投稿日:2025年9月2日

ファイル名規約を先に決めるだけで検索時間を半減するルール

はじめに:なぜファイル名規約が“命”なのか?

製造業の現場や調達購買、生産管理、品質管理といった分野において、膨大なデータや図面、帳票が日々やり取りされています。
特にここ数年はデジタル化が進み、ファイルでの管理が標準となりました。
しかし、昭和から続くアナログ文化が根強く残り、ファイルを探す手間や「どれが最新版なのか分からない」といった悩みはなかなかなくなりません。
この課題に対し、簡単で劇的な改善をもたらすのが「ファイル名規約」です。
一見地味ですが、このルールを先に決めることで検索や整理の手間が半減し、現場力の底上げに直結します。

この記事では、私自身の現場経験も踏まえ、バイヤーや現場管理者、サプライヤーなど様々な立場の方に向けて、実践的なファイル名規約策定のポイントや導入のコツ、そして「なぜそこにこだわるべきなのか」を掘り下げていきます。

製造業にファイルの“迷宮”が生まれる理由

属人化とアドリブ命名の弊害

例えば購買部門では、受発注書類・見積書・図面・検査成績書など多様なファイルが飛び交います。
これらが「山田書類」、「4月納入部品」、「202306_メーカーA」など、担当者ごとにアドリブで命名されていませんか?
こうした属人的な命名は、本人には分かりますが他の人には解読不能な暗号です。
人が入れ替わったり、案件が増えるごとに“どこだっけ問題”や“最新版はどれだっけ問題”が積み上がります。

アナログ業界の“積み重ね文化”がもたらす混沌

製造業では、旧来の帳票文化をデジタルでもそのまま再現しがちです。
そのため、物理的なファイルと同じ感覚で「とりあえずデスクトップに置く」「なんとなく日付を加える」など、整理よりも“とりあえず保存”が優先されます。
ファイルが積み重なり、後から見直す時に必死で検索、そのたびに無駄な時間を消費し、業務効率のボトルネックになります。

“ファイル名から始まる業務改革”という発想

なぜ最初にファイル名を決めるべきか

多くの現場で“後から整理”が癖になっていますが、初めからルールを決めれば無駄な探し物や混乱は激減します。
特に調達・品質管理などでは、サプライヤーやショップフロアをまたいでファイルをやり取りします。
ここで共通のファイル名ルールがあれば、どこからどこまでが1つのプロジェクトなのか、誰が見ても一発で判別できるのです。

キーワードは「一目で内容が分かる」

良いファイル名規約の共通点は、「ファイルを開かなくても、一目で内容・バージョン・担当・用途が分かること」です。
受発注の証憑や品質証明のエビデンスもしっかり整理され、社内監査やトラブル時に慌てることがなくなります。
Googleや社内NASの検索精度も格段に上がり、「探す」ストレスが消え、本来の仕事に集中できるようになります。

実践!製造業のためのファイル名規約設計術

必須項目を絞り出す

まず、「どんな情報がファイル名にあれば迷わないか」を具体的に抽出します。
例えば以下のような視点です。

・部品番号や品番
・取引先(サプライヤー)の略称
・必要な日付情報(発行日やバージョン日)
・用途(例:見積、仕様書、検査成績等)
・作成者や部署のイニシャル(必要に応じて)

この中から現場ごとに必要な項目を最大4~5つ程度、優先順位を付けて選定します。

並び順は“左から絞り込み精度高く”

ファイル名は一覧で見たときに意味が通る並び順が大切です。
件数が多くなるほど、「プロジェクト」 > 「部品番号」 >「日付」>「用途」>「バージョン」など、左側に優先度の高い情報を入れた方が素早く絞り込めます。

例えば、
PJ2024A_12345ABCD_20240620_見積_RevA.pdf

といった形で揃えていけば、関係者全員が時系列や目的ごとに一発で並べられるのです。

“全角・半角・記号”は統一する

日本の現場では、全角・半角混在やアンダーバー/ハイフンの使い分けがバラバラになりがちです。
これが地味なトラブル、検索漏れの温床となります。
開始前に必ず「全角×、半角のみ」「区切りはアンダーバー」などルール化しましょう。

バージョン管理は“Rev”と日付で

品質管理や開発部門では、改訂の履歴が命です。
途中のバージョンも
「…_RevA」「…_RevB」
「…_20240620」
など分かりやすくファイル名に付与し、“最新版だけ複製保存”や“旧版はアーカイブ”の徹底がミス激減につながります。

現場導入で失敗しないコツ

現場が納得する“落としどころ”を探る

ファイル名規約は机上で作っても、現場になじまなければ形骸化します。
実際に数人で運用テストをし、「これなら普段の仕事の流れを邪魔しない」「面倒すぎない」レベルに微調整しましょう。

ポイントは“分かりやすさ最優先”

若手もベテランも、派遣スタッフやサプライヤーも使うのが現場ファイルです。
略語やイニシャルはリスト化し、“全員が分かる”ようExcel等で規約表をつけておきましょう。

“よく使うテンプレート”を配布する

理屈で覚えるより「いつもの型枠」で合わせた方がずっと定着します。
フォルダごとテンプレートを用意し「この型で保存してください」と伝えると、ルールの土台が固まります。

古い文化とどう調和させるか

紙+デジタルの併用時代を乗り切る

どうしても紙とデジタルが混在する現場では、ファイリングの見出し(例:図面No_サプライヤー名_日付)をそのままファイル名にも採用してルール化すると移行がスムーズです。
この“アナログの視点”を取り入れることで、昭和的な現場でもファイル名規約が受け入れられやすくなります。

管理職こそ率先導入を

工場長や購買部長といった管理職自らが、「このルールでやる」と発信することで、現場に広がりを持たせることができます。
管理職が従来の属人的保存から抜け出し、モデルケースとなって取り組む姿勢こそが、根付かせるためには不可欠です。

バイヤーとサプライヤー両方の視点を生かす

バイヤー側は仕入れ案件ごとに大量の見積書や発注書、サプライヤーからの諸連絡ファイルを一元的に管理しやすくなります。
サプライヤー側も毎回同じルールに従えば、他社対応での混乱やクレーム回避につながり、取引先からの信頼感もアップします。

現場に根付いたファイル名規約があれば、サプライヤーは「今、どこまで進んでいるのか」「どの注文書が最新版か」を瞬時に判断できます。
これにより、問い合わせの手間やトラブル対応のレスポンスが格段に向上します。

まとめ:ファイル名規約で“現場力”は必ず上がる

製造業の現場は常に変化し、日々膨大なやり取りが発生します。
昭和的なアナログ体質が残る中でも、ファイル名規約を先に決めてしまうだけで、現場の業務効率と組織力は劇的に高まります。

検索に悩まず「探す時間を半減」し、そのぶん“良い仕事”に集中できる環境が生まれます。
この小さな改革は、調達購買、生産管理、品質管理といった多様な現場ですぐに始められ、“昭和から令和へ”生産現場の新しい地平線を開く第一歩となるはずです。

今日から始めるファイル名規約。
これが未来の製造業を変える、“現場改革”の最短ステップです。

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