- お役立ち記事
- 行政×製造業が創る“地域特化型サプライチェーン”の競争優位
行政×製造業が創る“地域特化型サプライチェーン”の競争優位

目次
はじめに:行政×製造業で拓く“地域特化型サプライチェーン”の時代
ものづくり大国・日本の現場は今、新たな転換点を迎えています。
国際紛争やパンデミック、原材料の高騰、物流の混乱などに直面し、グローバルサプライチェーンの脆弱さが露呈しています。
こうした背景のもと、国内回帰と地域密着型のサプライチェーン整備が、あらためて大きな注目を集めるようになりました。
最近では、行政と製造業が連携して「地域特化型サプライチェーン」を構築し、地域全体で競争力を高める動きが活発化しています。
本記事では、現場のリアルな視点から、その実態と課題、成功事例、今後の可能性について読み解いていきます。
なぜ今、“地域特化型サプライチェーン”なのか
1. グローバル分断リスクと地産地消志向
コロナ禍以降、グローバル化が進みすぎた結果、単一地域・特定国への依存が大きなリスクであることが浮き彫りとなりました。
例えば半導体や重要原材料の調達が数カ国に依存しすぎていたことは、ものづくりの現場に大きな混乱をもたらしました。
このようなリスクに対し、「地産地消」の思想が急速に広まりつつあります。
原材料・部材・加工の調達範囲を“県域”“ブロック内”に限定し、「顔の見える」関係性を活用する戦略です。
この潮流の中で行政機関が大きな舵取り役を果たし始めています。
2. 行政が果たす“接着剤”としての役割
行政は従来から、地場産業の振興策や補助金施策を展開してきました。
しかし、ここ数年の特徴は“従来型の単発イベント的な連携”ではなく、サプライチェーン再編という「連続的かつ実利重視」の取組である点です。
具体的には、
– 地域ごとの産業連携マッチング事業
– 外部委託から地元企業の再発掘・再連携
– 調達・開発・生産・物流のバリューチェーン全体最適化
こうした新たな仕組み作りに、行政がリアルな現場を巻き込んでイニシアチブを取っています。
現場で見た「地域特化型サプライチェーン」の構造と実際
1. 地域中小企業との連携深化
大手メーカーの調達部門では、これまで“コスト至上主義”の名のもと海外調達や大手サプライヤーへの集中傾向が顕著でした。
しかし、海外調達リスクに直面した2020年以降、国内中小企業への再注目が始まっています。
例えば、地方自治体が主導する「地場マッチングフェア」「受発注企業オープンデータ化」などは、バイヤーにとって新たなサプライヤー発掘の場です。
中小企業も“選ばれる側から選ばれる側”へと転換し、品質や納期管理、技術提案力を磨く動きが活性化しています。
2. 地域連携→スピード納品と高付加価値化
実際の現場で強く実感するのは、地域内サプライチェーンの「意思疎通の速さ」と「短納期対応の柔軟さ」です。
同じ時間帯でのコミュニケーション、顔の見える関係性を活かした現場連携は、従来の大手間・海外間の取引では得難いスピード感を生みます。
実際に、ある精密板金メーカーでは、地元の金型・表面処理業者とのコラボで特急納期案件を次々と実現し、緊急対応型の新規取引を拡大しています。
複数の業者を行政が束ね「○○地域供給ネット」としてブランド化する事例も増えています。
アナログ業界に根強い“昭和型調達”とのせめぎ合い
1. 「長年の付き合い」の功罪
未だに製造業の多くの現場では、長年の取引関係やいわゆる“昭和的現場力”が大きな力を持っています。
調達購買部門にとって、人脈・情実・現場感覚による判断はリスクヘッジの手段でもあります。
しかし、それが新規サプライヤーの参入障壁となり、地域資源活用やイノベーション創出の障害ともなっています。
例えば、「うちは○○商会さんにしか仕事を頼まん」という意識が、変革を阻む壁となるケースを現場で何度も目にしています。
2. デジタル化への“心理的壁”
調達現場で強く残るのは、紙伝票・FAX・電話…といった旧来のアナログ文化です。
行政はデジタルマッチングなど革新的な仕掛けを投入していますが、「デジタル慣れ」していない現場サイドの抵抗感も根強く存在します。
本当に地域で競争力を高めるには、ベテラン現場と若手の新知識、そして行政のテクノロジー支援を“三位一体”で磨いていく必要があります。
行政×製造業連携の成功事例から学ぶ
1. 「岡山ものづくりサプライチェーン再編プロジェクト」
岡山県では、県がハブとなり、県内の中小製造業のシーズと、大手バイヤー側のニーズを一元データ化。
マッチングサイト運営に加え、リアルな交流会・工場見学会・現場での設備見学会などを積極的に開催しています。
これにより、従来は知ることのなかった地場の金属加工業が自社の構成部品に採用され、「県内受注比率」を20%近く引き上げたという実例があります。
2. 「東北自動車部品サプライネット」
東北地方は震災以降のサプライチェーン再構築のなかで、部品メーカー横断の情報共有・人材流動プラットフォームを構築。
各サプライヤーがもつ特殊技術に行政が光を当て、部品OEMのみならず開発段階への参画も促進しました。
この結果、自動車バイヤー側も「持たざるリスク」を低減し、地元部材の調達率向上、コスト低減とBCP両輪が実現しています。
今後の展望:行政リーダーシップ×製造現場の主体性
1. バイヤー(調達購買)に求められる“共創型目線”
今後、調達購買部門は「安く仕入れて利幅を稼ぐ」という時代を越え、いかに“地域全体で生き延びるか”を構想する視座が求められます。
そのためには、
– 業界の“垣根”を超えた現場開拓力
– 地場企業とのフラットなコミュニケーション
– リスク分散と付加価値見極めの目利き力
といったバイヤーとしての本来的な力量がますます問われる時代になっています。
2. サプライヤーに求められる“発信力”と“つながる力”
サプライヤーも「安定取引が一番、下請け仕事さえ入ればよい」という意識から一歩踏み込み、自らのウリ・独自技術・地域連携力を“見える化”しアピールすることが重要です。
行政のイベントやマッチングの場はその第一歩。
また、工場同士の横連携・分業提案も、新時代のサプライチェーン競争力を高めるカギとなっています。
3. デジタルとアナログ、最強タッグを作るべし
デジタル化は不可避ですが、現場のリアルな職人技や人脈を“消去”するものではありません。
むしろ、デジタルは“現場の強み”をさらに引き出す道具です。
昭和的な泥臭い現場合理性と、令和のスマートな経営判断が織りなす「いいとこ取り」連携が、日本型ものづくりの武器となります。
まとめ:地域特化型サプライチェーンで製造業は強くなる
これからの時代、行政と製造業が密着し「地域全体で強く生きる」ことがサプライチェーン構築の新常識となります。
従来の枠組みやしがらみ、アナログ文化の良さも活かしつつ、チームジャパンで“顔の見える競争力”を築き上げていきましょう。
製造業に携わるすべての方に問います。
「自分と自社が、この地域サプライチェーンでどんな役割を果たせるか?」
共に知恵と力を出し合い、令和のものづくり新時代を切り拓いていきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)