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リーファー貨物の霜付きによる温度上昇を避ける積載率と換気条件管理

目次
はじめに:リーファー貨物の霜付き問題とその重要性
リーファー貨物、つまり冷蔵・冷凍コンテナ輸送は、食品や医薬品など品質保持が厳格に求められる製品を扱う現場では欠かせない存在です。
しかし、現場に深く根付くアナログな運用や、経験則中心の積載作業を続けていると、温度管理の落とし穴に気付くのが遅れることがあります。
その典型が「霜付き」問題です。
霜が蒸発器や荷物に付着すると、熱の移動効率が下がり、庫内温度が上昇しやすくなります。
それは、そのまま商品劣化やクレーム・損失につながる深刻なリスクです。
この記事では、リーファー貨物の霜付きによる温度上昇を回避するために最適な積載率や換気条件の管理について、現場実務と最新業界動向の両視点から詳しく解説します。
昭和型アナログ現場の実情
「隙間は無駄」の罠~積載率至上主義の落とし穴
多くの製造業現場では、「とにかくコンテナに詰めるだけ詰めて運べ」という、昭和的な価値観が残っています。
実際、運送コスト圧縮の観点から「積載率100%」を目指す現場は非常に多いのが実情です。
しかし、リーファー貨物において無理な積載は冷気循環不良や霜付きを招き、結局製品損傷や廃棄につながるため、本当の意味でコストダウンにならないのです。
現場独自ルールと温度逸脱事故
「この辺の温度計で大丈夫」「手で触って冷えていれば問題ない」――。
こうした独自ルールや目視・肌感覚による管理は、実はリーファー貨物において致命傷となることが少なくありません。
昨今ではHACCP運用など品質マネジメントシステムが普及していますが、工場から出荷される貨物の実態は、いまだアナログな積荷・積載作業が主流です。
リーファー貨物の「霜付き」発生メカニズムを理解する
基礎知識:湿度・冷却・結露・霜付きの関係
リーファー貨物内で霜付きが発生する主な理由は、庫内に持ち込まれた水分が冷却器周辺で急激に下がった温度環境にさらされることで、氷結してしまうからです。
積荷搬入時の外気湿度や、半端な保冷品搬入(外気との温度差が大きい貨物)が発端になることが多い傾向があります。
冷蔵庫・冷凍庫の熱交換部分(蒸発器)や貨物梱包外面に霜が付くと、冷却効率が著しく低下し、庫内温度が維持できなくなります。
霜付き→熱交換効率悪化→温度上昇のスパイラル
もし荷物の間隔が詰まり過ぎて冷気循環が妨げられると、特定エリアの壁や蒸発器周辺で露点に達しやすくなり、霜付きが加速します。
霜が厚くなると冷却器自体の熱交換効率は大きく低下し、同じ冷凍能力を供給しようとしてユニットは長時間稼働しますが、それでも温度は上がり続けてしまいます。
これが「霜付きで温度上昇」という現象です。
最適な積載率とは?コストと品質のバランスを考える
「高すぎず低すぎず」実効に適した積載は何%か
理論上、リーファーコンテナの推薦積載率は85~90%程度とされています。
つまり、10~15%の空間的余裕を設け、冷気が前面(ユニット側)から後部まで、全ての貨物をスムーズに循環できるよう設計するのがポイントです。
これが守られない場合、積載率が90%超となると冷気は一部で滞り、局所的な温度逸脱や霜付きリスクが爆発的に高まります。
逆に、空間が広すぎて積載率が50~60%まで下がると、今度は効率的な温度維持が難しくなり、一概に積み過ぎが悪、というだけでは語れません。
業界経験者が語るベストプラクティス
工場長や調達・購買責任者の立場としても、納入先や運送業者と「積載」の定義・基準を明確にする合意形成が肝要です。
たとえば、
・パレット積載時は、貨物の高さをパレット天面から10㎝下げて配置し、上部に冷気通路を作る ・コンテナ後部と貨物の隙間は手のひら~拳一つ(約8~15㎝)を空ける ・左右、上下方向とも冷気が回る設計で積み付ける
こうした具体的な積載マニュアルを策定し、下請けや現場作業者に徹底するのがトレンドとなっています。
霜付き防止のための換気条件管理~理論と実践
冷気循環の設計ポイント
最も重要なのは、「冷却ユニットから発生した冷気がすべての積荷を均一に包み込んで循環し、再びユニットに戻る」一方向冷気フローです。
以下のポイントが重要視されます。
・前面から後部への冷気の直進性確保 ・パレット突き合わせ禁止(壁にピッタリ付けない) ・床・壁面に段ボールや大型荷物を密着させない(空気層確保) ・換気口・スリットが塞がれないよう積載
実際、物流現場では「冷凍エアカーテン」や「スペーサー」を使用する例も増えています。
換気回数・空調設定変更に注意
リーファーコンテナは種類によって、本体換気口の開閉調整や送風設定(強・中・弱)が選択できます。
霜付き対策として積荷直後、各社メーカー推奨の換気回数(例:20回/時など)やデフロスト自動モードを確認し、荷主側・物流会社と連携する運用が高評価されています。
また、HACCPなど監査が入る現場では庫内温度および湿度のデータロガー記録が義務化されつつあるため、換気設定に加え保冷チェーン全体を可視化する仕組み構築が肝要です。
昭和から抜け出せない現場にこそ求められる“バイヤー意識”
積載効率優先vs品質優先のジレンマ
最終製品の販売担当やバイヤーは、「運賃含む物流コストを極限まで下げたい」という意識が根強い一方、品質部門や現場サイドは「クレームを回避したい」「損失や手戻りを減らしたい」と考えます。
ここに「積み過ぎてはいけない」がなかなか普及しない最大の理由があります。
調達業務の担当者は単なるコスト管理者ではなく、現場のリスクとバイヤーとしての顧客視点の両立が今後ますます求められます。
デジタル活用の最前線:見える化と軽微異常の早期発見
最新の工場や物流拠点では、積載状況や庫内温度・湿度をIoTセンサーを通じて全社リアルタイムで共有する“見える化”が進みつつあります。
バイヤーやサプライヤー間で「霜付きアラート」「温度上昇の傾向グラフ」を可視化することで、現場作業者の積載パターン改善や、荷主・物流現場の意識改革が加速しています。
昭和流の「経験と勘」だけに頼らない、実効性高い品質管理体制へのアップデートが実需です。
まとめ:品質とコスト最適化のため現場発・全社最適で取り組もう
リーファー貨物の霜付き問題は、単なる積載効率や現場作業負荷の問題ではありません。
むしろ、バイヤー・調達責任者からサプライヤー、そして物流現場スタッフまで全員が「最適な積載率」と「徹底した換気条件管理」を理解し、協働する必要があります。
業界の“昭和の常識”から一歩抜け出し、現場でのデータや新技術も活用しつつ、時代に即した品質・コスト最適化に挑戦していきましょう。
今日からできる小さな改善――積載率の見直し、換気経路確保、そしてアナログ現場ほどこまめな記録管理・異常感知――から始めてみてください。
バイヤーはもちろん、これからバイヤーを目指す方、サプライヤー・調達現場で奮闘する皆様が、より高品質で安全な物流を実現する一助となれば幸いです。
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