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投稿日:2026年10月1日

RoHS適合を仕入先からどう確かめるか——宣言書・分析・適用除外

この記事のポイント(結論先出し)

RoHS 指令が見ているのは製品全体の平均ではなく、均質材料ごとの濃度である[1]。仕入先から集める証拠は「含有しないという宣言」「どの材料に何が入っているかという成分情報」「分析データ」の三つで、役割が違う。分析は万能ではなく、蛍光 X 線はふるい分け(スクリーニング)に使い、疑わしいものだけを化学分析で確かめるのが一般的な組み立てである[4]。調査は一度集めて終わりにせず、材料・工法・仕入先が変わったときと、規制の対象物質や適用除外が動いたときに取り直す。仕入先が適用除外を使うと言ってきたら、除外の番号と附属書を書かせ、現行の有効期限を原典で確かめる。

RoHS で確かめるのは「均質材料ごとの濃度」

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RoHS 指令(2011/65/EU)は、EU 市場に出る電気・電子機器について、附属書 II に挙げた物質を含まないことを求める。ここで言う「含まない」は、ゼロを意味しない。指令は、附属書 II に定める均質材料あたりの重量濃度の上限までは許容するとしている[1]。

均質材料の定義は、全体が一様な組成の材料、または複数の材料からなっていても、ねじを外す・切る・砕く・削る・研磨するといった機械的な手段で別の材料に分けられないもの、である[1]。たとえば、めっきしたねじは、母材の鋼と表面のめっき層がそれぞれ別の均質材料になりうる。ケーブルなら、導体の銅、絶縁体の樹脂、外側のシースが別々に評価される。部品全体の重量で割って「0.1% を下回っている」と言っても、薄いめっき層や小さな樹脂部品の中で濃度が超えていれば適合しない。

購買の現場で最初に起きる行き違いは、ここである。仕入先が「部品としては基準内」と回答し、発注側が「材料ごとに基準内か」を聞いているつもりでいると、同じ「適合」という言葉で別のことを話していることになる。依頼文には「均質材料ごとに」と書き、回答もその単位で求める。

対象物質は 10 種類

2011 年の指令の時点で附属書 II にあったのは、鉛・水銀・カドミウム・六価クロム・ポリ臭化ビフェニル(PBB)・ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)の 6 物質だった[1]。2015 年の委員会委任指令(EU)2015/863 が附属書 II を置き換え、フタル酸エステル 4 物質(DEHP・BBP・DBP・DIBP)を加えた。加盟国はこの規定を 2019 年 7 月 22 日から適用し、医療機器と監視・制御機器(産業用を含む)へのフタル酸 4 物質の制限は 2021 年 7 月 22 日からとされた[2]。

物質 均質材料あたりの上限(重量) 部品で出てきやすい場所の例
鉛 0.1% はんだ(手直し工程での混入を含む)[5]
水銀 0.1% (品目ごとに仕入先へ確認)
カドミウム 0.01% (品目ごとに仕入先へ確認)
六価クロム 0.1% 亜鉛めっきの化成処理(クロメート)[3]
PBB・PBDE 各 0.1% 樹脂の臭素系難燃剤[5]
DEHP・BBP・DBP・DIBP 各 0.1% 塩化ビニルの電線被覆(DEHP の例)[6]

表の上限値は指令と委任指令の附属書 II の値である[1][2]。右の列は社内で調査の当たりを付けるための例で、規制の条文ではない。例が書いていない物質も、品目ごとに仕入先へ確認する。カドミウムだけ桁が一つ小さいことは、回答書の数値欄を読むときに見落としやすい。

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証明の責任は誰が負い、なぜ部品の仕入先にまで聞くのか

指令は、EU 市場に機器を出す製造者に対して、技術文書を作り、内部生産管理の手続きを行い、EU 適合宣言書を作成して CE マークを付けること、技術文書と適合宣言書を市場に出してから 10 年間保管することを求めている。さらに、量産品が適合を保ち続ける手順を持ち、製品の設計や特性の変更、適合の根拠にした整合規格の変更を適切に反映することも求めている[1]。

整合規格(EU 官報に参照が掲載された規格)に従って試験・評価された材料・部品・機器は、指令の要求に適合しているとみなされる、という規定もある[1]。ここで重要なのは、指令自体は「部品の仕入先に何をさせよ」とは書いていないことだ。製造者が技術文書の中で適合を説明できるように、部品と材料の情報を下から積み上げる。その積み上げが購買に回ってくる、という構造である。

したがって、自社が EU へ機器を出す製造者なら、部品の仕入先から集めた証拠はそのまま技術文書の材料になる。自社が部品メーカーで、顧客がその製造者なら、自社の回答が顧客の技術文書の一部になる。どちらの立場でも、仕入先に求める書類は「自分が説明責任を負える形」でなければ役に立たない。

仕入先に出させる証拠は三つの層に分ける

製品含有化学物質の管理について、業界団体の解説は次のように整理している。管理が必要な化学物質の種類は非常に多いため、含有の有無を分析で評価しようとすればサプライチェーンの各段階で大きな費用がかかる。現実的なのは各段階で分析を繰り返すことではなく、各社が原料と工程の管理によって自社製品中の特定物質の濃度を管理し、その結果を川下に伝えることだ、というものである[3]。

この考え方に沿うと、仕入先に出させる証拠は三つの層に分かれる。

証拠の種類 何がわかるか 弱点 求める場面
非含有・適合の宣言書 仕入先が適合を約束していること 根拠が見えない。対象品番と版がずれやすい 全品目。最低限の入口
成分情報(材料ごとの含有物質と濃度) どの均質材料に何がどれだけあるか 仕入先の上流から情報が来ないと埋まらない 自社が製品の集計をする品目
蛍光 X 線のスクリーニング結果 元素(鉛・カドミウム・クロム・臭素など)が多いか少ないかの目安 クロムの価数や臭素系難燃剤の種類までは分けられない 受入時の抜き取り、変更直後の確認
化学分析の報告書 対象物質の定量値 試料の取り方で結果が変わる。費用と日数がかかる スクリーニングで疑わしいもの、リスクの高い材料

宣言書は「何に対する宣言か」を固定する

宣言書で起きる不備の大半は、対象の取り違えである。品番は書いてあるが版(図面の改訂記号や材料の変更履歴)が書いていない、品番群をまとめて宣言しているが対象外の品番が混じっている、適合の根拠にした附属書の版が古い、といったものだ。宣言書には、品番・版・宣言日・対象の規制(指令と附属書の改正を含む)・均質材料ごとに判断したこと、の五つを書かせる。宣言日が古いものは、後で述べる「取り直しのきっかけ」と照らし合わせて扱う。

分析は「ふるい」と「確定」を分けて頼む

RoHS に対応した分析では、まず蛍光 X 線分析で一次スクリーニングを行い、その後に誘導結合プラズマ発光分析・質量分析・原子吸光などの化学分析で正確な定量を行うのが一般的だと、日本分析化学会の標準物質開発の報告は述べている。同じ報告は、分析値の信頼性を確保するには含有量を保証した認証標準物質が欠かせないとしている[4]。

持ち運べる蛍光 X 線装置について解説した論文も、こうした装置は公定法としては定められておらず、その前段階のふるい分けに使われることが多いと書いている。大量の試料を素早く測り、疑わしいものを公定の方法でより精密に分析する、という分担である[5]。

購買としての使い方は、ここから決まる。仕入先から「蛍光 X 線で測って問題なし」という結果だけを受け取ったら、それはふるいを通ったという意味で、六価クロムや特定の臭素系難燃剤の不含有を確定したものではない。逆に、ふるいで疑わしい値が出たからといって直ちに不適合とは限らない。分析を頼むときは、どちらの段階の結果が欲しいのか、どの均質材料を試料にするのかを依頼書に書く。試料の取り方は、めっき層だけを測りたいのか母材ごと測るのかで結果が大きく変わる。

分析で見つけにくいものは工程で押さえる

分析だけでは捕まえにくい事例もある。めっきの化成処理液は六価クロムから三価クロムへ置き換えが進んでいるが、製造の時点で存在していない六価クロムが条件によって生成する可能性があり、意図しない含有がありうると、めっき工程の管理の解説は指摘している[3]。また、無鉛はんだで自動実装した基板でも、不具合を手で修正するときに鉛はんだを使ったことのあるこてを使うと鉛が混入した例がある、と前述の論文は紹介している[5]。

どちらも、出荷時の分析でたまたま捕まえるより、工程の取り決めで防ぐほうが確実だ。めっきを外注している部品なら、化成処理の種類と処理液の管理を仕入先との取り決めに入れる。手直しの工程があるなら、使う工具とはんだの区分を確認項目にする。表面処理を含む外注の取り決め方は めっきの仕様の決め方 で扱う。

調査の頻度は「時間」ではなく「変化」で決める

「年に一度取り直す」と決めている会社は多い。期間で区切るのは管理しやすいが、規制の側から見ると、意味があるのは変化のほうである。指令は、製造者に設計や特性の変更と整合規格の変更を反映することを求めている[1]。また、附属書 II の物質の見直しと改正の手続きも指令の中に置かれている[1]。

そこで、取り直しのきっかけを次のように決めておく。

1. 材料・工法・製造場所の変更
仕入先の材料の切り替え、めっき・塗装の外注先の変更、工場の移転。4M(人・機械・材料・方法)変更の届出の中に、含有化学物質の確認を組み込む。

2. 仕入先の上流の変更
商社経由で買っている部品は、商社が仕入れ先を変えても知らされないことがある。商社には、製造元が変わったら知らせることを取り決めに入れる。

3. 規制の改正
附属書 II の対象物質の追加や、附属書 III・IV の適用除外の改正。改正があったら、影響する品目を洗い出して取り直す。

4. 宣言書の古さ
上の三つが起きていなくても、一定期間を超えた宣言書は内容の再確認を求める。期間の長さは自社の製品の性格で決める(法令で決まった期間はない)。

適用除外を使うと言われたときの確かめ方

RoHS には、代替が科学的・技術的に困難な用途などについて、附属書 III と附属書 IV に適用除外を置く仕組みがある。指令は、適用除外の有効期間を、附属書 I の分類 1〜7・10・11 については最長 5 年、分類 8・9 については最長 7 年とし、個別に決め、更新もできるとしている[1]。更新の申請は期限の 18 か月前までに出し、委員会が更新の決定をするまで既存の除外は有効のままとされる。更新が却下された場合や取り消された場合は、決定の日から早くて 12 か月、遅くて 18 か月で失効する[1]。

ここから、購買が確かめるべきことが三つ出てくる。

除外の番号と附属書を書かせる。「適用除外品」とだけ書いた回答では、どの用途の除外を使っているのかがわからない。附属書 III か IV か、その中の番号、対象の物質と用途を書かせる。

自社の製品の分類で使える除外かを確かめる。同じ番号でも、機器の分類によって期限や扱いが違う場合がある。部品の仕入先は最終製品の分類を知らないことが多いので、ここは発注側が判断する。

現行の期限を原典で確かめる。適用除外は改正が頻繁で、期限付きのものが多い。この記事では個々の期限を書かない。古い一覧表や回答書に書かれた期限を信じず、EU の公式の法令データベースで、改正を反映した統合版を見て確かめる。更新の申請中で「決定まで有効」になっている除外は、却下されれば 12〜18 か月で切れる[1]ので、代替材の検討を止めない。

発注書・仕様書に何を書いておくか

RoHS への適合は、図面には書かれないことが多い。図面の材質欄が「SUS304」でも、そのねじのめっきや、組み込まれた樹脂部品の添加剤は図面に出てこない。だから、要求は購買仕様書か取引の取り決めの側に書く。購買仕様書の書き方 でも、不使用の証明を出荷時の付帯書類として仕様書に書いておかないと、納入後に依頼することになると述べている。

書いておく項目は次のとおり。

  • 適合を求める規制(指令名と、附属書の改正を反映した版で判断すること)
  • 判断の単位(均質材料ごと)
  • 提出させる証拠の種類と時期(新規採用時、変更時、規制の改正時)
  • 適用除外を使う場合の事前の申し出と、番号・附属書の明記
  • 材料・工法・製造場所・上流の仕入先を変えるときの事前の連絡
  • 不適合が判明したときの連絡と、出荷済み品の扱い

受入の基準として扱うなら、発注の時点で明示しておくことが前提になる。発注後に基準を厳しくして不合格にすると、取引の相手方によっては受領拒否ややり直しの問題になる。どこまで返品・やり直しができるかは 受領拒否・返品・やり直しはどこまで許されるか にまとめている。

実務で起きやすい不備と、その直し方

回答が「部品全体で 0.1% 未満」になっている
均質材料ごとの判断に直してもらう。めっき層や小さな樹脂部品が混じった部品では、全体で割ると基準を下回って見えることがある。

蛍光 X 線の結果だけで「六価クロムなし」と書いている
蛍光 X 線はクロムの総量を見ているにすぎない。化成処理のある部品では、処理の種類の申告と、必要に応じて六価クロムの分析を求める。

商社が自社名で宣言書を出しているが、製造元が書いていない
宣言の根拠をたどれない。製造元の名称と、製造元から受け取った根拠資料を出してもらう。

カドミウムの欄だけ 0.1% と書かれている
カドミウムの上限は 0.01% である[1][2]。様式を古い版から作り直したときに起きやすい。

適用除外の期限を、何年も前の一覧表で判断している
現行の統合版で確かめ直す。期限が近い除外を使っている部品は、代替の検討を購買の課題として持っておく。

成分情報の集め方は別の記事で

RoHS の確認だけを個別の宣言書でやっていると、REACH など別の規制の調査が来るたびに、同じ部品について別の様式で聞き直すことになる。材料ごとの成分情報を共通の様式で集めておけば、RoHS の判断にも他の規制の判断にも使い回せる。業界共通の様式の一つである chemSHERPA の入門資料は、コネクタ付きケーブルという単純な製品でも、導体・絶縁体・シースごとに含有物質と含有率を並べると表がこれだけ長くなる、という例を示している[6]。共通様式の位置づけと、回答のどこを確かめるかは REACH などの含有化学物質の調査を仕入先に依頼するとき で詳しく書く。顧客から同時に求められることの多い紛争鉱物の調査は 紛争鉱物の調査(CMRT)を仕入先に依頼するとき にまとめた。仕入先を新規に採用する段階での確認項目は 新規仕入先をどう審査するか を参照してほしい。

まとめ

RoHS への適合を仕入先から確かめるときは、まず判断の単位を均質材料にそろえる。証拠は宣言書・成分情報・分析の三層に分け、分析は蛍光 X 線のふるいと化学分析の確定を区別して頼む。めっきの化成処理や手直しのはんだのように、分析で捕まえにくい混入は工程の取り決めで押さえる。調査は期間ではなく変化をきっかけに取り直し、適用除外は番号と附属書を書かせたうえで現行の期限を原典で確かめる。これらの要求は発注の時点で仕様書や取り決めに書いておく。

出典・参考資料

  1. Directive 2011/65/EU on the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment (recast)(欧州議会・理事会/2011 年 6 月 8 日、EU 官報 L 174)
  2. Commission Delegated Directive (EU) 2015/863 amending Annex II to Directive 2011/65/EU(欧州委員会/2015 年 3 月 31 日)
  3. 製品中の含有化学物質の管理と情報伝達(JAMP 管理ガイドライン作成技術委員会/表面技術 Vol.66 No.5、2015 年)
  4. 有害金属成分蛍光 X 線分析用プラスチック認証標準物質 JSAC 0631, 0632 の開発(中野和彦ほか/分析化学 Vol.56 No.5、2007 年)
  5. ハンディー型蛍光 X 線元素センサー(河合潤/材料と環境 Vol.60、2011 年)
  6. chemSHERPA 入門ガイド(アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)/2022 年 5 月 9 日改版)

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