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3Dプリント治具の内製化で段取り時間と外注費を同時削減

目次
3Dプリント治具の内製化がもたらす現場改革
製造業の現場は今、大きな転換期に差し掛かっています。
多品種・小ロットの生産への対応や、短納期での納品要求の高まり、加えて人手不足。
これらの課題を乗り越えるためには、生産工程の無駄を徹底的に見直すことが不可欠です。
昭和の時代から抜本的に変わっていない治具(ジグ)の管理や製作工程こそ、まさに変革の余地が大きい分野の一つです。
本記事では、3Dプリント技術を活用した治具の内製化がいかに段取り時間の短縮と外注費の削減という「現場の二大課題」を同時解決できるかを、長年の現場経験とラテラルな視点で深掘りします。
バイヤーやサプライヤーの立場からも役立つ、実践的な知見をお届けします。
治具の役割と現場に蔓延する課題
なぜ治具にこだわるのか
治具は、部品の加工精度を高め、作業効率を上げ、不良を削減するための不可欠な生産ツールです。
寸法や形状、位置決めを厳密に再現し、標準化する役割を担います。
特に自動車や電気機器、機械部品の分野では治具の有無と品質管理レベルがそのまま不具合率や生産性に直結します。
昭和型治具製作が引きずる「時間」と「コスト」
現場では治具製作を外注に依存するケースが今も主流です。
図面起こし→外注依頼→見積り→実際の製作→受入検査――と、製作現場の誰もが感じている通り、少なくとも1週間、場合によっては1ヶ月近くかかることもあります。
「そんなに待てないから現場作業で工夫して(やや不安定な)手作り治具で凌いだ」という声も少なくありません。
また、外注費も(材料費+加工費+管理費用)がかさみ、月間数十万円、年間で数百万円規模の間接コストになっています。
なぜ変われなかったのか
こうしたアナログな慣習が温存されてきた大きな理由は「現場に3D設計や加工のノウハウが蓄積されていない」こと。
作り直しや変更が発生すると、再び外注先と調整に奔走する手間が発生していました。
また、3Dプリンター自体の導入コストや、設計者・現場作業者の“ハードルの高さ”も壁でした。
3Dプリント治具の内製化がもたらすメリット
1. 圧倒的なスピード生産
3Dプリンターなら設計データさえあれば、数時間~1日で治具が手に入ります。
従来の外注依存サイクルと比べて圧倒的な時間短縮です。
「ちょっとした寸法違いの対応」や「工程ごとの検証用治具」でも、すぐに設計ファイルを修正し、そのままプリントできるのが最大の強みです。
2. 柔軟なカスタマイズと継続的ブラッシュアップ
「現場で治具を使ってみたけど、思ったように作業しづらい」
「もう少し部品のガタを抑えたい」
こうした“小さな課題”もその場ですぐに設計を修正し再プリントすることで対応できます。
このサイクルを高速で回せるため、継続的な改善活動にも直結します。
3. 大幅なコストダウンと外注費削減
3Dプリンタ用の材料費は数百円から数千円程度が中心です。
外注に頼んだ場合の何十分の一、工数削減分も加味すれば実質「ほぼノーコスト」で治具製作が出来る感覚です。
特に短納期・少量ニーズが多い現場や、組立ライン改善に頻繁に治具変更が発生する会社には効果絶大です。
4. 現場力の底上げと技能伝承
従来は設計者と現場作業者との間に“距離”があり、フィードバックが届きづらい環境もありました。
CAD・3Dプリントのスキルが現場に定着することで、「自分たちの業務を自分たちで改善できる」自走力が生まれます。
若手・中堅のスタッフにも“設計を現場で活かす力”が付きやすく、技能伝承と組織力強化にも大きく貢献します。
内製3Dプリント治具の活用事例
組立ラインの補助治具作成、段取り替えの迅速化
例えばある自動車部品メーカーでは、多品種対応の組立ラインで「検査位置決め治具」「供給ケースの持ち手補助具」「ピッキング用アタッチメント」などを内製化。
従来は一つの治具で平均15~20万円+納期2週間かかっていたものを、3Dプリンタ化で1日・材料費2000円未満で導入可能にしました。
短納期対応、組立工程の段取り替えが極めてスピーディになり、「この内容なら型を作って外注しよう」といった長期的判断の必要も減りました。
品質チェックに用いる検査治具での改善
電機メーカーの品質管理部門では、各ラインごとの製品チェック用治具を外注に頼らず設計~試作~現場使用までを3日で完結。
その結果、「検査漏れの削減」「ヒューマンエラー率の低減」を迅速に実現しました。
検査員へのヒアリングと設計修正を繰り返すことで、作る側・使う側双方にノウハウがたまり、今では現場発信で小規模な改善アイデアもすぐ形にできるようになりました。
アナログ業界でも進む内製化の波
昭和型マインドからの脱却と、ムダからの解放
特に伝統的な製造業ほど、「治具は外注」という慣習が根付いていました。
しかし、内製化による段取り替え高速化・コスト構造の変化を横目で見て、徐々に現場主導の3Dプリンター活用が浸透しつつあります。
コストセンターではなく“利益貢献部門”として現場力が再評価されつつあるのです。
「使い捨て」や「一点モノ」治具の価値観の転換
3Dプリント治具の内製化は、「一品一様」の対応にも強みがあります。
特殊なワークや工程ごとの一時的な段取りで使う“使い捨て”治具でも、ためらわずに作れる――。
この「もったいない精神」の呪縛から解き放たれることも、長期的には現場全体のスピードアップに繋がります。
成功事例と導入時の落とし穴
バイヤー視点:コストとスピードのバランスを見極める
調達バイヤーとしては、単に「治具内製で外注費削減」という目先の数値だけでなく、全体工程の最適化を見据えた目利きが必要です。
すべてを内製化しようとする過剰投資ではなく、治具のもたらすリードタイム短縮や、現場改善への寄与、コスト構造の見直しをバランス良く図ることが重要です。
サプライヤーに求められる付加価値・提案力
治具の単純外注依頼に固執しているだけでは生き残れません。
逆手に取り、「内製用3Dデータの作成支援」「チューニング設計アドバイス」など新たなサービスを武器に、顧客の現場改革に寄与するパートナーとしての存在感を高める必要がある時代になりました。
導入時の壁:現場抵抗とデータ運用基盤
3Dプリンタ本体の導入だけでは、決して十分とは言えません。
「設計人材の底上げ」「現場への継続レクチャー」「3Dデータの共有・管理方法」といった“組織のOSアップデート”があって初めて真価を発揮します。
ここで昭和型マネジメントのままだと、せっかくの3Dプリンタも宝の持ち腐れになってしまいます。
社内教育や業務フロー見直しも並行して推進する覚悟が求められます。
まとめ:現場発3Dプリント治具こそ“攻め”の生産改善
治具の内製化、特に3Dプリンタ―の活用は、単なるコストダウンやスピード向上の話に留まりません。
より精度の高い工程設計と段取り改善を可能にし、「現場発の自律改善」を現実のものとします。
昭和型の延長線上で「今ある仕組み」に甘んじていては、日本の製造業が今後さらなる発展を遂げることは難しいでしょう。
バイヤー、現場担当者、そしてサプライヤー。
それぞれの立場で3Dプリント治具内製化の意義と導入メリットを正しく理解し、現場改善のドライバーとして使いこなしてこそ、真の「現場力」が生まれます。
今こそ新しい技術を“使い倒す”覚悟と、「現場起点のイノベーション」に全員が挑戦するタイミングです。
従来の殻を打ち破り、より強い日本のものづくりを創るために、自社の現場に3Dプリント治具内製化を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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