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蛍光ランプの製造・輸出入の禁止と、照明・設備の調達

この記事のポイント(結論先出し)
水銀に関する水俣条約の決定を受けて、日本でも一般照明用の蛍光ランプの製造・輸出入が種類ごとに段階的に禁止される。電球形は 2026 年 1 月 1 日(30 W を超えるものは 2027 年 1 月 1 日)、コンパクト形は 2027 年 1 月 1 日、直管形と環形は 2028 年 1 月 1 日からで、ハロりん酸塩を主成分とする蛍光体を使った直管形・環形は 2027 年 1 月 1 日からである[1]。使用・販売・購入は禁止されない[1]。ただし、部品として他の製品の製造に使うことも原則禁止になるので、自社で作る機械や装置に一般照明用の蛍光ランプを組み込んでいる場合は設計の変更が要る[1]。2026 年 10 月時点で発注側がやることは、工場・事務所の照明と、機械や検査設備に組み込まれた蛍光ランプを数え、交換用ランプの在庫と、器具ごとの切り替えの順番を決めておくことである。
目次
何が、いつ禁止されるのか
2023 年 10 月 30 日から 11 月 3 日にジュネーブで開かれた水俣条約の第 5 回締約国会議(COP5)で、蛍光ランプの製造等を種類に応じて 2026 年末または 2027 年末までに禁止することが合意された[3]。環境省は、過去に合意されたものを含めると、全ての一般照明用の蛍光灯について 2027 年末までに製造と輸出入が禁止されることになったと説明している[3]。
日本では、水銀による環境の汚染の防止に関する法律(水銀汚染防止法)の施行令を改正する政令が 2024 年 12 月 24 日に閣議決定され、一般照明用の蛍光ランプなどが「特定水銀使用製品」に加わった[2]。特定水銀使用製品は、製造と、部品として他の製品の製造に使うことが原則禁止される[1]。輸出入は外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいて規制されている[1]。
種類ごとの禁止時期は次のとおりである。
| 種類 | 製造・輸出入の禁止 | 例外の時期 |
|---|---|---|
| 電球形蛍光ランプ | 2026 年 1 月 1 日 | 30 W を超えるものは 2027 年 1 月 1 日[1] |
| コンパクト形蛍光ランプ | 2027 年 1 月 1 日[1] | — |
| 直管形蛍光ランプ | 2028 年 1 月 1 日 | ハロりん酸塩を主成分とする蛍光体のものは 2027 年 1 月 1 日[1] |
| 環形蛍光ランプ | 2028 年 1 月 1 日 | ハロりん酸塩を主成分とする蛍光体のものは 2027 年 1 月 1 日[1] |
| 電子ディスプレイ用の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)・外部電極蛍光ランプ(EEFL) | 2026 年 1 月[2] | — |
同じ政令では、ボタン形の酸化銀電池・空気亜鉛電池や、電気式の圧力計(溶融圧力トランスデューサなど)も 2026 年 1 月から規制の対象に加わった[2]。圧力計は、水銀を含まない適当な代替製品が使えない場合の、大規模な装置に取り付けられたものや高精密度の測定に使うものが除かれている[2]。照明以外にも、設備の部品として水銀使用製品を買っている場合があるということである。
禁止されないことを正しく伝える
環境省は、蛍光ランプの使用・販売・購入は禁止されないと明記している[1]。現在使っている蛍光ランプはそのまま使い続けてよい[6]。一方、禁止されるのは製造と輸出入だけではなく、ランプを部品として新しい製品の製造に使うことも含まれる[1]。社内で「蛍光灯は使用禁止になった」と誤って伝わると、まだ使える器具を一斉に撤去する、不要な緊急工事を発注するといった無駄が生じる。
一方で、製造と輸入が止まれば、交換用のランプは市場の在庫が尽きた時点で手に入らなくなる。環境省も、蛍光ランプがいずれ使えなくなることを想定して計画的に LED 照明へ切り替えるよう勧めている[6]。購買の問題は「いつ禁止か」より、「交換用のランプがいつまで手に入るか」と「器具の切り替えにどれだけの期間と工事が要るか」である。
特殊用途のランプは対象外——ただし判断を自社でしない
規制の対象は「一般照明用」の蛍光ランプである[1]。日本照明工業会は、一般照明用を「照度を確保するためのものであって、高演色用及び低温用その他の特殊の用途にのみ用いられるもの以外のもの」と定義し、特殊用途の例として、色比較・評価用、検査用、高演色用(美術館・撮影用など)、植物・生物用、紫外線カットランプ、医療機器用、半導体工場用、紫外線照射用などを挙げている[4]。
製造業の現場には、色見本の比較に使う照明ブース、外観検査の照明、クリーンルームの紫外線カットランプなど、特殊用途にあたりうるランプがある。ただし同会の資料は、この資料で特殊用途かどうかの判断が難しい場合は経済産業省に確認することを勧めている[4]。また、同会は特殊用途であることを識別するためのガイドライン(ガイド B014)を定めている[4]。「検査に使っているから特殊用途だろう」と購買が自分で決めないこと。ランプの品番ごとに、メーカーまたは販売店に特殊用途品かどうかを確かめ、回答を残す。
外観検査の照明条件を仕入先と合わせる必要があるのは、照明の種類が変わると見え方が変わるからである。LED に替えるときは、検査基準の照度や色の見え方を合わせ直す。外観の合否基準の決め方は 外観の合否基準を仕入先と決める で扱う。
機械・設備に組み込まれた蛍光ランプを見落とさない
建物の照明は総務や設備の部門が把握していることが多い。見落としやすいのは、機械や設備に組み込まれたランプである。工作機械の機内照明、検査装置やルーペ付きの照明、制御盤の照明、色見本の観察ブース、古い表示器のバックライトなどがある。電子ディスプレイ用の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)は 2026 年 1 月から規制の対象になっている[2]。古い表示器を修理部品で維持している設備では、交換部品が手に入らなくなる時期が早く来る。
洗い出しは、次の順で進めると漏れが少ない。
- 建物の照明器具を、フロアごとに型式と灯数で数える(品番が「F」や「EF」で始まるものが多い[1])
- 保全部門の設備台帳から、照明・表示器を持つ機械を拾う
- 品番ごとに、一般照明用か特殊用途かをメーカー・販売店に確かめる
- 交換用ランプの年間使用数と、手元の在庫数を並べる
- 器具ごとに、LED へ替える方法(器具ごと交換か、ランプだけの交換か)と工事の要否を決める
LED へ替えるときの発注の注意
蛍光灯を LED 照明に替える方法は、照明器具ごと交換する方法と、既設の器具のままランプだけを LED ランプに替える方法の二つがある[5]。製品評価技術基盤機構(NITE)は、後者で不適切なランプ交換による事故が報告されているとして、次の三つを守るよう注意を呼びかけている[5]。
- 蛍光灯器具の点灯方式に応じた LED ランプを選ぶ
- LED ランプのパッケージや取扱説明書の注意事項を守って作業する
- 交換後に異常がないか確かめる
同じ発表によれば、2024 年 10 月末時点の既設照明の LED 化率は約 6 割である[5]。残りの 4 割の中に、点灯方式がばらばらの古い器具が混ざっていることは珍しくない。購買が「LED ランプ」として一括で発注すると、現場で器具に合わない品が届く。発注の単位は「ランプ」ではなく「器具と点灯方式の組み合わせ」にし、器具ごとに対応品を決めてから数をまとめる。器具ごと替える場合は電気工事が必要になることもある[1]。工事を伴う発注は、施工会社の選定と日程の調整に時間がかかるので、禁止の時期から逆算して早めに見積を取る。
LED ランプや照明器具を海外から直接調達する場合は、電気用品安全法の対象にあたるかどうかの確認も要る。対象品を調達するときの確認事項は 電気用品安全法(PSE)の対象品を調達するとき確かめること を参照してほしい。
交換用ランプの在庫をどう持つか
使用と購入が禁止されないので、交換用のランプを在庫として持つこと自体は問題ない[1]。ただし在庫は、器具を替えるまでの「つなぎ」として持つものである。持ちすぎると、切り替えの後に使い道のないランプが残り、廃棄の手間と費用がかかる。
在庫の量は、切り替えの完了予定日までの交換数に、予定が遅れた場合の余裕を足して決める。切り替えが数年に及ぶ場合は、建物や設備ごとに完了予定日を分け、それぞれに必要な数を出す。製造が止まった型式は、市場の在庫が減るにつれて手に入りにくくなるので、型式ごとの仕入先の在庫状況を定期的に確かめる。
切り替えの計画を、社内の誰と決めるか
照明の切り替えは購買だけでは決められない。建物の照明は総務や設備管理、機械に組み込まれたランプは保全、検査の照明は品質保証が持ち主であることが多い。購買の役目は、それぞれの持ち主から「どの器具を、いつまでに、どの方法で替えるか」を聞き取り、発注の単位にまとめることである。
まとめ方の例を挙げる。まず、禁止時期の早い種類(電球形、コンパクト形、ハロりん酸塩の直管形・環形)を使っている場所を先に並べる[1]。次に、交換の頻度が高い場所(点灯時間の長い製造ライン、屋外灯など)を優先する。最後に、工事を伴う場所は、生産を止められる日(長期休暇や定期保全の日)に合わせて工事日を決める。工事日が先に決まれば、そこから逆算して見積・発注・納期の日程が引ける。
品質保証が持ち主の検査照明は、切り替えの前後で検査結果が変わらないことを確かめる時間を、工事とは別に取っておく。仕入先の検査と見え方を合わせている場合は、仕入先にも切り替えの予定を早めに伝える。
外したランプの処理
オフィスや工場で出た蛍光ランプは、廃棄物処理法などの関連法令に従って適正に処理する[1]。切り替え工事を発注するときは、外したランプと器具を誰が、どの許可を持つ業者で処理するかを見積の範囲に入れておく。工事の発注先と処理の委託先が別になる場合は、それぞれの契約に何を含めるかを明確にする。
よくある質問
2027 年以降、手元の蛍光灯を使い続けると違法になるか
ならない。禁止されるのは製造、輸出入、部品として他の製品の製造に使うことの三つで、使用・販売・購入は禁止されない[1]。自社で製造する機械に一般照明用の蛍光ランプを組み込むことは原則禁止に当たるが、機械や家具に組み込む目的で作られた照明器具用のランプは特殊用途の例に挙がっているので、品番ごとに一般照明用かどうかを確かめる[4]。ただし交換用のランプが手に入らなくなれば、器具を替えざるをえなくなる。
海外の工場で使う蛍光灯を日本から送れるか
特定水銀使用製品の輸出入は外為法に基づいて規制されている[1]。禁止時期を過ぎた種類のランプを輸出する場合は、外為法上の扱いを経済産業省の案内で確かめる必要がある。海外の工場の照明は、現地での調達を前提に切り替えを計画するほうが確実である。
検査用の照明は特殊用途だから気にしなくてよいか
特殊用途のランプは一般照明用ではないので規制の対象外になりうるが、どのランプが特殊用途にあたるかは品番ごとに確かめる必要がある[4]。検査に使っていても、一般照明用のランプを使っている場合は対象になる。
LED に替えたら、検査の見え方が変わった
光源が変わると、色やキズの見え方が変わることがある。照明を替える前後で限度見本を見比べ、検査基準の照明条件(光源の種類、照度、見る距離)を書き直す。仕入先と同じ基準で検査している場合は、仕入先の検査場の照明も合わせる。
まとめ
一般照明用の蛍光ランプは、種類ごとに 2026 年 1 月から 2028 年 1 月にかけて製造・輸出入が禁止される[1]。使用・販売・購入は禁止されない[1]が、交換用のランプが手に入らなくなる日は来る。自社で作る製品の部品に一般照明用のランプを使うことも原則禁止なので、組み込み品は特殊用途に当たるかを品番で確かめる[1][4]。発注側は、建物の照明と機械・設備に組み込まれたランプを数え、品番ごとに一般照明用か特殊用途かを確かめ[4]、器具と点灯方式の組み合わせで LED への切り替えを発注する[5]。交換用ランプの在庫は切り替えまでのつなぎとして量を決め、外したランプの処理まで見積の範囲に入れておく。化学物質や冷媒など、設備の調達に関わる他の規制は 冷媒(フロン類)規制の強化と、空調・冷凍設備の調達 と 化学物質の自律的な管理と、仕入先から受け取る SDS で扱う。製品に含まれる水銀の確認は RoHS 適合を仕入先からどう確かめるか を参照してほしい。
出典・参考資料
- 一般照明用の蛍光ランプの規制について(環境省)
- 「水銀による環境の汚染の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定について(環境省/2024 年 12 月 24 日)
- 「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議」の結果について(環境省/2023 年 11 月 9 日)
- ランプの「一般照明用」及び「特殊用途」の定義並びにその具体的な用途又は製品例について 第3版(日本照明工業会/2025 年 11 月 28 日更新)
- さらば蛍光灯、ようこそLED ~でもランプ交換 ミスると事故に~(製品評価技術基盤機構/2025 年 3 月 27 日)
- 蛍光ランプの製造・輸出入禁止(ecojin)(環境省/2026 年 4 月 15 日)
「禁止」の範囲を一次情報で確かめてから、社内に伝える
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