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OEMトレーナーで大量不良を防ぐための“リスク設計”と前倒し検証

目次
OEMトレーナーで大量不良を防ぐための“リスク設計”と前倒し検証
はじめに──製造現場における“不良リスク”の本質
製造業では「不良品ゼロ」が理想ですが、現実には設計・調達・生産・物流などのさまざまな工程でリスクが潜んでいます。
特にOEM(Original Equipment Manufacturer)やODM(Original Design Manufacturer)といった他社ブランドの受託生産では、設計者・バイヤー・現場エンジニアの意思疎通が十分にできていないまま量産フェーズに突入してしまい、大量の不良品発生や納期遅延、想定外コストに苦しむケースが後を絶ちません。
昭和の時代からアナログな手法に依存してきた日本の製造現場では、「あとで改善できるだろう」「トレーナーが現場を見て覚えさせる」と安易に考えがちです。
しかし、グローバル競争が激化し、不具合の許容範囲がゼロに近づくなか、事前の“リスク設計”と“前倒し検証”こそが大量不良の最強対策となります。
この記事では、現場目線でOEM生産における不良リスクの本質を捉え、リスク設計と前倒し検証の実践的方法について深掘りします。
バイヤー、現場管理、サプライヤー立場のいずれにもヒントとなる知見をお届けいたします。
OEMトレーナーの役割と現場で起こる不良の構造
OEMトレーナーとは何者か ― 現場と設計をつなぐ要石
OEMトレーナーとは、OEM先メーカーの仕様や設計を理解し、現地の生産担当者や作業員に正しい技術・作業手順を伝達し、標準化するキーマンです。
この役割はいわば「現場と設計の翻訳者」であり、曖昧な要求仕様や暗黙知が現場に降りてくることによる大量不良を防ぐ最後の関門となります。
実際の現場では、
・図面や仕様書の不備や曖昧表現
・工程内フィードバックの不足
・サンプル段階と量産段階の設備・治具・素材ギャップ
といった“認識のズレ”が原因で不良や手戻りが発生します。
OEMトレーナーはこれらのギャップを事前に見抜き、現場に落とし込む役割を担います。
大量不良はなぜ起こるのか?主なパターンと現場の証言
筆者が経験した現場では、特に以下のような事例が多く発生しています。
・設計と量産治具の仕様が微妙に違い、微小寸法差が蓄積してパーツ不良率が高騰した
・仕様変更の連絡遅延で、現場では旧仕様で生産を続け大量スクラップとなった
・部品メーカーの量産スケールで品質が安定せず、全数検査で歩留まりが激減した
こうした“あるあるトラブル”の根底には、「前倒し検証の不足」と「リスク設計の視点の欠如」があります。
リスク設計の実践──トラブル予防のための逆算的思考
リスク設計とは何か?FMEA/FTAを現場で活かすコツ
リスク設計とは、設計段階で発生しうるさまざまなリスクを事前に洗い出し、対策を組み込むアプローチです。
欧米の自動車業界ではFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)、FTA(Fault Tree Analysis)などの手法が広く活用されていますが、日本の現場では「紙の手順書」や「非公式チェックリスト」で済ませがちです。
しかし、FMEAやFTAを単なるチェックリストで終わらせるのではなく、現場で「これは実際にどうなるか?」と本音で突き詰め、作業者や検査員の“肌感覚”を取り入れることが大量不良予防の本質です。
たとえば、
・この部品のこの公差、実際に現場で再現できるか?
・想定外のトラブルが起きたとき、復旧プロセスは現場目線で明確か?
・優先順位はコストか安全か納期か、現場責任者と整合しているか?
といった事前の詰めが肝心です。
“面倒臭い”こそ最大のリスク、その原因を見逃すな
顧客の要求が曖昧な場合や、設計変更が連続すると、どうしても「とりあえず作り始めてから問題が出たら直せばいい」と手を抜きがちです。
しかし、実はこの“面倒臭い”ことに目をつぶることで後工程で10倍、100倍のコストになるリスクが潜んでいます。
とりわけOEMでは、サプライヤー・バイヤー・生産現場の三者間での情報伝達の遅れや、発生した不良原因のなすり合い(責任の所在不明化)が量産立ち上げ時の“大量不良”を引き起こす火種となります。
前倒し検証──机上から現場主義へのシフト
量産前の“前倒し検証”が現場を救う
筆者の経験上、量産フェーズで大量不良が発生した場合、根本対策として必ず登場するのが“設計変更”や“治具追加”、場合によっては人海戦術の全数検査です。
しかし、これらは後手の対応であり、コスト・納期・信頼の損失は計り知れません。
そこで重要となるのが「前倒し検証(プレ量産検証)」です。
これは正式な量産ライン立ち上げ前に、設計通りの設備・素材・作業者でトライアル生産を行い、想定外のトラブルや手戻りポイントを徹底的に洗い出すプロセスです。
たとえば、
・手順書通りに現場作業者が作業した場合、本当に不良が出ないか?
・異種材料を使った場合に接合・塗装が狙い通りになるか?
・サプライヤー複数工場で一貫した品質が担保できるか?
など、設計段階だけでは見えにくい“あら探し”が極めて重要となります。
前倒し検証の現場的なポイントとノウハウ
現場で有効だった“前倒し検証”の方法として、
・2班制の“相互チェック”による複数視点検証
・現場経験者(ベテランラインマン)の「直感評価」を反映に組み込む
・バイヤー・現場・品質の三者会議で“想定トラブルブレスト”を実施する
・サンプル生産時に、いち早く設備担当・検査担当を巻き込む
などがあります。
また、ブラックボックス化しやすい装置や治具に関しては、「なぜこの寸法なのか」「なぜこの固定方法か」を図面・仕様書だけでなく、現場用語で“翻訳”しマニュアル化することで、教育や引き継ぎでの思わぬミスを予防できます。
昭和的アナログ現場にこそ通用する“リスク設計”
現場の思い込みと暗黙知を言語化する
どうしても現場では「昔からこうやっている」「このくらいは許容範囲」といった“昭和的な感覚”が根強く残っています。
しかし、設計変更や新しいOEMアイテムの立ち上げ、サプライヤーチェンジの際には思い込みや暗黙知こそ最大のリスクになります。
たとえば、昔は手作業検査で十分だった工程も、サプライヤーが増えたりグローバル化したりすると、同じレベルの品質保証が通用しなくなります。
“分かっているつもり”を排除し、一つひとつプロセスを可視化してマニュアル化することが大量不良防止のバイブルとなります。
強い現場は“ベタな確認”を惜しまない
昭和の現場でも、品質トラブルが少なかった工場には必ず「ベタな確認」を積み重ねる伝統があります。
具体的には、
・一発OKよりも、初回は予備検証を必ず実施
・サプライヤー現地立会検査で、現物を“触って確認”
・「念のため」と「まさか」に備えて二重三重のリスクロードマップを用意
など、地味な積み重ねが大量不良の芽を摘んでいます。
バイヤーとサプライヤーの“相互リスク設計”のすすめ
バイヤーはどこまで現場に立ち入るべきか?
OEMでは、調達先サプライヤーに「現場力」を過度に期待してしまいがちです。
しかし、バイヤー自身も
・サプライヤーの生産設備や現場プロセスを現地で把握
・サンプル品の現地検査や生産フローの“見える化”に参加
・設計変更や不良発生時の“エスカレーションルール”を共有
といった、現場重視の姿勢がトラブル回避に大きく寄与します。
サプライヤーはバイヤーの“想定外”をどれだけ先回りできるか
サプライヤー側は、バイヤーが何に価値を置いているか(品質か納期かコストか)を率直にヒアリングし、「現場視点」でリスク設計を逆算しましょう。
また、自社独自の工程FMEAやトラブル事例リストをバイヤーに積極提案することで、協働した“前倒し検証体制”を築くことができます。
筆者の実体験では、「想定外の天候変動による公差ずれ」「設備停止時のリカバリープラン」など、サプライヤー発信の想定外対策が評価され、信頼関係の強化につながりました。
まとめ──次世代ものづくりのための“攻めのリスク設計”
大量不良の発生は、企業ブランドの致命的なダメージにもつながります。
しかし、本質的な原因の多くは「予防可能なリスク」が未然に放置された結果です。
これからのものづくり現場では、
・リスク設計を“早期かつ多角的”に進める逆算思考
・前倒し検証で“現場の生の声”を最大限活用する現場主義
・バイヤーとサプライヤー双方が“不安”を言語化し協働する姿勢
が大量不良防止の鍵を握っています。
昭和的なアナログ文化と最新のリスク管理手法の“いいとこ取り”で、新しいものづくりの地平線を切り拓いていきましょう。
現場で働く皆さん、バイヤーを目指す皆さん、自社と顧客を守るための「攻めのリスク設計」に、今こそシフトしてみませんか。
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