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サプライヤ内製外注の比率を見直し最適生産で単価を引き下げる診断

目次
はじめに:製造業における「最適生産」とは何か
製造業の現場で働く皆さんにとって、「内製と外注の比率」は、日々頭を悩ませる課題の一つです。
競争が激化する中、顧客からの単価引き下げ要請は避けられません。
しかし、安易なコスト削減は長期的な競争力の低下を招きます。
内製・外注の比率を戦略的に見直し、最適な生産体制を構築することが、品質・納期・コストの三立てを実現し、サプライチェーン全体の価値を最大化するカギです。
本記事では、長年の現場経験をもとに、昭和的な体質の名残が色濃く残る製造業の現場目線から、診断・見直し・実践ポイントまでを徹底解説します。
バイヤー、バイヤーを目指す方、そしてサプライヤー側からの視点も盛り込みながら、単価引き下げにつながる「最適生産診断」の進め方を詳しくご紹介します。
内製・外注の比率が生産力を左右する理由
製造現場で起こりがちな「惰性の内製」
製造業界では、「昔から自社で作っているから」という理由で、曖昧なまま続く内製品目が多く見受けられます。
業務フローの見直しや自動化が遅れることで、本来の強みであるべき自社独自技術がいつの間にか時代遅れになってしまうケースも珍しくありません。
内製には、ノウハウ蓄積や技術継承、細かな仕様への即応性といった大きなメリットがあります。
しかし、スケールメリットや外部の最新設備・加工技術、そして調達コスト低減という観点で、積極的な外注活用も決して疎かにはできません。
過度な外注依存の落とし穴
一方、コスト削減の名のもとに外注比率を増やし過ぎると、自社の技術的優位性や品質管理力が失われていきます。
サプライヤ依存によるリードタイム延長、特殊品質への対応遅れ、生産スケジュールの柔軟性低下など、多くの問題を招きます。
極端な内製回帰と極端な外注化、どちらにもリスクがあります。
その境界線を論理的・戦略的に再整理することが重要なのです。
診断すべき6つのポイント
内製・外注比率を見直す際の現場診断ポイントを、以下6つに分けてご紹介します。
1. 技術のコア/ノンコアの仕分け
まず、自社にとっての「コア技術」と「ノンコア業務」を徹底的に見極めることが重要です。
コア技術とは、他社に安易にまねできず、自社の競争優位の源泉となる技術やプロセスです。
これらは、安易に外注化すべきではありません。
逆にノンコア業務や標準化可能な工程は、専門サプライヤへの委託でより高効率な生産を目指せます。
2. 設備・人員の稼働率と固定費把握
現場の稼働率を細かく分析することで、本来の内製強みが活きているのか、閑散期やムダが発生していないかを把握できます。
保有設備や人員のキャパシティを正しく見積もれば、内製or外注の最適分岐点が明確になります。
3. 品質・納期の要求水準
顧客からの品質基準や納期要求が厳しい品目は、トラブル時のリカバリー能力も必要です。
このような品目は現場密着の内製でこそ、ノウハウや対応力の発揮が期待できます。
4. サプライヤの実力・コスト優位性
長年の慣例で取引している外注先が、本当に今の時代にマッチしたコスト・品質水準かを再調査しましょう。
サプライヤの設備レベルや改善意識、納期対応力も評価ポイントです。
5. 生産リードタイムとフレキシビリティ
市場変化や顧客要求にどれだけ素早く柔軟に応えられるか。
生産リードタイムを短縮できる体制が利益率の維持・向上につながります。
6. サプライヤリスク管理
外注化比率を高めればサプライチェーンリスクも増大します。
サプライヤのBCP(事業継続計画)、二重発注体制の検討など、昨今の危機管理観点も見直しましょう。
最適な内製・外注比率の導き方
現場ヒアリングと原価シミュレーションの実施
現場ごとのムリ・ムダ・ムラを中心に、生産管理部門と調達購買部門が連携してヒアリングを行いましょう。
さらに、原価計算・シミュレーションツールを活用し、内製・外注それぞれのコスト、モノの流れ、リードタイム変動を数値化することが重要です。
デジタル化が遅れている工場でも、まずはエクセルベースの簡易原価分析からスタートできます。
複数パターンのシナリオ比較
「全品内製・全品外注」など極端なシナリオだけでなく、コア技術部分のみ内製化、中間工程の部分外注化、繁忙期のみ外注増強といった複数パターンを評価します。
サプライヤーの提案力や、部品・材料単価の見積もりだけでなくその先に潜む隠れたコスト(品質トラブル対応費、物流費、調達管理の手間など)も吟味しましょう。
経営目線・現場目線のギャップをなくす
経営層と現場担当者のコミュニケーション不足が、最適な生産体制構築を妨げる大きな壁になりがちです。
現場力が高い日本の製造業だからこそ、トップダウンとボトムアップの融合が成功のカギを握ります。
「変わるサプライヤ・変わらぬ業界」:製造業の現場事情
昭和~平成時代の慣例や古い固定観念からなかなか抜け出せない工場も多いのが実情です。
IT化・自動化の遅れ
IoTやクラウド化、調達管理システムなどが普及しつつあるものの、実際には手書き集計やFAX発注が根強く残っています。
しかし、部分的な自動化導入でも工程別の作業効率やコスト構造は大きく変わります。
まずは「できるところから」「一歩ずつ」のアナログ脱却が不可欠です。
属人化から「組織力」へのシフト
熟練者の現場対応やトラブル解決ノウハウ(いわゆる「現場の勘と経験」)が重要な差別化要素になっています。
逆に、そういった業務が属人化し過ぎることで属人的コストや技術伝承の停滞、新技術対応の遅れに直結するリスクもあります。
最適比率の見直しと同時に、業務手順やノウハウの見える化、ITを活用した組織的改善活動を始めましょう。
バイヤー・サプライヤーそれぞれの視点
バイヤー視点:価格交渉力を保ちながら信頼関係を築く
優秀なバイヤーは、サプライヤから単純に価格を下げさせるのではなく、内製・外注比率の最適化による全体最適を図る立場を目指します。
「安かろう悪かろう」の一方的構造ではなく、共同で改善案を出し合い、歩調を合わせる姿勢が信頼関係強化・コスト改善・品質安定の好循環につながります。
サプライヤー視点:付加価値と差別化による単価維持・向上
サプライヤー側は、コスト引き下げ圧力に怯むばかりでなく、受注プロセスの効率化、新技術導入、短納期対応や高精度対応など、プラスαの付加価値を提案することが重要です。
バイヤー側の戦略を深く理解し、自社のコア技術で「頼られる存在」へと進化すべきです。
事例紹介:ある部品工場での最適生産診断
30年以上続く部品工場A社の事例をご紹介します。
A社は、以前から「主要部品はすべて内製」が社風でしたが、近年は人員不足と設備老朽化が課題となっていました。
このままでは単価競争に太刀打ちできなくなることが予想され、思い切って外部サプライヤとの共同開発・一部工程外注化プロジェクトを発足。
・コアとなる高精度工程は熟練者中心で内製維持
・量産系のノンコア工程は近隣サプライヤに長期委託し、価格競争力と納期対応力を強化
・浮いた人員は改善活動や技術開発にシフト
結果、全体の原価が10%以上削減できたうえ、納期遵守率が劇的に改善しバイヤーからの信頼も獲得。
現場力を活かしつつ、外部の力も取り入れる「ハイブリッド型最適生産」が時代の要請となっています。
まとめ:単なるコストダウンから「真の価値向上」へ
サプライヤの内製・外注比率の見直しは、一時的なコストダウンのためだけに行うものではありません。
現場の技術・組織力を底上げし、全体最適で品質・納期・コストのすべてを磨き上げるための戦略的な道筋です。
昭和から長年脈々と続くアナログ文化と、現代の最新技術の融合こそ、新たな競争力源となります。
バイヤーもサプライヤーも、「お互いの立場」を理解し、ともに最適生産体制をつくるパートナーを目指しましょう。
日本の製造業の現場から、明日につながる新たな価値創造を実現していきましょう。
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