OEMによる猫用キャットタワー開発で売れる商品の条件

はじめに──OEMによる猫用キャットタワー開発の時代背景

近年、ペット需要の増加とともに猫用キャットタワー市場が急拡大しています。
「巣ごもり需要」「ペットは家族」という社会の変化によって、単なる“猫が遊ぶ用品”から“飼い主のインテリア”や“猫のQOL（生活の質）を高める必需品”へと、キャットタワーの存在価値も変化し続けています。
一方で、日本の製造業、特に家具・生活雑貨関連は、未だ昭和的なアナログ部品管理や人間関係、ベタなQCサークル体制などが根強く残り、イノベーションと現場力とのせめぎ合いが続いています。

OEM（相手先ブランド製造）を活用したキャットタワー開発は、こうした業界動向を追い風に、斬新かつ現場に優しい商品の誕生に大きな可能性を秘めています。
この記事では、20年以上の現場経験をもとに、現場目線・バイヤー目線・サプライヤー目線で「売れるOEMキャットタワー」の条件を徹底的に解説します。

OEMによるキャットタワー開発とは

OEMのメリットと現場での活かし方

OEMとは、発注側（バイヤー）が自社ブランドで販売するために企画やデザインを指示し、製造側（サプライヤー）が製造を担当するものです。

製造業界の現場に根強い“垂直統合”型思考から、いまや商品の多様化やコスト低減、スピード開発、高付加価値化のためにOEM活用が当たり前となりました。
　
例えば、キャットタワーの機能追加（インテリア性・省スペース構造・多頭飼い専用化）、バイヤー独自カラー・ノウハウ・販促企画の早期導入、流行の素材や強度規格への柔軟対応などのメリットが挙げられます。

現場としては、従来の“下請け体質”から「共創パートナー」に脱皮するチャンスでもあります。
自社の加工技術や在庫管理ノウハウを活かしながら、バイヤーとWin-Winの関係を築くことがOEM開発の本質です。

OEMが失敗するパターン──旧態依然の落とし穴

一方で、OEMによるキャットタワー開発は、旧態依然としたアナログ慣習や、現場軽視の“机上論プロジェクト”が介在すると失敗しやすい傾向があります。

たとえば、
– 「デザイナーの独りよがりで設計が複雑化、製造現場が混乱」
– 「バイヤー（発注元）が市場トレンドを理解せず、在庫を抱えて負の連鎖」
– 「サプライヤー（製造側）のコスト低減努力が伝わらず、両者不満」
こういった事例が枚挙にいとまがありません。

だからこそ、“現場で生きる実践的なカイゼンノウハウ”と“製造現場の変革意識”が、OEMで成功する鍵となります。

売れるOEMキャットタワーに共通する５つの条件

1. 本音の“現場＆バイヤー思考”が商品設計に反映されている

猫用キャットタワーは、「買い手（飼い主）」のニーズ、「使い手（猫）」の安心、安全、本能的欲求、そして「流通・小売り」の効率収納や訴求性、さらに「作り手（工場）」の量産性という、複数の満足が重なって初めてヒット商品になります。

商品設計時は机上で描くだけではなく、以下の声を反映させるべきです。
– 飼い主：「部屋に置きやすいサイズ」「組み立てが簡単」「掃除しやすい」
– 猫：「登りやすく滑りにくい」「隠れ場所の有無」「丈夫な爪とぎ」
– 小売業者：「パッケージが場所を取らない」「POPやSNS映え」
– 製造現場：「少人数でも生産効率化できる」「傷つきやすい部材対策」
これらを偏りなく盛り込むことが、他商品との差別化につながります。

2. 差別化されたデザインとトレンドへの対応力

売れるキャットタワーの特徴は、「今」のトレンドに合った個性を備えていることです。

近年では、
– 木目やナチュラルテイストなどインテリアと調和したデザイン
– 部屋が狭くても設置できる“省スペース＆多機能”
– 屋外や壁掛け式など新しい設置スタイル
– 猫のストレス軽減や健康増進を意識したデザイン
こういった要素が消費者の心を動かしています。

OEMで市場調査やマーケティング知見を組み込む体制があれば、類似品との差別化や販売チャネルの多様化に繋げられます。

3. 品質・安全性と法規対応、そしてコストとのベストバランス

キャットタワー市場の“売れ筋”には、必ず「安全性最優先」の意識があります。
現場では「安かろう・悪かろう」を徹底排除することが求められます。

– 頑丈なジョイント部、倒壊しにくいベース
– 化学物質過敏症（猫・ヒト）への配慮＝F☆☆☆☆や自主基準
– 必要なフィラー・接着剤・ネジ部の管理
– サンプリングによる現場抜き打ち検査
– 法規制（SGマークやPSE取得等）は必須

同時に、製造現場で「仕様変更・コストダウン指示」が乱発されると、人手負担やミス増加に直結します。
“設計原価”と“現場実態”のギャップを埋める対話や、“量産初期段階での現場カイゼン”は欠かせません。

4. サプライチェーンの透明性と柔軟なBOM管理

OEMによるものづくりでは「調達購買力」も重要です。
キャットタワーの場合、多様な材料（木材・金属・布地・紙管・ボンドなど）が絡み合います。

売れ続けるキャットタワーは、リスク分散した仕入れ先確保や、BOM（部品表）管理の徹底、トレーサビリティの強化が不可欠です。
ここが昭和型の「なあなあ調達」と大きく異なるポイントです。

– どの部材がどこから来てどこまで追いかけられるか
– 異常時に即座にロットトレースできる体制
– コストや品質に応じてサプライヤーを切り替えられる柔軟性
これらをバイヤーに見せることで、「御社を選ぶ理由」を高められます。

5. “アナログ現場力”と“デジタル自動化”の絶妙なブレンド

工場自動化やデジタルトランスフォーメーション（DX）が叫ばれる一方、キャットタワーの現場では「手作業ゆえの品質」や「ベテランの目視検査」が大きな強みになることもあります。

最新の自動化機器導入だけが正解ではありません。
重要なのは、自社工場、またはパートナー工場で
– 樹脂・金属加工の自動化設備を生かす
– 布の縫製や巻き付けは熟練者の手仕事の価値を最大化
– デジタルでの生産進捗・品質情報連携
など、“人と機械”の絶妙な融合です。

現場で「見える化」や「異常発生の共有・即対応」が実現できれば、バイヤー側も安心して継続的なOEM依頼が可能になります。

OEMキャットタワー開発の成功事例と失敗事例

成功パターン：対話と現場を重んじた共創の例

ある大手ペット用品会社では、OEM先工場と月次勉強会を実施し、市場クレームや新機能企画を現場まで“見える化”。
発注者、現場担当者、設計・調達部門が垣根を越えて「なぜこの設計変更か」「なぜコストダウンが必要か」「どこが使いにくかったか」をフラットに情報共有し、商品改善のPDCAを強化。
その結果、市場シェアを急拡大させました。

失敗パターン：デスクワーク重視の“現場軽視”で起きたトラブル

反対に、ある家具OEM案件では、「価格」「見た目」だけを優先し、長時間使うことで発生する“グラツキ”や“素材の変形”といった現場での品質課題に目を向けませんでした。
“設計部門と製造現場の連携を怠り”、送られてきたサンプル品が最終量産品と大きく異なり、納入後の不良クレームが多発。
最悪の場合、リコールに至りました。

OEM＝“丸投げ”と考えると、こうした失敗が繰り返されます。