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購買部門が注目すべき日本発グリーン調達とコスト削減の関係性

目次
はじめに:製造業とグリーン調達の最新潮流
日本の製造業は、幾多の変革を経て世界トップレベルの品質と技術力を築いてきました。
しかし、昨今ではカーボンニュートラルやサステナビリティへの対応が求められ、購買調達部門も従来の発想だけでは通用しなくなりつつあります。
その中で特に注目度が高まっているのが、「グリーン調達(グリーンパーチェシング)」です。
グリーン調達は単なる環境配慮にとどまらず、コスト削減やサプライチェーンの強靱化、企業価値の向上など、製造業経営にとって多様なメリットを生み出します。
本記事では長年現場で培った実体験と業界動向をもとに、購買部門がグリーン調達で押さえるべき要点と、コスト削減との関係性を解説します。
グリーン調達とは―日本での定義と広がり
グリーン調達の基本的な考え方
グリーン調達とは、原材料・部品・製品などの調達時に、「環境に優しい」かどうかを重要な選定基準とする調達活動を指します。
これは、リサイクル材の利用や、有害物質の削減、再生エネルギーの活用など、調達品や供給元の選定に環境負荷低減の観点を組み込むものです。
国際的にもISO14001(環境マネジメントシステム)が浸透し、日本では大手自動車メーカーなどを中心に、グリーン調達ガイドラインの策定・運用が加速しています。
日本独自の実践例
日本では2000年以降、多くの企業が「グリーン調達基準」を設け、サプライヤーに対しても化学物質管理やCO2排出削減計画、環境ラベル取得などの対応を求めています。
たとえば、トヨタ自動車のグリーン調達ガイドラインや、パナソニック・ソニーなど電機メーカーの化学物質規制基準(グリーン調達制限物質リスト)などが有名です。
つまり、グリーン調達は単なる一過性の取り組みではなく、業界全体のルール・基準として強く根付いてきているのです。
昭和型アナログ業界のグリーン調達へのギャップ
なぜ“昭和的な購買”から脱却できないのか
日本の製造業は、誠実な現場主義・品質重視で世界をリードしてきましたが、「価格」「納期」「品質」の三要素を最重視するあまり、環境配慮は後回しにしがちでした。
特に中小企業や下請け中心の古い体質が残る業界では、「環境コストは余分な負担」「グリーン調達は大企業だけのもの」というイメージが根強くあります。
また、紙ベースの調達業務や、暗黙知・属人化した選定基準では、グリーン調達の要求事項をサプライヤーに的確に伝達し評価するのは難しいのが現実です。
デジタル化の遅れとリスク
未だにFAXや手作業が中心の購買業務では、調達品のトレーサビリティ確保や環境情報の一元管理が困難です。
結果、コンプライアンス違反リスクや、サプライヤーとの信頼関係の悪化、グローバル規制(RoHS指令、REACH規則など)対応漏れといった実害も増加しています。
昭和的なやり方を続けることは、もはや時代遅れであり、これからの購買部門は「グリーン×デジタル」の視点で抜本的な変革が必要です。
グリーン調達がもたらすコスト削減効果の真実
表層的な「コストアップ」イメージを乗り越える
「グリーン調達はコストが上がる」と考える方は多いかもしれません。
再生材や環境対応材料は割高、選定・監査業務も手間がかかる、サプライヤーにも投資負担が発生する、といった不安は確かに存在します。
しかし実際は、グリーン調達を本質的に取り入れた企業は、長期的に見てトータルコストリダクションを実現しているケースが増えています。
具体的なコスト削減メカニズム
- 使用材料・部品数を見直し標準化、調達手配・管理コストの削減
- グリーン設計やサプライヤー連携による軽量化で物流コストが減少
- 再エネ導入や省エネ化で、製造原価自体の低減
- 廃棄物・有害物質削減による環境対策費や処理コストの抑制
- 環境負荷低減でCO2排出権の購入コストや規制違反リスクを回避
こうした「見えないコスト」まで踏まえたトータルな視点で企画・設計・調達を見直すことで、短期的な調達価格の上昇を遥かに上回る、中長期のコスト競争力強化につながります。
購買バイヤーが今すぐ実践できるグリーン調達のポイント
1. サプライヤー選定評価の再設計
従来の「価格・納期・品質」に加え、環境対応やサステナビリティ指標(CO2削減目標達成度、環境マネジメント認証、トレーサビリティ対応など)を明確な評価基準として加えましょう。
発注先選定時、グリーン調達ガイドライン遵守状況をRFI(情報提供依頼書)や見積手続きの中で必ず確認する習慣を根付かせることが大切です。
2. 情報収集と社内外コミュニケーションの強化
グリーン調達を自社だけに留めず、サプライヤーや関係部署と頻繁にコミュニケーションを取りましょう。
サプライヤーの「現場まで見に行く」地道な活動や、ウェブ・SNS・業界セミナーで最新技術や法規制情報をキャッチアップすることが必要です。
また、デジタルツール(調達クラウド、環境情報データベース等)の活用も不可欠です。
3. “小さな一歩”から始める現場変革
一度にすべてを変える必要はありません。
たとえば、「事務用品からエコ製品に切り替える」「購買申請にグリーン調達項目を追加する」「サプライヤーのCO2削減活動へのインセンティブ付与」など、現場の“できるところから”段階的に取り組みましょう。
トップダウンとボトムアップ、どちらも活かしながら「我が社ならではのグリーン調達体制」づくりを目指します。
サプライヤーの視点―バイヤーが本当に求めていること
購買バイヤーがグリーン調達で重視しているのは、「実績」や「書類」だけではありません。
むしろ現場を見ると、サプライヤーの以下のような姿勢を高く評価しています。
- 自社の強みと課題を正直に開示し、グリーン対応で「できること」「できないこと」を明示する
- 環境対応コストの内訳を正確に説明し、バイヤーと一緒にコストダウン提案を検討する
- 調達だけでなく、設計変更や工程改善なども含めたバリューチェーン全体での対策提案ができる
- 将来の法規制や業界動向を踏まえて、新技術や代替素材情報などを能動的に提供できる
価格競争力だけでなく、「グリーン調達パートナー」としての信頼と協力姿勢が、今後はますます評価の分かれ道になるでしょう。
ラテラルシンキングで切り拓く、日本型グリーン調達の新たな地平
「調達=コスト」から「調達=価値創造」へ
この二十年で現場は大きく変わってきました。
購買というと値切り交渉やコストダウンが使命、という昭和的な発想はすでに限界にきています。
設備投資やサプライヤー開拓に変化はつきもの。
世界がサステナブルの大転換期にある今こそ、日本型モノづくりの粘り強さを「グリーン×コスト競争力」に転換する好機です。
バイヤーは単なる「買い手」ではなく、サプライチェーン全体での価値創造のコーディネーター。
サプライヤーは「安く早く納める存在」から、「一緒に未来を作るパートナー」です。
グリーン調達は調達部門が新たなリーダーシップを発揮できる分野であり、脱炭素の潮流でも「値段重視」から中長期的な利益創出へ舵を切るチャンスなのです。
まとめ:調達現場から日本の産業をアップデートしよう
グリーン調達は形だけ取り入れても意味がありません。
本当に企業価値やコスト競争力を高めるには、現場目線で小さな実践を積み上げ、バイヤーとサプライヤーが“我が事”として知恵と工夫を繰り返すことが重要です。
アナログな現場こそ、変革の余地と学びが多い場所です。
「グリーンはコストになる」の発想を、「グリーンこそ新たなコスト競争力の源泉」に変えていきましょう。
変わらないように見える日本のものづくりですが、本気のグリーン調達発想があれば、まだまだ進化の余地は大きい。
ぜひこの記事が、製造業で働くバイヤー・サプライヤー・現場の皆さんの実践と対話の一歩になれば幸いです。
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