ロット」「緊急対応体制」「余剰在庫引取」など、トータルコストを評価軸に入れることがポイントです。
また、大口発注・共通仕様のリスクを担保する形で、納品不良時の代替調達や追加値引き、サンプル提供など、一歩踏み込んだ交渉もバイヤーの腕の見せどころです。
仕入先のサプライヤー担当者も、バイヤーのこういった購買方針や現場運用の意図を理解していれば、単なる価格交渉以上に現場改善やトータルサポートという視点で提案を強めることができ、まさに「協創」の関係に進化します。
ステップ4 社内周知・現場教育による定着化
最後に、工場全体への「なぜ共通化したのか」「何を使うべきか」をしっかり周知し、現場の教育ツールやラベル、標準作業書に落とし込みます。
現場独自で「旧品を使い切るまで新しい消耗品はまだ要らない!」など逆戻りが起きないよう、購買部門がリーダーシップを取ってルール化し、PDCA(継続的な改善活動)の枠組みの中で運用状況や効果測定も継続しましょう。
業界動向―なぜ今、「共通消耗品化」が叫ばれているのか
日本の製造現場がつい「目の前の生産」「前例踏襲」に流されがちな一方、海外では「コスト意識」「業務自動化」が調達現場でも活発に進行しています。
アメリカ、ドイツなどの多国籍企業においては、消耗品調達・現場内自販機(VMI: Vendor Managed Inventory)の採用、IoTによる消耗品使用量のモニタリングと自動再発注、そしてグローバルな共通規格化が標準化しつつあります。
日本も、働き手減少・原材料高騰・サプライチェーン分断などの社会構造変化に対応するため、調達の価値を「単なるモノを買う作業」から、「全社最適」を実現する戦略的機能へと進化させる必要に迫られています。
特に、デジタル技術による一元化(購買システム、在庫自動管理、AIによる消耗品需要予測)と、バイヤーや現場作業者の“見える化”意識は急速に高まりつつあります。
コスト削減だけでなく、ESG対応やカーボンニュートラルなど社会的責任も問われる中、「省資源的・共通消耗品の徹底活用」は、製造業が持続的に生き残るための武器となります。
バイヤーとサプライヤー双方に求められる意識改革
共通消耗品の集約・コスト削減は、単に購買だけの仕事で完結しません。
「現場課題に即した提案力と巻き込み力を持つバイヤー」
「ユーザー視点を伴った新商材提案や業務効率化策を打ち出せるサプライヤー」
この両者の協力が必要不可欠です。
具体的には、
– 定期的な現場パトロールやヒアリングによるニーズ把握
– サプライヤー勉強会や現場実演会による新商品・共通仕様の認知向上
– ショートレビューによるリアルな声のフィードバック
– 価格や納期交渉だけでなく「現場全体の生産性向上」に着目した協議 など
が重要です。
サプライヤーが「バイヤーが何を重視しているか(コスト・安定供給・安全・環境)」を理解し、新しい共通規格や省資源型商材、納入改善アイディアを積極的に提案できれば、信頼関係が一層強まり、長期安定取引へつながります。
まとめ―今こそ「共通消耗品の選定」で新しい現場価値を生み出す
複数用途で使える共通消耗品の選定と集約は、単なるコスト削減にとどまらず、「現場業務改革」「工程の安定性向上」「急変時の事業継続力」「従業員の働きやすさ」にまで波及する非常に高い効果があります。
製造業の購買・調達・現場支援業務が「単に物を買う」から「現場を支えるプロフェッショナル」へと進化するためには、
– 現場起点での発掘・洗い出し
– 過去の慣習を乗り越える勇気
– 技術情報に基づいた省資源・共通化の推進
– バイヤー・サプライヤー間の強固なパートナーシップ
これらが不可欠です。
昭和からの慣習にとらわれない、ラテラルな発想で新たな現場価値を―。
今こそ、製造業のものづくり現場が「共通消耗品の仕入れ改革」に挑戦する時です。
この記事が、バイヤーを目指す方、現場に携わる方、サプライヤーの皆さんにも新しい気づきをもたらし、明日のものづくりをより価値あるものへと導く一助となれば幸いです。
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