- お役立ち記事
- 梱包最適化で運賃を下げる:パレット・段積・落下試験の基礎
梱包最適化で運賃を下げる:パレット・段積・落下試験の基礎

目次
はじめに:梱包最適化がもたらすメリット
製造業の現場では、コスト競争力の維持・向上が常に求められています。
なかでも無視できないのが物流コスト、とりわけ梱包資材費や運賃です。
運賃は会社の利益に直結し、出血を抑えるためにも「梱包の最適化」は避けて通れません。
昭和から連綿と続いてきたアナログな段ボール梱包やパレット出荷ですが、今やその適正化が物流・調達・生産の現場で喫緊のテーマとなっています。
本記事では、梱包最適化に欠かせない知識——パレットの活用、段積み(スタッキング)、落下試験の基礎について、現場目線で徹底解説します。
これからバイヤーを目指す方、調達や生産に関わる方、サプライヤーの立場でバイヤー目線を知りたい方にとって、実践につながる情報を提供します。
運賃のからくり:なぜ梱包最適化が重要なのか
物流費用の内訳と最適化ポイント
物流費用の中で最も大きな割合を占めるのが運賃です。
運賃は主に「重量」と「容積」のいずれか多い方、あるいは両者のバランスで課金されることが多いです。
たとえば、段ボールが大き過ぎてスカスカに詰まった荷物は、容積運賃を押し上げてしまいます。
逆に物理的に限界まで詰めすぎて過積載になれば、破損リスクが高まり品質上問題が生まれます。
このジレンマを解決し、最適なコストで最高の品質を維持することが、物流における梱包最適化の大きな目的です。
実は盲点になっている梱包資材のコスト
梱包資材は価格が安く見えるため、軽視しがちです。
しかし長期で見れば、段ボールサイズの設計ミスやパレットの使い方が非効率だと、毎月数十万円、年間で数百万円の“損失”につながります。
このムダを省く視点が利益率UPの第一歩です。
パレット活用の基本と最適化のコツ
パレットサイズに合った梱包設計が第一歩
日本国内物流で主流パレットはJIS規格の1100mm×1100mm、または1200mm×1000mmサイズです。
このパレット一枚にムダなく荷物を積載することが原則です。
たとえば規格寸法に合わず、パレットから荷物がはみ出す・隙間が空くなどすれば、結果的に積載効率が落ちて配送回数が増える=コスト増です。
パレットサイズを意識した梱包箱サイズ(外寸・内寸)設計が、最適化の最初のステップです。
最大積載高さ/重量を見極める技術的ポイント
パレットの積載高さは、一般的な4t/10tトラックでは1800~2000mm程度が安全基準とされてきました。
これを超えるとフォークリフト作業や荷崩れリスクが高まります。
新人時代、規定無視で2000mm超の段積みをして荷崩れ事故を起こし、現場が大混乱したことが忘れられません。
また、パレット1枚あたりの重量上限にも注意が必要です。
10t車で積載できても、荷受け先でのハンドリングが困難になる場合もあるため、必ず仕向け先の設備状況とすり合わせます。
<ポイントまとめ>
– 規格パレット寸法をベースにパッケージ設計する
– パレット上の最大積載高さ・重量を管理する
– 出荷先、陸送・海上輸送、国際輸送などシチュエーションごとに最適解を探る
段積み(スタッキング)の技術と現場のリアル
なぜ段積みが重要視されるのか
物流コスト削減では「積載効率=単位容積あたり荷物量」の最大化が勝負です。
段積み設計に失敗すれば、空間がムダになり、運賃が高止まりします。
一方で過度な段積みは荷物破損リスクを高め、クレームや再生産コスト増となるため、“技術と現場のバランス感覚”が必要不可欠です。
現場での最適な段積設計とは
段積みの設計は「梱包ケースの強度」、「荷重分散」、「輸送振動、落下、圧縮リスク」を総合的に判断して行います。
現場では次のような点を押さえています。
– ケースの積層強度:段ボールの圧縮強度から、2段積み/3段積みまでの耐荷重を計算する
– 隙間なくピッタリ積む:アソート(バラ積み)ではなく、同一サイズでレイアウトする
– パレット上での安定性:フォークリフト作業での「ズレ」「転倒」を警戒
– 角落としの工程管理:角からの落下・衝撃対策も視野に入れる
さらに、段積みの方法やレイアウト(交互積み/一方向積み)も荷物の種類や強度で最適化します。
ハンディタイプのツールやAI積み付けシステムの導入で“積みパターンの自動最適化”が進む現場も増えています。
落下試験を制するものが物流品質を制す
なぜ落下試験が必要か?
どんなに最適化された梱包も、「輸送事故ゼロ」はあり得ません。
出荷元、運送業者、納品先での荷扱い・積み替えが日常茶飯事です。
万一の落下・衝撃に耐え、商品品質を保証するためにも、梱包設計の段階で「落下試験」が欠かせません。
落下試験の結果が物流現場での“安心ラベル”になるのです。
実務で必要な落下試験とは?
昭和の工場では、重い荷物を人力で持ち上げ、ポトンと床に落とす「人力落下試験」が主流でした。
しかし現代はJIS・ISO規格(例えばJIS Z0202やISO 2248)に基づき、機械的に決められた高さから指定回数落下させ、外装と中身の破損具合を判定します。
現場で重視すべき項目は次のとおりです。
– 商品と外箱の密着性
– 緩衝材の“戻る力”と「スプリングバック」
– 輸送時に重ならない部分からの耐衝撃性
– 角落としや面落としなど、実運用に近い条件での再現性
落下試験を適切にクリアした設計は「バイヤー・納入先の信頼獲得」「返品・クレーム低減」といった無形資産(ブランド力)に直結します。
梱包最適化に必要な現場のラテラルシンキング
当たり前を疑うことから始まる真の最適化
現場では「前例踏襲」「同じ梱包方式を使い続ける」という悪しき伝統が根強く残っています。
「従来の段ボールサイズが正解だ」と思い込んでいると、本当のムダや改善ポイントが見逃されます。
過去に何度も、自分たちの現場で「スペース半分、送料30%減」を実現したケースを見てきました。
慣習、思い込みに縛られず、原点である“物理法則”“現場ニーズ”“最新技術”をラテラルシンキング(横断的思考)で結びつけること。
それが、真の梱包最適化のカギです。
現場意識から攻める:小さな改善で大きな効果
実践例をいくつかご紹介します。
– たとえば「20個梱包の化粧箱」をやめ、15個梱包に切り替えた結果、1パレットあたりの積載数が2割増になった。
– 緩衝材の設計を見直して梱包外寸を10mmずつ縮めただけで、28箱/パレットだったものが32箱置けるようになった。
– ジョイントパーツをワンパーツ化して、出荷先での組立効率がアップしたほか、梱包サイズも削減。
これらは全て、“現場の小さな違和感”に耳を傾けた結果です。
現場が語る「こうしたい」「こうすればコストが減る」という声を吸い上げること、これこそが真の管理職・バイヤーの役目だと痛感しています。
今後の展望:デジタル化と梱包最適化のシナジー
梱包最適化は今、IoT・AI・3D CAD技術の進化主体で大きな転換期を迎えています。
伝票1枚を書くだけだった昭和のアナログ現場から、物流シミュレーションやARを使った“最適パッキング設計”ができる時代へ進化しています。
今後は、
– 受発注情報と連携した「都度最適化」
– ビッグデータ分析で段積みパターンを自動算出
– 3Dセンシングによるパレット積み自動化
– サステナブル梱包材による脱炭素対応
こうした先進的な取り組みが当たり前になっていきます。
ただし、何より大切なのは「現場目線」と「論理的な改善姿勢」。
地道な最適化と創造的思考、その2つが両輪となり、製造業の価値向上を支えます。
まとめ:梱包最適化は稼ぐ現場の起点
梱包最適化には、パレット活用・段積み設計・落下試験という基礎を徹底しつつ、現場のリアルな知恵と最新技術を融合する力が求められます。
物流コストの削減と品質保証に加え、取引先との信頼までを担う重要なファクターです。
これから製造業バイヤーを目指す方、サプライヤーの目線で“求められる梱包”を模索している方へ。
梱包最適化の本質は、現場の気づきとラテラルシンキング。
固定観念を打ち破って、新たな地平線を切り拓いていきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)