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試作検証不足により量産後に欠陥が見つかった場合の責任分担

目次
はじめに:試作検証不足がなぜ起こるのか
製造業の現場において、製品開発プロセスの中で避けて通れないのが試作と検証の工程です。
しかしながら、試作検証が不十分なまま量産に突入し、その後になって致命的な欠陥が発覚するケースは、現在でも後を絶ちません。
これは昭和から続くアナログな慣習や、現場特有の「なんとかなるだろう」という楽観主義、それに加え納期短縮やコスト削減圧力が拍車をかけているのです。
本記事では、試作検証不足が引き起こす問題の本質、そして量産後に欠陥が見つかったときの責任分担について、実践的な現場目線と業界動向も踏まえ、深堀りします。
また、バイヤーやサプライヤー双方の立場からも、どのようにリスクマネジメントすべきかを解説していきます。
試作検証の目的と現場での課題
試作検証は「モノづくりの命綱」
試作検証は、製品設計の意図が実際の現物として成立しているか、製品の品質や機能、量産性まで含めて確認する非常に重要なプロセスです。
ここでの落とし穴は「図面通りにできていればOK」とする風潮。
実際には設計・試作・検証のループを繰り返すことでしか、本当の問題点は見えてきません。
現場目線の「検証コスト」と「納期圧力」
試作検証には手間もコストも掛かります。
現場では「1回の確認で良いだろう」「客先と合意が取れれば進めよう」と最小限の検証で済ませてしまう風潮があります。
バイヤーからの厳しい納期要求、サプライヤーの利益確保の事情が背景にあり、ここがアナログ業界ならではの温床となっています。
量産後に欠陥が見つかる原因
「検証の抜け道」あるある
例えば「量産用治具は未完成だったが、手作業で試作品が通ればOKと判断」「本来の使用条件を省略して検証」「一部の工程だけを簡易評価」「スペック外の事象を見なかったことに…」。
こういったことは現場では日常茶飯事です。
バイヤーもサプライヤーも本音では「本番でどうにかなる」と考えてしまいがちです。
ヒューマンエラーと組織構造の問題
経験則に頼る職人気質、縦割り組織による情報伝達の遅れ、上層部からのプレッシャー。
多層的な原因が複雑に絡み合い、「問題点の先送り」が常態化しています。
欠陥発覚時の責任分担の基本構造
仕様主導型の場合
バイヤーが明確な仕様書を提示し、サプライヤーがそれに完全に従って製造・納品している場合。
この場合、「仕様通りに作ったのに欠陥が出た」なら、設計(バイヤー)側の責任が大きいです。
協働開発型の場合
バイヤーとサプライヤーが協働で設計・レビュー・検証プロセスを進めるケース。
この場合、責任分担は曖昧になりがちです。
通常は「どの段階まで、どのような検証を、どちらが実施・承認したか」が問われ、エビデンス(各種帳票、試験成績書、承認記録など)の有無が重要な判断材料となります。
日本的な「なあなあ」の責任分担
日本の製造業で根強く残るのが「関係性」重視のアプローチです。
たとえば「年単位で取引関係を築いている相手には強く言えない」「現場担当同士で交渉し、結局損失は分け合う」といったケースです。
表向きの合意内容と裏での譲歩が混在し、外部監査などでトラブルが長期化することも。
実際の責任分担が決まるポイントとは
契約書・注文書の曖昧さ
日本の製造業では、「基本契約はあるが個別案件の細部までは詰めていない」「注文書に充分な仕様記載がない」というケースが依然として多いです。
ここが海外先進企業との大きな違いです。
欠陥が発覚しても、契約書だけでは責任の切り分けができず、結局「話し合い」での解決になりがちです。
検証プロセスのドキュメント管理
誰が・いつ・どの検証を・どの基準で・どんな結果で・どのように承認したか。
これらをしっかり記録管理しておくことが、責任分担トラブルを防ぐ最大のポイントです。
実際には「現場で口頭合意のみ」「担当が異動して引継ぎが曖昧」ということもよくあります。
損失分担交渉とその現実
製品の出荷停止、リコール、再検証コスト、廃棄費用など、損失は多岐に渡ります。
バイヤー側は「協力工場に責任」と主張し、サプライヤーは「設計段階でリスクを伝えたのに」と反論。
現実的には「損失を分け合う」か「一時的にどちらかが負担しつつ、中長期で価格/取引条件に転嫁する」といった落とし所に向かう場合がほとんどです。
取引関係維持が今も大きなプライオリティです。
バイヤー・サプライヤー・現場それぞれの対策
バイヤー側:仕様詰め&ドキュメント強化のすすめ
バイヤーは発注時に、仕様を「技術要件」だけでなく、「検証方法」「評価基準」まで明文化しましょう。
サプライヤーとの試作・検証記録は、書面・データで必ず保存。
トラブル時のエビデンスになるだけでなく、組織内での引き継ぎ・ノウハウ継承にも役立ちます。
サプライヤー側:提案型検証」で主導権を握れ
単なる「言われたモノを作って納める」で終わらず、「こういう条件では不具合リスクがある」「この追加検証を提案したい」といった能動的な動きが、最終的に自社を守ります。
現場レベルでのヒヤリハットや経験知は、必ず社内で共有し、主張できる体制を作りましょう。
現場(生産・品質管理):横断的なコミュニケーションでリスク共有
現場担当者、設計、購買、品質管理が部門横断でリスクを共有・議論できる場を作ることが重要です。
特に試作検証の段階で「どこまでやれば本当に安心できるか」について腹を割って話し合う文化作りが欠かせません。
アナログ業界でも進む自動化と品質保証体制の変化
デジタルツールや生産現場の自動化が進む一方、アナログ的な現場判断や個人スキル頼みは、依然として多く残っています。
しかし、生産管理システム(MES)、電子帳票、IoTセンサーによるトレーサビリティ強化などが、徐々に責任分担問題を見える化しています。
昭和的な「なあなあ」から、明文化とエビデンス重視への転換期とも言えるでしょう。
量産後に欠陥が発覚した際の対応フロー
まずは事実把握と初期対応(即時報告・原因特定)
欠陥の現象を正確に把握すること、関係者と情報を共有することが最優先。
ここで責任追及に走るより、事実を淡々と挙げていくほうが結果的にスムーズです。
社内・取引先間での臨時チーム結成と初期応急処置
バイヤーもサプライヤーも、現場担当だけでなく管理職・品質保証・法務も巻き込んだ臨時チームを組み、損失最小化に動きます。
契約・仕様・検証記録の洗い出し
トラブル発生時は、契約書・仕様書・検証記録・議事録などを再度精査。
どの段階でどのような合意・承認があったかを可視化し、今後の交渉材料とします。
損失分担の交渉・社外調整
現実には「ゼロ百」の責任分担はまれです。
今後の取引継続もにらみつつ「損失の折半」や「再発防止策の共同推進」を条件に落としどころを探すのが定石です。
まとめ:製造業の発展に必要な未来志向のマインド
「試作検証不足による量産後の欠陥」は、単なるミスや不注意の問題ではありません。
バイヤー・サプライヤー双方の現場文化、業界特有の慣習、組織間・組織内コミュニケーションの複雑さが絡む、根深い課題です。
だからこそ、今こそ昭和的な「なあなあ」を脱して、エビデンスに基づく透明な責任分担、検証〜量産までをトータルで見渡す新しい視点が求められています。
そして、その第一歩は「日々の現場コミュニケーション」「ドキュメントの蓄積・活用」です。
製造業に関わる全ての人が、自らの職責を全うしつつ、未来志向のモノづくりに進んでいきましょう。
現場で見たこと・感じたことを、次世代に惜しみなく伝え合うことで、業界全体の底上げと持続的成長につながります。
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