- お役立ち記事
- 冷媒(フロン類)規制の強化と、空調・冷凍設備の調達
冷媒(フロン類)規制の強化と、空調・冷凍設備の調達

この記事のポイント(結論先出し)
業務用の空調・冷凍冷蔵機器の冷媒(フロン類)は、二つの方向から絞られている。一つは使える冷媒の量で、日本の代替フロン(HFC)の使用量の上限は 2029 年に基準値から 70% 減、2036 年に 85% 減へ下がっていく[3]。もう一つは使っている機器の管理で、2026 年 3 月からフロン排出抑制法の施行状況を検討する国の合同会議が開かれ、6 月には使用時の漏えいの抑制や廃棄時の回収の徹底を柱とする方向性の案が示された[4]。2026 年 10 月時点で発注側がやることは、設備を買うときに冷媒の種類と GWP(地球温暖化係数)を仕様に書き、点検・修理・廃棄までの費用と手続きを見積の範囲に入れることである。
目次
規制は「冷媒の量」と「機器の管理」の二本立て
フロン類の規制には、冷媒そのものの量を減らす仕組みと、冷媒を使った機器から漏らさない仕組みがある。購買が設備を買うときに関わるのは、主に次の三つである。
| 仕組み | 誰に何を求めるか | 発注側への効き方 |
|---|---|---|
| オゾン層保護法による HFC の生産量・輸入量の割り当て | ガスメーカーなどに割り当て、国内の使用量を上限以下に抑える[3] | 従来の冷媒の供給量が段階的に減る |
| フロン排出抑制法の指定製品制度 | 機器の製造・輸入業者に、製品区分ごとの GWP の目標値と目標年度を課す[3] | 新しく買う機器の冷媒が切り替わっていく |
| フロン排出抑制法の管理者の義務 | 業務用機器の管理者に、点検・記録・漏えい量の報告・廃棄時の引渡しを求める[1][2] | 買った後の点検・修理・廃棄の発注に効く |
冷媒の量——2029 年に 70% 減の段階へ
モントリオール議定書のキガリ改正を履行するため、国はオゾン層保護法に基づいて HFC の生産量・輸入量をガスメーカーなどに割り当てている[3]。経済産業省と環境省の 2026 年 3 月 27 日の資料によれば、日本の HFC 使用量の限度は基準値 7,152 万 t-CO2 に対し、2024 年から 40% 減、2029 年から 70% 減、2034 年から 80% 減、2036 年から 85% 減と段階的に下がる[3]。
使用量の上限が下がっても、既存の機器がすぐに使えなくなるわけではない。ただし、従来の冷媒を使う機器の修理で冷媒を補充する場面では、冷媒の入手のしやすさや価格が変わりうる。環境省の 2026 年 6 月の資料は、年間 1,000 t-CO2 以上を漏えいさせた管理者が報告する算定漏えい量で、機器使用時の HFC の算定漏えい量が年々増加傾向にあると示している[4]。古い機器を長く使うほど、補充の冷媒に頼る期間が長くなることは、更新の時期を考えるときの材料になる。
新しく買う機器——指定製品の目標年度を確かめる
指定製品制度は、製品区分ごとに GWP の目標値と目標年度を定め、製造・輸入事業者に目標の達成を求める制度である[3]。指定製品の製造・輸入業者には、GWP の低減のほか、充塡量の低減や使用するフロン類の表示の充実も求められる[1]。主な区分を抜き出すと次のとおりである[3]。
| 指定製品の区分 | GWP の目標値 | 目標年度 |
|---|---|---|
| 店舗・事務所用エアコン | 750 | 2025 |
| ビル用マルチエアコン | 750 | 2027 |
| 設備用エアコン | 750 | 2029 |
| コンデンシングユニット・定置式冷凍冷蔵ユニット(1.5 kW を超える別置型) | 750 | 2029 |
| 業務用冷凍冷蔵庫・ショーケース | 150 | 2029 |
| 中央方式冷凍冷蔵機器(スクリュー式圧縮機) | 150 | 2031 |
同じ資料は、現在よく使われる冷媒の GWP として R410A を 2,090、R404A を 3,920、R32 を 675 と示している[3]。目標は製造・輸入業者に課されるもので、個々の機器を買う側に課される規制ではない。それでも、目標年度に向けて各メーカーの製品の冷媒は切り替わっていく。今買う機器が、数年後に主流から外れる冷媒を使っていないかを、見積の段階で比べておく意味はある。
環境省の 2026 年 6 月の資料は、冷媒の代替が用途によって進み具合が違うことを示している[4]。家庭用冷蔵庫や自動販売機、カーエアコンは代替が進んでいる一方、大型・中型の業務用冷凍冷蔵機器は代替候補(アンモニア、CO2)はあるが普及に課題があり、小型の業務用冷凍冷蔵機器と業務用エアコンは代替候補を検討中とされている[4]。代替の冷媒には微燃性・可燃性のものがあることも同じ資料に書かれている[4]。新しい冷媒の機器を選ぶときは、設置場所の安全の要件(換気、漏えいの検知など)をメーカーに確かめる。
買った後——管理者の義務と、その費用
誰が「管理者」になるか
フロン排出抑制法の対象は、業務用の空調機器と冷凍冷蔵機器で冷媒にフロン類を使っているもの(第一種特定製品)である[2]。CO2 やアンモニアなどフロン類以外の冷媒の機器は対象外である[2]。管理者は原則として機器の所有者だが、リース契約などで保守・修繕の責務を所有者以外が負うと書面で定めている場合は、その者が管理者になる[2]。保守点検をメンテナンス業者に委託しても、管理者は委託した所有者のままである[2]。
購買が設備をリースで手配する場合は、契約書に保守・修繕の責務をどちらが負うかを書くことで、管理者が誰になるかが決まる。書いていないと、点検や報告の義務を誰が負うのかが曖昧なまま運用が始まる。
点検の頻度と記録
管理者は、すべての機器について 3 か月に 1 回以上の簡易点検を行う[2]。加えて、一定の規模以上の機器は専門家による定期点検が必要である[2]。
- 冷凍冷蔵機器で定格出力 7.5 kW 以上:1 年に 1 回以上
- エアコンディショナーで定格出力 50 kW 以上:1 年に 1 回以上
- エアコンディショナーで定格出力 7.5 kW 以上 50 kW 未満:3 年に 1 回以上
点検と整備の記録は、機器を廃棄するためのフロン類の引渡しが完了した日から 3 年間保存する[2]。冷媒の漏えいが確認された場合は、修理しないまま冷媒を充塡することは原則として禁止されている[2]。「とりあえず冷媒を足して冷えるようにしてほしい」という発注は、原則として通らない。修理の費用と日数が先にかかる前提で、保全の予算と予備機の計画を立てる。
整備のために冷媒の充塡・回収が必要な場合、整備者は第一種フロン類充塡回収業者に委託しなければならず、管理者は整備を発注するときに管理者名を整備者に確実に伝える必要がある[1]。保守の発注書や依頼書に、管理者の名称を書く欄を設けておくと伝え漏れが防げる。
漏えい量の報告
事業者全体で年間 1,000 t-CO2 以上のフロン類の漏えいがあった管理者は、その漏えい量を国に報告する(翌年度の 7 月末日締切)[2]。算定漏えい量は、フロン類の種類ごとに(充塡量-整備時の回収量)× GWP を足し合わせ、1,000 で割って求める[2]。機器を設置したときの充塡量と廃棄時の回収量は算定の対象外である[2]。漏えい量は、補充した冷媒の量から計算されるので、整備業者から受け取る充塡・回収の証明書を事業者単位で集めておく必要がある。購買が保守業者を選ぶときは、証明書の発行と、充塡量・回収量のデータの渡し方まで確かめておく。
廃棄するとき——直接罰がある
機器を廃棄する、またはリサイクル目的で譲渡する管理者は、フロン類を第一種フロン類充塡回収業者に引き渡すか、引渡しを設備業者や建物解体業者などに委託する必要がある[2]。フロン類の引渡し方法に応じて、回収依頼書、委託確認書、再委託承諾書、引取証明書、確認証明書といった行程管理票を受け取り、交付し、保存する[2]。
2019 年の改正で、廃棄時にフロン類を回収しない場合などに都道府県の勧告や命令を経ずに罰金を科せる直接罰が入った[2]。引取証明書を保存していない場合や、機器を引き渡すときに引取証明書の写しを付けていない場合も罰則の対象になりうる[2]。機器を金属資源として有償・無償で引き渡す場合も含まれる[2]。
設備の入れ替えでは、新しい機器の購入と古い機器の撤去・処分が一つの工事として発注されることが多い。その場合でも、フロン類の回収を誰が、どの書類で行うかを発注書に書き分ける。「撤去・処分一式」とだけ書いた発注では、回収依頼書や委託確認書がやり取りされないまま機器が引き取られ、管理者である発注側が罰則の対象になりうる。
国の検討——2026 年冬ごろにとりまとめの予定
2019 年改正の施行から 5 年を迎えたことを受け、中央環境審議会と産業構造審議会の合同会議が 2026 年 3 月 27 日から開かれている[4]。日程は第 4 回が 2026 年 6 月 26 日で、第 5 回は 2026 年冬ごろの予定とされている[4]。
6 月の会議に示された方向性の案は、機器使用時の排出の抑制として、特定漏えい者の削減の促進(目標の設定と計画の策定)や定期点検での常時監視システムの活用を、機器廃棄時の回収の徹底として、家庭用エアコンの大気放出の抑制の抜本的な強化や、修繕・模様替え工事に伴う機器廃棄への対応の充実を挙げている[4]。これは案の段階で、どの措置が法令の改正になるかは決まっていない。ただ、漏えいの多い事業者に目標と計画を求める方向や、改修工事での機器の廃棄に目を向ける方向は、設備を多く持つ製造業の発注にも関わる。とりまとめが出たら、保守契約と工事の発注のひな形を見直す前提で、今のうちに自社の機器台帳と漏えいの実績を整えておく。
同じ資料によれば、2024 年の HFC 排出量は約 2,760 万 t-CO2 で前年比 3.4% 減だが、地球温暖化対策計画の 2030 年の目標値を大きく上回っている[4]。機器のライフサイクル別では、使用時が約 42%、廃棄時が約 46% を占める[4]。
輸出する設備・製品——EU の F ガス規則
冷凍冷蔵・空調の機能を持つ装置を EU に輸出する場合は、EU のフッ素系温室効果ガス規則((EU)2024/573)の上市禁止を確かめる。附属書 IV は、製品の種類ごとに冷媒の GWP と禁止の時期を定めている[5]。たとえば、定格容量 12 kW 以下のチラーで GWP 150 以上のフッ素系温室効果ガスを使うものは 2027 年 1 月 1 日から、12 kW を超えるチラーで GWP 750 のものも 2027 年 1 月 1 日から上市が禁止される(いずれも設置場所の安全上の要件で必要な場合を除く)[5]。冷凍冷蔵の自己完結型の機器(チラーを除く)で GWP 150 以上のものは 2025 年 1 月 1 日から禁止されている[5]。
自社の装置に冷却ユニットを組み込んで輸出する場合、そのユニットを買う段階で冷媒の種類と GWP を仕様に指定しておかないと、輸出先の規制に合わない装置ができあがる。購入するユニットの仕様書に、冷媒名と GWP、仕向け地を書いておく。
購入仕様書に書いておくこと
以上を踏まえ、空調・冷凍冷蔵設備や冷却ユニットを発注するときに仕様書・見積依頼に入れておく項目をまとめる。
🛠 見積依頼なら — 取引先はアカウント登録なしで、届いたメールのリンクから回答できる Newji one(製造業の見積・発注クラウド/サービス資料は無料)
- 冷媒の種類と GWP(候補が複数ある場合は比較を求める)
- 冷媒の充塡量(漏えい量の算定と点検の区分に関わる)
- 定格出力(定期点検の要否と頻度が決まる[2])
- 微燃性・可燃性の冷媒の場合の設置条件と安全装置
- 点検・保守の体制と、充塡・回収の証明書の発行のしかた
- 撤去する既設機器のフロン類の回収方法と、行程管理票の扱い
- 輸出する場合の仕向け地と、仕向け地の規制への適合
仕様書の全体の書き方は 購買仕様書の書き方、設備の入れ替えを複数社に見積依頼するときの条件のそろえ方は 見積依頼書の記載項目 を参照してほしい。
よくある質問
今使っている R410A の空調機は、すぐ入れ替えないといけないか
指定製品制度は製造・輸入業者の出荷に課される目標で、使っている機器の使用を禁じるものではない[3]。ただし HFC の使用量の上限は下がっていく[3]ので、修理のたびに冷媒を補充する前提の運用は、長く続けるほど不利になりうる。点検の記録から漏えいの多い機器を把握し、更新の優先順位を付ける。
CO2 冷媒の機器ならフロン排出抑制法は関係ないか
フロン類以外を冷媒に使う機器は、フロン排出抑制法の対象外である[2]。ただし設置や保守の条件は冷媒と機器ごとに違うので、メーカーに要件を確かめる。
リースの機器の点検は、リース会社がやってくれるか
管理者が誰かは、保守・修繕の責務を契約でどちらに置いたかで決まる[2]。点検をリース会社に頼めるかどうかではなく、契約上の管理者が誰かを先に確かめる。
まとめ
冷媒の規制は、HFC の使用量の上限を下げる仕組み(2029 年に 70% 減、2036 年に 85% 減)[3]、機器の冷媒を低 GWP に切り替える指定製品制度[3]、使っている機器の点検・報告・廃棄を求める管理者の義務[2]の三つで動いている。2026 年は国の合同会議で今後の措置の方向性が議論されており、冬ごろにとりまとめの予定である[4]。発注側は、設備を買うときに冷媒と GWP・充塡量・定格出力を仕様に書き、保守・撤去の発注でフロン類の回収と書類の扱いを書き分ける。輸出する装置は EU の F ガス規則の禁止時期も確かめる[5]。冷媒に関連する化学物質の規制は EU の PFAS 規制の動きと、PFAS を含む部材の調達 と 化学物質の自律的な管理と、仕入先から受け取る SDS、設備の照明の切り替えは 蛍光ランプの製造・輸出入の禁止と照明の調達 で扱う。
出典・参考資料
- フロン排出抑制法の概要——フロン排出抑制法の全体像(「フロン排出抑制法」ポータルサイト)(環境省)
- フロン排出抑制法の概要【機器ユーザー編】(環境省・経済産業省)
- 現在実施している主な対策(資料4)(経済産業省 オゾン層保護等推進室・環境省 フロン対策室/2026 年 3 月 27 日)
- フロン排出抑制法の施行状況を踏まえた検討の状況(資料3)(環境省 地球環境局/2026 年 6 月)
- Regulation (EU) 2024/573 on fluorinated greenhouse gases, amending Directive (EU) 2019/1937 and repealing Regulation (EU) No 517/2014(欧州議会・理事会・EU 官報/2024 年 2 月 7 日)
設備の規制が動く時期を、一次情報で押さえておく
NEWJI総研は、製造業の調達・購買を中心に、実務・制度・市場動向を調べている調査の場です。法令・規格の改訂対応、研修テキスト、実務書式、実務トレンドレポートを棚に分けて公開しています。
この記事の理解を深める
無料ホワイトペーパーをプレゼント
製造業の現場で使える実務資料(PDF)を無料でお届けします。"こんな資料が届きます" ↓ 下のボタンからどうぞ。
FREE DOCUMENT — サービス資料(PDF・無料)
見積依頼から比較まで、
ひとつの画面にまとめる方法
Newji one は、製造業の調達・受発注に特化したクラウド/AIエージェント。見積依頼・発注書作成・進捗管理・承認をひとつの画面に集約し、AIが比較と異常検知を担当。最後の「GO」だけ人が押す仕組みです。
▶ 見積依頼から比較までをひとつの画面にまとめる方法を、資料で見る(PDF・無料)
- 見積〜発注〜納期を一元管理。催促・転記のムダをゼロに
- AIが相見積もり比較と異常検知。あなたは判断だけに集中
- 取引先は「招待」で完全無料。自社コストだけで取引先ごとデジタル化
※ 取引先から招待された企業様は完全無料でご利用いただけます
見積・発注クラウド Newji one
受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。
