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返品発注ワークフローを自動化し滞留在庫を解消したリバースロジスティクスDX

目次
はじめに:製造業に広がるリバースロジスティクスとその課題
製造業の現場で注目されるキーワードの一つが「リバースロジスティクス」です。
もともとは販売された商品が消費者や取引先からメーカーへ返品される流れを指していましたが、近年は回収、再利用、廃棄に至る一連のプロセス全体が重要視されています。
特に大手メーカーでは、保証対応や出荷ミス、余剰在庫、季節商品といった避けられない返品が年々増加しています。その処理フロー、多くの現場で「返品発注ワークフロー」として独自に設計されていますが、未だにFAX・メール・紙文書などアナログ手法が根強く残っています。
結果として、滞留在庫や誤出荷、対応遅延、余剰コストといった問題が恒常化しています。
この記事では、20年以上の製造業勤務経験をもとに、返品発注ワークフローを自動化して滞留在庫を解消したリバースロジスティクスDXの実践レポートをお伝えします。現場で生きる実践的ノウハウと共に、昭和スタイルから脱却する為のヒントと、今後の業界動向についても触れていきます。
なぜ返品発注が現場の悩みなのか
複雑で属人化した返品フローの実態
多くの製造業現場では、「返品には返品専用帳票を起票」「倉庫に返送されたら受入担当者が手書きで仕分け」「不良分析担当が内容をチェック」など、返品に関わるフローが断片的に運用されています。
業務部門と品質管理部門、物流、調達購買、生産管理など関係者が多く、人手介在により属人化しやすいのが特徴です。
担当者ごとに「引き取り申請は承認印が要る」「午後の便で戻ってきた分は翌日対応」など独自ルールまで蔓延し、全体最適がなされにくい状況が多くの現場で見られてきました。
滞留在庫の元凶に‐「見えない」返品
返品発注の遅れにより、在庫が本来の状態に戻らず、帳簿在庫と実在庫が不一致になりやすくなります。
また、返品内容や数量の把握が遅れることで、部材調達や生産計画に影響を及ぼし、最終的に「使えるはずの在庫が見つからない」「どこに何がどれだけあるか分からない」といった混乱を招きます。
現場では毎月棚卸ごとに突合せミス・数量違いが発生し、余剰発注によるコスト増、急な不足による緊急手配などサプライチェーン全体にダメージを与える状態です。
リバースロジスティクスDXの全体像
「つなぐ」「見える化」「自動化」‐3本柱のアプローチ
リバースロジスティクスDXの中心となるのが、「プロセスの標準化とシステム連携による自動化」「返品データのリアルタイム見える化」「部門間コミュニケーションのシームレス化」の3本柱です。
1. 返品受付から承認、出荷指示、倉庫処理、検品・入庫まで、フロントからバックエンドまで一貫したデジタルワークフローを構築
2. 返品ステータスや数量、滞留日数、不適合理由などのデータをリアルタイムで「見える化」し、在庫・調達計画へ即反映
3. システム上で部門間の申請〜承認〜処理依頼を繋ぐことで、属人化・ブラックボックス化を防止
ポイントは、「既存業務のデジタル化」ではなく、「業務設計そのものを現代的に再構築」し直すことです。
導入の第一歩は業務課題の棚卸しから
現場主導によるDXの落とし穴は、「システム先行による現場の混乱」と「過去に合わせたツギハギ運用」です。
まずは現場の現実をよく見て、「なぜそのフローなのか?」「実務でどんな困りごとが起きているか?」を徹底的にヒアリングして棚卸しを行うこと。
そのうえで、「本当に必要な工程」「リードタイム短縮やミス・モレを減らせる設計」「他部門・外部企業との連携ポイント」を見極めていきます。
実践:返品発注ワークフロー自動化プロジェクトの具体的ステップ
1. 現状フローの全体可視化(AS-IS分析)
まずは現行業務マッピングを行い、全工程で「誰が」「どのタイミングで」「どんなデータ/帳票を」「どうやって扱っているか」を棚卸しします。
現場に入ると、手帳にメモ、Excel手入力、FAX送信、手書き伝票など多様な仕事のやり方が混在しています。
これら全てを「見える化」し、ボトルネックやミスの起点、作業負荷の高いポイントを明確にします。
2. 返品カテゴリの標準化・データベース化
返品理由や処理パターンが複雑化している場合、カテゴリごとに「どう処理するか」標準フローを設計します。
「A)不良品交換」「B)余剰返品」「C)誤出荷」「D)品質疑義」などに区分し、それぞれのパターンについて
・必要な申請情報項目
・承認フロー
・倉庫への指示内容
・入庫/廃棄判定
を明文化します。
同時に、これらをマスタデータ化し、ワークフローシステムにインプットしていくことがポイントです。
3. ワークフローのデジタル化・自動化
多くの企業が採用しているのは、既存の基幹システム(ERP・販売管理・生産管理)にポータルを追加し、返品処理申請と承認をWEB化する方法です。
・発注側(バイヤー)が返品申請→承認メール→自動で出荷指示が飛ぶ
・物流側で受領→個別バーコードで入庫処理→倉庫・滞留在庫がリアルタイム更新
・品質担当や管理者がデータを即時共有し、次工程の指示を自動発行
この仕組みを構築することで、「誰が」「どの返品を」「いつ・どこに・どんな状態で」処理したか、全部が追跡できる状態となります。
4. データ活用による滞留在庫の即時分析と活用
システム化の最大のメリットは、「返品在庫のリアルタイム可視化」にあります。
各返品品のステータス(未開封・開封済み・検品済・入庫保留)も即時に把握できるため、
・再検品し、再販可能なものは別在庫に切り分け
・本格的な不良品はその場で廃棄申請
・「使えるのに埋もれていた部材」を新規発注数から即減算
といった、現場の“もったいない”を見える化し、使えるリソースを最大化します。
リバースロジスティクスDXがもたらす効果・価値
経営的メリット:コスト・在庫削減と柔軟なサプライチェーン管理
返品発注ワークフローの自動化がもたらす最大の価値は、「サービスレベル維持」と「サプライチェーン全体最適化」、そして「経営資源の圧縮」です。
・返品・滞留在庫が可視化され、余剰発注・緊急発注が大きく減少
・在庫の回転率が改善し、キャッシュフローが健全化
・現場リソース(人手・工数)も最適化、付加価値業務に集中できる
・サプライヤーとの調達・販売計画に柔軟対応
例えば、ある工場では月間150件の返品処理を全て自動化することで、人的工数を40%削減できたうえ、突発的な部材不足や在庫ロスをほぼゼロに抑制できました。
現場目線の変化:ストレス低減と新たな価値創造
現場での一番の変化は「返品あるある」のストレスから解放され、「すぐに返品品の状態が分かる」「次工程への依頼がスムーズ」といった利便性の向上です。
現場での異動や担当替えにもフローがそのまま活きるため、業務の属人化・ブラックボックス化も解消されます。
また、返品分析データの蓄積により、設計開発部門が「再発防止の要因解明」「不具合の流出根絶」に生かすことも可能。リバースロジスティクスが単なる後始末でなく、製品全体の品質向上に資する「攻めの業務」へ進化しています。
アナログ文化の壁をどう乗り越えるか
現場の本音:「なぜ変えられないのか」
製造業の現場は、昭和の成功モデルに立脚した「紙・ハンコ文化」「前例踏襲主義」が色濃く残っています。
「今までこのやり方でやって来られたから」「システム化はかえって面倒」といった抵抗感も根強いものです。
対応のポイント:現場参加型・段階的導入で成功へ
私が現場で実践したアプローチは、「現場担当・パートさん・倉庫・事務方の声を徹底的に拾い、一緒にフロー設計に関わってもらう」ことです。
最初から100%デジタル移行はせず、「一部紙・人手ありでも、まず1工程の見える化・自動承認」を段階的に導入します。
メリットが実感できれば、「ほかのフローや工程も自動化したい」と現場側から提案が出るようになりました。
また、トラブル発生時の「現場直通ヘルプデスク」「改善提案の吸い上げ窓口」も効果的でした。
サプライヤー・バイヤーが知っておきたい今後の変化
サプライヤー視点:「返品=コスト」だけではない関係性づくり
サプライヤー側としては、返品対応がコスト負担や納期遅延の元になりがちでしたが、返品データの自動共有とワークフロー連携により
・返品要因分析の見える化
・早期の改善対応や情報展開
・バイヤーとの信頼関係向上
を実現できるようになります。
「返品は敵」ではなく、「現場の品質・課題情報を即キャッチアップして、次の商談や改善提案に生かす」攻めの調達取引ができる時代です。
バイヤーを目指す方へ:「返品フローDX=調達の新常識」
現在のバイヤーは、価格交渉や納期管理だけでなく、「返品・リバースロジスティクス管理」こそがサプライチェーン改善の鍵になる時代です。
返品からの改善サイクルをマネジメントするスキルは、これからのキャリアで必須となります。
現場との連携やデジタルツールの使いこなし、サプライヤーとの信頼構築など、ぜひ現場を巻き込みながら実践してみてください。
まとめ:現場目線のリバースロジスティクスDXで新しい価値を創る
返品発注ワークフローの自動化は、単なる業務効率化に留まらず、製造現場の隠れた問題を可視化し、経営資源の最適化、品質改善サイクルの基盤づくり、サプライチェーン全体の強靭化につながります。
現場での実践知と、部門横断の目線を大切にしながら、これからの製造業の発展にリバースロジスティクスDXをぜひ活用してみてください。観念的なデジタル化ではなく、現場で「使える」「役立つ」ものこそが、未来の業界標準となる時代です。
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