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投稿日:2025年12月29日

板厚違い品を同一ラインで流す危険性

はじめに:製造業における「板厚違い品」問題とは

製造業の現場では、同じ材料でもわずかな仕様の違いが大きな問題に発展するケースが少なくありません。

特に「板厚違い品」を同一ラインで流すことは、一見効率アップや設備の有効活用というメリットがあるように感じられる反面、品質・生産性・信頼性の観点から大きなリスクをはらんでいます。

昭和から続く現場力や「もったいない精神」が根づき、アナログ運用が多い日本の現場。

しかし、時代は変化し厳しいサプライチェーン競争の中で、調達購買、生産管理、品質管理それぞれの立場で新しい発想と “当たり前”の再点検が不可欠です。

本記事では、板厚違い品を同一ラインで流すことの危険性について、プロの現場管理者としての経験を交え、サプライヤー・バイヤー双方の視点から解説します。

板厚違い品とは何か?~現場の実態~

板厚は「材料の規格」。侮れないその意味

板厚は金属やプラスチックなどシート状材料の厚みを意味します。

例えばアルミ板1.0mmと1.2mmでは見た目はほぼ同じでも、加工性や強度、最終製品の性能、後工程の組み付けやネジ締めトルク、溶接条件など多岐にわたって影響を及ぼします。

現場では「この程度の違いなら流通在庫も活用して、生産ラインでまとめて流そう」といった声も根強くあります。

特に少量多品種生産や、注文変動の激しいサプライヤー現場では、ロス低減を目指して「混流運転」が未だに多く見受けられます。

調達・バイヤー視点での扱いの難しさ

板厚違い品が混在すると、調達担当やバイヤーは工程標準や検査基準の再設定、納期・コストの再調整といった追加業務に追われます。

サプライヤー側でも「同じ品番だから」と板厚違い在庫をまとめて納品することがありますが、これが取引先品質監査やユーザーのクレームにつながることも多いのです。

特に自動車や精密機器業界など、要求品質の厳しい業界では許されないリスクです。

板厚違い品を同一ラインで流すリスク

1. 品質事故の誘発

板厚設定を無視して同一ライン流しを行うと、下記のような問題が発生しやすくなります。

・ 加工道具の摩耗や破損(パンチや刃、ロールなど)
・ 曲げやプレス加工時の割れ・しわ発生
・ 溶接品質のばらつき
・ 組立時のガタや圧入不良

納品後にユーザー先で不良が見つかると、再納品や補償コスト、信用失墜に直結します。

2. 仕掛品・不良在庫の増大

ラインで異なる板厚品が混在すると、途中で機械設定や材料投入を間違え、不適合品が大量発生します。

また現場で「これも使えるのでは?」と自己判断が横行し、残材や端材、規格外品が日常的に紛れこみやすくなります。

この積み重ねが、現状把握の難しい“隠れ巨額在庫”や後工程の品質トラブルを呼びます。

3. 自動化、DX推進の足かせに

今や生産ラインの自動化は、業界問わず不可欠な戦略ですが、仕様や標準が曖昧な混流運転は、ロボット導入やデータによるトレーサビリティ確保の障壁となります。

設備のセンサー設定やAI画像判定も「基準は何か?」があいまいだと正しく働きません。

人の“現場勘”頼みだけでは、これからの工場DXには対応できません。

なぜ板厚混流に陥るのか ~昭和的現場文化の影響~

「もったいない」精神と段取り替え負担のジレンマ

昔ながらの現場では「せっかく余った材料を使いきりたい」「切替調整が面倒」「設備保全やロス削減のため混ぜて流そう」といった理由で、少々の品違いを“現場力=柔軟対応”と評価しがちです。

しかし、これが仇となり、大きな品質事故やロス増加、標準化の遅れを招いてきました。

強い現場個人の腕まかせ体制

ベテラン作業者の暗黙知に頼る体制では、新人や派遣・請負・外国人労働者が増える現場に適応できません。

「○○さんしか分からない調整」「材料の見分けは経験が要る」といった職人芸は、組織力・再現性の面では大きなリスクです。

サプライヤー・バイヤー関係の旧来型力学

発注側は品質要求を高めても、現場の問題点や運用実態への理解が足りず、納期や非効率を押しつけてしまうことがあります。

サプライヤーも発注側の発言力を恐れて問題点を遠慮して伝えられず、曖昧な運用が続く。

この“言いなり構造”が、板厚混流問題の根源となっています。

正しい管理のためのアプローチ

1. 工程標準化の徹底

ラインごと、品番ごとの明確な仕様書・作業標準(SOP)の策定は必須です。

板厚違い品は絶対に混流しない、すべての段取り手順・製品識別を明文化し、新人でもできるようにします。

「一言で済む」という甘えを断ち切ることが現場再生の第一歩です。

2. 明確な識別とリアルタイム管理

バーコード、QRコード、RFIDの活用で、材料・工程ごとのトレーサビリティを構築します。

現場の棚や仕掛棚にもスペースを分け、混流や取り違えを物理的に防ぎます。

現場目線では「面倒」という声もありますが、一つ一つ仕組み化し、必ず目視+自動の2重管理を実現しましょう。

3. 調達・サプライヤーも含めた現場の意識改革

調達・購買担当者も現場実務を知り、サプライヤーとも“対話型”でコミュニケーションしましょう。

「少々の誤差ならいいだろう」ではなく、「板厚ごとに見積・契約内容・納期・検査基準をはっきり明文化する」ことが重要です。

サプライヤー側も自社の標準化レベルを高め、問題提起を恐れず発注元に伝えましょう。

4. 自動化・DXツールの活用と現場育成

AI画像判定や自動計測など、最新ツールも活用しながら人の目も併用する「ハイブリッド管理」への転換を推進します。

現場作業者もデジタルツールの使い方や標準作成能力を磨き、属人的なオペレーションから脱却することが、今後の生き残りにつながります。

まとめ:変化を嫌わず、サプライチェーン全体で「脱アナログ」へ

板厚違い品を同一ラインで流すことは、短期的な効率アップや材料ロス低減を狙ったつもりでも、長期的には大きな品質事故・コスト増を生み出す諸刃の剣です。

昭和的アナログ現場からの脱皮が急務となっている今こそ、バイヤー・サプライヤー双方が本音で語り合い、現場の現実を“見える化”し、標準化と自動化への投資を惜しまない姿勢が求められます。

私自身、現場目線の小さな改善から、全社改革まで取り組んできた経験から言えるのは、「問題の先送りは、必ず全体にしわ寄せがくる」ということです。

現場を知る皆さんが、現状の課題を素直に明文化し、少し先の未来のあるべき姿を思い描くことが、今後のものづくり現場の新しい景色を拓く第一歩となります。

是非、今日から自社・自現場の管理体制を見直し、危険な「板厚混流」の撲滅と、真の標準化・自動化への一手を踏み出しましょう。

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