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購買課長になってから現場に行く回数が減った後悔

目次
購買課長になってから現場に行く回数が減った後悔
はじめに ― 購買課長就任の高揚感とその影で忍び寄る変化
製造業の現場でキャリアを重ねる中、誰もが一度は憧れる購買課長というポジション。
私自身も現場からの叩き上げで管理職へと昇進し、与えられる裁量やステータスに心が躍りました。
しかし、あの決裁印の重さや新たな責任の実感と引き換えに、私は現場からどんどん足が遠のいていったのです。
そして、それがどれほど大きな損失だったのか、今になって痛感しています。
この記事では、現場から離れて初めて気付いた本当の価値や、アナログ業界ならではのしがらみ、バイヤー目線の心得、サプライヤーや若手に伝えたいヒントについて、私自身の体験をもとに深く掘り下げていきます。
なぜ購買課長は現場に足を運ばなくなるのか
データで管理できる時代が来た錯覚
購買課長になると、日々デスクの上に山積みになる書類、PC画面でリアルタイムに見られる進捗管理、各種レポート…。
一見すれば、現場に行かずとも全てが手のうちにあるような感覚になります。
「今やモノも情報もデジタルで管理できる」と過信してしまいがちです。
しかし、定量的な数値は現場のすべてを表せるわけではありません。
現場でしか掴めない“空気感”、細かな兆候、ベテラン作業員の「今日はちょっといつもと違うな」という表情──。
これらこそ品質トラブルや納期遅延の芽を早期に察知するうえで不可欠なのです。
会議漬けとメール漬けの日常
課長になると社内外の調整、経営層との会議、グループ会社との連携など、やるべきことが爆発的に増えます。
無意識のうちに“効率化”に走り、現場よりもオフィスでの仕事に多くの時間を割くようになります。
気付けば、メールと電話でやりとりするばかり…。
「現場に顔出すぐらいなら、その分意思決定を早めてやろう」と、自分に言い訳をしてしまうのです。
この小さな“サボり”が、現場との距離を取り返しのつかないほど開いてしまいます。
周囲からの期待とプレッシャー
購買課長は、社のコスト構造や供給体制そのものを左右する重大な役割を担います。
経営層やスタッフから「現場のことは現場の主任たちができるから」「課長には中長期視点で全体を見てほしい」と言われることも多々あります。
ですが、これも大きな罠です。
現場を本気で知っている人が購買権限者であるからこそ、説得力ある交渉やリスク察知ができます。
現場を「任せきり」にすることで、ゆるやかに組織の強みは失われていくのです。
現場でしか学べない「本質的な情報」
現場で掴む、設備・人・ムードの変化
工場の現場というのは、毎日同じに見えていて、実は常に多くの変化が潜んでいます。
設備の日常点検やオペレーターの様子、材料の置き方や流れが、毎日じわじわと変化します。
私が現場に顔を出していた頃には、ベテランの一言で「近々あそこが故障しそうだ」「このロット、どうもいつもと違う」といった“感覚的な警報”がよく上がってきました。
けれど、購買課長になると、そのような現場の微妙な変化を肌で感じなくなります。
この「現場感覚」の有無が、バイヤーの力量を大きく左右するポイントなのです。
サプライヤーとのフェイス・トゥ・フェイス
デジタル時代においても、サプライヤーとの人間関係は購買活動を左右し続けています。
メールやWeb会議だけではニュアンスが伝わらず、結果的に小さなミスやすれ違いが大きな損失につながります。
たとえば現場を一緒に歩くことで、その工程ごとに「どこまで無理が利くのか」「追加の作業を依頼したときの現場負荷」を直接見て相手に配慮できるバイヤーは、それだけで信頼を勝ち得ます。
現場を知っているバイヤーと、知らないバイヤーでは、サプライヤーの対応や情報提供の質が如実に変わるものです。
信頼関係の蓄積は“現場の汗”の上にある
購買課長としての経験を通じ、机上の理論や交渉術だけでは、現場の信頼や本当の協力体制は生まれてこないと痛感しました。
現場で汗をかき、キツい時間帯をともに乗り越えた人間同士の結束力は、マニュアル化できません。
「現場に足を運ぶ」ことは、単なるパトロールや監督業務ではなく、現場の本音を引き出し、管理職自身が仲間意識を深める唯一の方法だと改めて気付かされたのです。
バイヤーが現場から学ぶべき3つの力
1. 問題発見力 ― “兆し”を嗅ぎ取る嗅覚
現場で培った“異常の萌芽を見つける力”は、バイヤーにとって最強の武器です。
データでは絶対に現れない現場のちょっとした混乱、工程員の些細な表情の変化、使われなくなった道具のホコリ…。
これを瞬時にキャッチし、自分の調達方針や指示に反映できるかが、購買の「仕事の質」を決めます。
2. コミュニケーション力 ― “聴く力”と“肌で話す力”
現場に行くと、声を張り上げる必要もありませんし、気まずい会話も不要です。
相手の動きを見て、目線を感じて、時には黙って作業を眺めるだけでも、相互理解が自然に進みます。
現場の声を“聞く”のではなく、“聴いて感じる”ことこそが大切です。
3. 信頼創出力 ― “いつも見ているよ”のメッセージ
現場へ定期的に訪れることで、「課長さん、今日も来てくれたんだ」と感じてもらえる。
この存在感の積み重ねが、困難な時にスタッフやサプライヤーが率直に相談してくれる雰囲気を生みます。
そこからしか生まれない情報やアイデアが、利益や品質、コストに直結することを、私は何度も体験してきました。
アナログから抜け出せない業界だからこそ、現場重視
アナログ文化は無駄じゃない、強みに変わる
日本の製造現場は、いまだにFAXや対面確認が根強く残る“昭和文化”が続いています。
無駄に見える部分も多いが、これが現場力の源泉である場合もあります。
たとえば、書面での確認、台帳・手帳への記録、現場ごとのルールや暗黙知。
現場主義の文化が、デジタルが苦手とする“例外対応”や“ちょっとした気遣い”につながっています。
若手バイヤーにはぜひ、「アナログの現場にこそ最先端のヒントあり」と伝えたいです。
デジタル化と現場主義は両立できる
もちろん、DX推進やペーパーレス化が進む中、データの活用は不可欠です。
しかし、バイヤー自身がそれを「現場のための道具」として使いこなす視点がなければ、本末転倒です。
現場で不足する情報や課題を肌で見極め、そこにデジタルの力をどのように投入するか。
この順番を間違えないこと、つまり“現場重視のDX”こそが製造力向上の鍵となります。
バイヤー志望・サプライヤー志望の方へのアドバイス
バイヤーになる前に、絶対やっておきたい経験
バイヤーを本気で目指すなら、最低3か月は現場作業員と一緒に汗を流してみてください。
自分自身で材料を運び、不良分析を体験し、何時間も同じ工程を見続ける。
これだけで、机上で学ぶ100時間の資料よりも、圧倒的な説得力が得られます。
たとえ現場作業の全てを知り尽くすことはできなくても、その大変さや“現場の空気”を知っているバイヤーであれば、サプライヤーから舐められることも減り、社内でも頼りにされる存在になれます。
サプライヤーがバイヤーの思考を知るヒント
サプライヤーの方こそ、機会があれば是非自社を担当するバイヤーと一緒に現場を歩いてみてください。
「バイヤーがどの部分に注目しているのか」「いつもどこで質問をしてくるか」を観察することで、要求される期待値や判断基準が見えてきます。
また、現場ネタや“現場の事情”を自分から積極的に発信することも大切です。
本当に信頼されるサプライヤーは、「机の上」ではなく「現場の最前線」でバイヤーと並走しています。
後悔から生まれる、これからの現場主義
現場を「卒業」した管理職へ
かつての私は、現場に行かなくても意思決定ができる“スマートな管理職”に憧れていました。
しかし、それは大きな勘違いでした。
長くものづくりに携わるならば、現場に根差し、泥臭さを恐れず、自分の足で現場を歩き続けるバイヤーでいたい。
これがいま、心からの本音です。
現場に行かないことの“楽さ”に負けず、今日も現場主義を地道に積み重ねていくことこそ、製造業の未来につながる。
そう強く信じています。
まとめ ― 読者の皆さんへ
「購買課長になってから現場へ行く回数が減った」ことに、私は今でも深く後悔しています。
しかしその経験を通して、本当に大切なことにも気づきました。
製造業に携わる方、これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの皆さん。
ぜひ今こそ、現場の“泥臭さ”を自分のものとして体感してください。
あなたの強さは、現場でしか磨かれない。
未来の製造業に、現場主義の新しい風を吹かせていきましょう。
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