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無断変更により安全認証が失効するリスクと責任問題

無断変更により安全認証が失効するリスクと責任問題
はじめに:製造業における「無断変更」とは何か
製造業において「無断変更」とは、製品設計、部品、工程、材料などの仕様や条件を、正式な承認や連絡を経ずに工場作業者やサプライヤー側で変更することを指します。
昨今のグローバル競争やサプライチェーンの多層化により、コスト削減や納期短縮へのプレッシャーが増す一方で、品質と安全に直結する設計・工程の「無断変更リスク」も高まっています。
この無断変更が、取得済みの安全認証(CE、UL、PSE等)を失効させる主因となるケースが今もなお後を絶ちません。
ここでは、現場目線の視点も交え、改めて無断変更によって発生するリスクと責任問題、そして、その対策について掘り下げていきます。
安全認証の役割と失効の意味
製造業では製品ごとに法令や市場要求に基づく各種の安全認証が求められます。
代表的なものとしては、欧州のCEマーク、北米のUL、国内のPSEやJISマークなどがあります。
これらは「その製品が定められた安全基準を満たしている」と第三者によって証明されたことを意味します。
認証取得のためには、指定仕様・部材の遵守、標準作業手順の順守など、多岐にわたる条件が紐づいています。
では、無断で仕様や部材、工程が変更されてしまうとどうなるのでしょうか。
それは、**取得した安全認証の前提条件が崩れる**ことを意味します。
- 例えばCE認証を取得した製品を構成するネジ一本を、意図せず安価な他社製品に交換しただけでも、その部品での安全性が担保できなくなる場合があります。
- その結果、製品全体の強度や絶縁、耐熱などといった性能が損なわれたり、最悪の場合は発火事故や感電事故につながる恐れがあります。
つまり、「小さな変更」のつもりが、大きな事故や市場回収、法的責任につながるわけです。
なぜ無断変更が発生するのか?業界に根付く風土
多くの現場で「無断変更」が生まれる背景には、昭和型のアナログ体質やコスト優先の意識、サプライヤー任せのまま放置されてきた業界の慣習があります。
- 現場作業者や資材担当者の「このくらい大丈夫だろう」という判断
- サプライヤー側の「前のロットでも問題なかったから」という勝手な思い込み
- 「納期が迫っていて、指定部材が間に合わない」など現場のプレッシャー
- 調達バイヤーが現場に変更情報をうまく伝達できていない
こうした土壌は、製造業界に昭和の高度経済成長期で培われた「なんとかしろ精神」や「現場の臨機応変力信仰」などにも起因します。
ですが、グローバルな品質保証規格(例:IATF16949、ISO9001)や、製品安全法制(例:PL法)のもとでは、「変更のたびに認証の維持や安全性の再チェック」が必須です。
これを怠ると、信頼失墜や市場からの排除といった「取り返しのつかない事態」に直結します。
無断変更によるリスクとその具体的な事例
無断変更による安全認証失効で、企業が直面するリスクは多岐に渡ります。
- 重篤な事故発生による人命被害
- 損害賠償請求やリコールによる経営損失
- 官公庁による回収命令や業務停止命令
- 顧客や市場からの信頼喪失
具体例としては――
- 某家電メーカーが認証取得済み部材を無断で廉価品に切り替え。結果、本体が発火しリコールに。
- 自動車部品メーカーが材料調達時、要求成分を満たさない素材で生産。走行中にエンジン部品が損壊し、多発事故。
- 産業機器メーカーで現場判断により基板の一部配線を仕様外で補修。海外での法令違反となり輸出差止。
これらの背景には、多くの場合「誰かが無断で変更した」あるいは「変更情報が現場に伝わっていなかった」といった伝達不備、ルール軽視の姿勢があります。
責任の所在はどこにあるのか?バイヤー・工場・サプライヤーの視点で考える
無断変更による認証失効および事故・損害発生時、その責任の所在は多層的です。
- 製品仕様や調達条件を明確に伝えるのは、バイヤー(購買・調達部門)の役割
- 現場指示や作業管理を徹底するのは、工場管理者・工場長
- 調達先、サプライヤーにルールを遵守させるための監査は品質保証部門
- サプライヤーは、設計変更や部品代替が必要な場合、必ず顧客に事前報告・承認を求める義務
法的には多くの場合、「製造者(ブランドオーナー)」が最終責任を問われます。そのため、バイヤーやサプライヤー、現場担当者も含めた「社内外の全関係者が、一丸となって認証の維持・遵守を徹底する」必要があります。
近年はサプライチェーン全体に対して、PL法(製造物責任法)やサイバーセキュリティ法制といった、より厳格な責任分担が求められる傾向にあります。
「無断変更を防ぐ」現場実践のポイント
昭和的なアナログ風土が色濃い現場でも、今すぐ着手できる実践策をご紹介します。
- 「変更管理システム」の導入:工程・部品の変更申請や承認履歴をITで一括管理
- 開発・品質・購買・現場の垣根を超えた「横断的なルールブック」の整備と教育徹底
- 「変更点は全員が見える化」するための掲示板や定例会議の設置
- サプライヤーとの情報共有を密にし、代替部材の「承認プロセス」を徹底
- 現場レベルで「疑わしきは絶対に確認」という文化を根付かせる
- 現場作業者・ライン長を巻き込む「認証維持の重要性」教育の実践
また、デジタル化の波に乗り遅れてしまった場合でも、紙ベースであっても「小さな伝票一枚まで管理・保管」するだけでも効果はあります。
無断変更を生み出す「曖昧さ」を徹底排除し、「ルールの厳格な運用」と「現場で声を上げやすい雰囲気づくり」が両輪です。
バイヤー・サプライヤー、そして現場が意識すべきこれからの視点
Supply Chain全体で「無断変更」を防ぐためには、バイヤー(調達部門)がコストだけでなく安全認証維持を意識したサプライヤー選定基準を持つことが極めて重要です。
さらに、サプライヤー側も「なぜこれは守らねばならないのか?」という顧客事情・法規制背景まで理解し、疑問点を遠慮なく指摘できる健全な関係構築が望まれます。
現場や工場管理者は、単なるルール強化ではなく、「現場判断による小さな逸脱が、いずれ大事故に繋がる」ことへのリアリティを教育し、「うまく回してナンボ」ではなく「正しく守ってナンボ」に変革する必要があります。
まとめ:業界の発展・信頼のために今こそ変革を
無断変更による安全認証の失効、そしてその責任問題は、単なる企業単体のリスクではありません。
バイヤーとサプライヤー、現場と品質保証、全ての関係者が一丸となった「チェーン全体での品質・安全マネジメント」が求められる時代になっています。
古い慣習にとらわれず、ちょっとした「現場合意」もしっかりルールに照らして確認する、デジタルや組織横断の技術も取り入れる、といった地道な取り組みこそが、次世代の産業競争力につながります。
個人単位では些細な工夫から、一企業としては監査・教育・ICT環境整備まで、「守るべき本質」を見失わず、未来志向で切り拓いていきましょう。
全ては、「安全を最優先する企業姿勢」が国内外の信頼、業界全体の発展への原動力となるはずです。
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