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タッチレス発注でメール依頼を廃止しバックオフィス作業を70%削減したRPA活用

目次
はじめに:変革する製造業の調達購買現場
製造業の調達購買部門は、多くの業界において“最後のアナログ領域”と言われてきました。
FAXやメールに依存した受発注、手作業による発注書の作成と送信、無数のExcelファイルでの台帳管理……。
私自身、20年以上この業界に携わる中で、「本当にこれが最適解なのか?」と自問自答する場面が幾度もありました。
しかし、コロナ禍を契機に業務のリモート化・効率化が加速する中、調達購買の現場にも「デジタル化」「自動化」が一気に押し寄せています。
その象徴的な手段が、タッチレス発注とRPA(Robotic Process Automation)の組み合わせによる業務改革です。
本記事では、実際にメール依頼を廃止し、RPAとタッチレス発注を導入したことでバックオフィス作業を約70%削減した具体的な取り組みを、現場目線・バイヤーの視点も交えながら詳しく解説します。
なぜ“メール依頼”が製造業の足を引っ張るのか
メール発注の現実:属人化とミスの温床
多くの製造業では、依然としてサプライヤーへの発注依頼を“メール送信”に頼っています。
ベテランの購買担当が「いつもの業者に、いつもの内容で」と、メールテンプレートを貼り付け、必要事項を書き換え送信する……。
一見効率的のようですが、このやり方は以下のような問題を生みます。
– 担当者ごとの業務属人化(ノウハウがブラックボックス化する)
– テンプレート流用による記載ミス
– 本文や添付ファイルでの発注内容伝達の不備・漏れ
– メール返信・進捗管理の手間
– 複数業者への同時送信やCC管理の煩雑さ
– メールBOXが台帳代わりになり、管理が困難
このような問題は、「確認作業」「メールチェック」「追いかけ連絡」など、目に見えない“ムダな時間”の蓄積に寄与しています。
昭和的慣習の壁とその根強さ
なぜ今も、これほどアナログな方法が広く残っているのか。
その大きな要因は“業界の習慣”です。
– サプライヤー側も「あたり前の業務」として毎日メールを受領・返信している
– 小規模サプライヤーはシステム連携が困難で、メール受信しかできない
– 上層部が「今のやり方が安全」「大きな変更はリスク」と慎重
– トラブル時の“メール証跡”が重視され、紙文化から抜け出せていない
これらの“昭和的慣習”は一朝一夕には変わりませんが、サプライチェーンを取り巻く環境変化(部品供給不安・ESG推進・働き方改革など)が、今こそ変革のタイミングだと私たちに気づかせてくれたのです。
RPA×タッチレス発注:革新の具体的ステップ
タッチレス発注とは何か
タッチレス発注とは、購買システムとサプライヤー間を完全自動連携し、発注作業に一切の“人の手”を介さない仕組みです。
調達部門がERPや生産管理システムで発注処理すると、その依頼内容が即座にRPAやEDI(電子データ交換)経由でサプライヤーに伝達され、受領確認・発注書発行・納期管理までを自動で実行します。
ポイントは「メール」「FAX」など手作業の伝達手段を“完全撤廃”すること。
さらに、納期確認・注文請書の自動回収・仕入請求処理までを自動化することで、バックオフィス側の業務が一気にシンプルになります。
RPA導入のリアルなプロセス
私たちの工場でRPA+タッチレス発注を導入した際の流れを、現場感覚でご紹介します。
1. 業務洗い出しと標準化
まず最初にすべきは発注業務プロセスの“見える化”です。
誰が、どのタイミングで、何を、どんな方法で依頼しているのか。
すべての実務担当者からヒアリングし、個人差や例外ルールまで徹底的に吸い上げます。
「標準発注業務フロー」を作成し、そこに乗らないイレギュラーの棚卸しを行います。
2. RPAロボットの設計とパイロット運用
メール送信・添付ファイル作成・進捗管理・返信確認……。
人が判断しなくても機械的にできる作業は、すべてRPAロボット化します。
最初は全発注の20%程度(多品種少量・短納期品など除外)を対象に、限定運用を実施。
テスト運用を通じて、例外パターンや予期せぬエラーも抽出し、プログラムを微調整していきます。
3. サプライヤーとの共創体制構築
システム連携にはサプライヤーの協力が不可欠です。
共通のEDIプラットフォームを用意し、なるべく追加コストや複雑な操作をかけない環境設計に心を配りました。
小規模サプライヤーには無料webポータルを提供し、「今日からメール受領禁止!ではなく、1ヶ月並行運用」などソフトランディングを意識しました。
4. 完全移行への最終プロセス
段階的にタッチレス発注の割合を拡大し、最終的にメール依頼を全廃。
RPAによる自動発注・入荷・請求処理・進捗トレース管理がワンストップ化しました。
バックオフィス作業が70%削減できた具体的効果
時間削減と心理的負荷の軽減
導入前と比べ、担当者の業務時間は平均で70%削減されました。
特に「メール作成・送信」「依頼内容チェック」「リマインド・フォローアップ」など、“作業ではなく確認に費やす時間”が激減したのです。
数字だけではなく、現場の声も大きく変わりました。
「夕方からの発注ラッシュで毎日残業だったのが、RPA運用後はほぼゼロになりました」
「自分が休んだら止まる業務がなくなり、精神的にも楽になった」
「新人でも、“システムで発注”すれば自動で流れるので、ミスや不安が激減」
など、多くのポジティブな反応がありました。
ミスの減少とトラブル再発防止
手入力ミスや「送り忘れ」「添付漏れ」など、人のうっかりが激減しました。
また、発注書や請求書のバージョン管理も全自動で記録され、トレーサビリティ性が格段に向上。
それまで「誰が、いつ、何を送ったか」と過去メールを人海戦術で探していた作業も、ワンクリックで履歴参照できるようになっています。
サプライヤー・バイヤー従事者に求められる“新たな視点”
バイヤーは“業務そのもの”を再設計せよ
RPAやタッチレス発注の本質は、「単に効率化」だけではありません。
自社の調達購買業務そのものをゼロベースで再設計し直し、“価値提供の最大化”に人や時間を振り向けることが重要です。
「業務のプロ」から「仕組みのプロ」へ、バイヤーの役割は進化しています。
調達コスト削減やQCD(品質・コスト・納期)の最適化だけでなく、サプライヤー選定・リスク管理・新規調達ルート構築といった“戦略的購買”にエネルギーを注ぐべき時代です。
サプライヤーには“デジタル連携志向”が必須スキル
昭和時代には“顔の見える取引”が重視されてきましたが、現代のサプライヤーには「バイヤー業務へのシステム連携」「EDIやwebポータル対応」「納期変更や生産進捗のデジタル即時報告」など、“デジタル共創力”が求められます。
「アナログが悪い」のではなく、手作業や人手に頼る部分を意図的かつ戦略的に減らす柔軟な姿勢が、今後は生き残りの絶対条件となります。
まとめ:昭和から令和へ、製造業のニューノーマルを構築しよう
調達購買、生産管理、品質管理、工場自動化などあらゆる分野で、自動化とデジタル連携は待ったなしの課題となっています。
RPAとタッチレス発注によるメール依頼の全廃は、単なる“時短”を超えて、属人性・ミス・心理的負荷を減らし、バイヤー・サプライヤー両方の役割そのものをアップデートする大変革です。
これから製造業を志す方も、サプライヤーの立場からバイヤー動向を知りたい方も、「自分の業務は“どれだけ自動化できるか”“人間ならではの付加価値はどこなのか”」という視点で、ぜひ一歩踏み出してみてください。
変革を恐れず、ロジカルに・ラテラルに地平線を拓く現場リーダーが、これからの製造業をリードしていくのです。
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