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投稿日:2025年12月12日

試験方法の妥当性が曖昧なままデータが積み上がる危険性

はじめに:曖昧さが招く製造現場のリスク

製造業において、品質保証や新規部材の立ち上げ時など日常的に「試験」を実施します。

日々取得される膨大なデータは、製品の品質保証、生産性向上、不具合の早期発見など多様な目的に利用されています。
 
しかし実際の現場では、試験方法そのものの妥当性が検証されぬまま、データだけが“積み上がる”状況がしばしば見受けられます。

このままではトラブル時に適切な対応ができない、最悪の場合は回収や顧客からの信頼損失につながるなど、極めて深刻なリスクを抱えています。

今回は、筆者が20年以上に及ぶ工場経験で目の当たりにしてきた、昭和から続く「アナログな試験文化」の問題点、そしてデータ活用時代に求められる実践的な対策をお伝えします。

なぜ曖昧な試験方法が現場で横行するのか

1. 属人的な運用に頼った「慣習」

製造現場では古くからの手順書の記載内容に従い、前任者から引き継いだ通りに試験が行われていることが多くあります。

「ずっとこのやり方でやってきたから大丈夫」という発想で、根拠が不明瞭なまま“慣習”として続けられてきました。

担当者ごとの勘や経験がものをいう現場において、仕様の記述もあいまいで、たとえば「規定量」という表現だけが独り歩きし、その具体的な数値・範囲の妥当性が精査されないまま運用されます。

2. 試験方法の妥当性検討が後回しにされる理由

開発段階や初期流動段階など、量産スタートに間に合うことが最優先されるケースが多くあります。

このため、試験項目やその実施方法の詳細な見直しやバリデーション(妥当性確認)が意識的に“後回し”になりがちです。

また、サプライヤー側からの「業界標準のやり方」という説明をそのまま鵜呑みにしてしまい、状況に適した試験になっているか、という本質的な検討が置き去りにされやすいという問題も生じます。

データの「積み上げ」の先に潜む危険性

1. 問題発生時のトラブル対応の難しさ

たとえば市場クレームや不良発生時、調査を進めていくと、
「そもそもこの試験で本当に検証すべきことが網羅されていたのか?」
「この測定条件、実は現場の実態とズレていたのでは?」
という疑問に直面することが少なくありません。

妥当性が担保されていないデータは、いくら大量に蓄積されていたとしても、その証拠力・説明力が著しく低下します。

バイヤーや品質保証の担当者がたびたび苦しむ場面です。

2. 共通言語化されていないリスク

試験方法に不明点が多いと、たとえば「A工場とB工場、同じ品質基準」という表面的な合意だけで具体的な管理方法が違ってくることがあります。

同じ試験データシートでも、ピペットの種類や測定タイミング、温度・湿度の管理、測定者の熟練度など、実は“微妙に違う”要素が積もり積もって、蓄積データの信頼性を大きく損なうのです。

3. データ活用時代の“逆噴射”リスク

最近ではIoTやAI解析を駆使してデータドリブン経営を目指す企業も増えてきました。

ところが、そもそも前提となるデータ自体が“未検証”“未標準化”のまま大量に集められていると、データ分析で出る結論はむしろ有害なバイアスを生む危険性すらあります。

「大量のデータがあるから安心だ」と油断していると、実は“砂上の楼閣”であったという惨事に陥りかねません。

真に有効な試験方法とは何か?バイヤーの視点から

1. 「なぜその試験をやるのか」を言語化せよ

試験方法の見直しでまず必要なのは、「なぜこの試験項目が必要なのか」を自問し、その目的を明文化することです。

これは日本の製造業現場で深く根付く「手順遵守」のみではなく、「手順そのものの意義=なぜやるのか」という問いを重視する欧米企業の姿勢も参考になります。

バイヤーやサプライヤー、社内外の関係者が本質を共有できることで、「形式だけの試験」から「真に守るべき品質」を実現できます。

2. 試験方法の“妥当性検証”をプロセスに組み込む

新規サプライヤー評価、試作・立ち上げフェーズ、設備変更対応時などに、必ず「試験方法そのものの妥当性をレビューする」工程を設けてください。

これを怠ると、以後の全てのデータが疑義を持たれることになります。

JISやASTMなどの標準規格に盲目的に依存せず、自社品・自社条件に最適か、また試験精度、管理レベル(例えば日常点検なのか出荷判定なのか)ごとに妥当性を再確認する社内文化の醸成が重要です。

3. 見える化・標準化・再現性への投資

現場まかせでの“作業手順書”から脱却し、動画マニュアルやデジタル記録、教育訓練システムといった現代的な手法へ投資することも、持続的なデータの信頼性確保に寄与します。

また、多能工化や異動の際にも、技術継承がぶれないことへつながります。

サプライヤー側から見た試験方法の留意点

1. 顧客バイヤーの「視点」に立つ

サプライヤーとしては、「顧客は何を気にしているのか」「どこに品質に対するこだわりがあるのか」といった観点を持つことが重要です。

単なる要求事項の“満足”に終始せず、「この試験方法は顧客の使用条件・最終製品の用途に本当に合致しているのか?」と自問する姿勢が長期的な信頼獲得に繋がります。

2. QMSと現場のギャップを埋める

ISO9001など品質マネジメントシステム(QMS)認証企業は多数ありますが、「QMSで要求されている試験方法と、現場の実態との間に隙間」があるケースが多発しています。

サプライヤーとしても、書類上OKではなく、実作業・実測定の現場検証のプロセスを設けましょう。

3. “測ること”そのものの難しさを再認識

計測には必ず誤差がつきまとうため、「Repeatability(繰返し性)」や「Reproducibility(再現性)」の視点で自社試験方法を棚卸しし、担当者間の測定値バラツキも定期的に評価してください。

ルールは明文化、それを遵守できているか定期的な相互点検を行うことで、本人も気づかない“手癖”の排除につながります。

昭和からの脱却:今だからこそ求められる現場意識改革

1. アナログ業界でも通用する「問い直す力」

設備が比較的レガシーな業界、いわゆる“昭和の工場”であったとしても、試験方法の本質的な見直しは十分可能です。

むしろ、ベテランの「なにかおかしい」という違和感、現場でしか気づかないノウハウこそが、形式主義に流れがちな現代の品質保証を補完する「答え」になり得ます。

2. 若手・中堅への教育と風土づくり

“なぜやるのか?”“これで正しいのか?”と率直に議論できる心理的安全性がなければ、正しい情報は現場に根付きません。

現場での朝会や小集団活動をうまく活用し、若手が疑問を口にしやすい雰囲気を醸成しましょう。

まとめ:信頼される現場・バイヤー・サプライヤーであるために

昭和から連綿と続いてきた表面的な「やり方」だけでなく、「なぜこの試験方法で良いのか?」を絶えず問いなおすラテラルシンキングこそ、これからの製造業に必要です。

データが積み上がる“量”よりも、その“質”、すなわち妥当性検証を経て標準化された方法論が、真に価値ある品質管理・ものづくりの基盤となります。

全ての製造業従事者、調達・購買担当バイヤー、そしてサプライヤーの皆さん。今一度現場の“当たり前”を問い直し、豊かな未来の製造業を一緒に創っていきませんか。

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