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原産地証明書の不備が取引停止につながるリスクと対策

目次
はじめに:製造現場における原産地証明書の重要性
製造業のグローバル化は日に日に進み、原材料や部品の多くが国境を越えて流通しています。
その中で、バイヤーやサプライヤーが必ず直面するのが「原産地証明書」の取り扱いです。
「原産地証明書は面倒だが、気にしなくても大きな問題にはならない」と考えている方はいませんか?
実は、ちょっとした不備や見落としが致命的な取引停止へ直結することもあります。
今回は、昭和的なアナログ業務が根強く残る日本の製造業現場に即しつつ、原産地証明書の不備がもたらすリスクと現代的な対策について、現場目線で深掘りします。
原産地証明書とは何か?
そもそも原産地証明書の役割とは
原産地証明書(Certificate of Origin)は、輸出入される商品・原材料がどの国で生産されたのかを証明する公式な書類です。
主な役割は、関税の優遇措置を受けるためや、各国間での貿易協定履行の証となることです。
たとえば、EPAやFTA協定下では、証明書がなければ関税軽減の恩恵が受けられません。
なぜ今、原産地証明書の管理が問われているのか
近年、輸入規制や国際的な経済安全保障、SDGs、BCP(事業継続計画)の観点から、原産地管理の厳格化が続いています。
特に日本の製造業は高い品質を世界から求められるため、「どこで」「誰が」「どう作ったのか」を透明化することが重要になっています。
原産地証明書の不備が引き起こすリスク
1. 取引停止リスク
原産地証明書に不備があると、取引先からの信用が低下します。
ときには「次回から取引を見合わせたい」と告げられることも。
実際、「書類不備によって重要な顧客との長年の取引が突然終了した」という事例は少なくありません。
2. 関税優遇措置の無効
原産地証明書が正確でなかったり、記載方法に誤りがある場合、関税優遇措置を適用できません。
税関から遡及課税されたり、過去の取引分まで高額なコストが発生する恐れもあります。
3. 経済安全保障・法規制違反
近年は経済安全保障が叫ばれる時代。
強制労働や環境問題に厳格な規制が世界的に広がっています。
原産地証明書の不備は「コンプライアンス不履行」や輸出停止、行政処分につながりかねません。
4. 品質問題への波及
製品のトレーサビリティ(追跡可能性)が求められる中、原産地記録が曖昧だと不良品発生時の原因特定やリコール対応も困難化します。
特に自動車・電機など大量リコールリスクのある業種では命取りです。
日本の製造業にありがちな「昭和的課題」
紙ベース・手書き管理の落とし穴
中小工場や下請け先では、今も「伝票手書き」「紙書類ファイリング」が圧倒的多数です。
記載漏れ、印鑑ミス、バージョン管理漏れ、紛失――。
シンプルなようでいて、どんな大手工場も一度は肝を冷やすアナログ事故が起きています。
「現場委任」体質による責任の不明確化
原産地証明書は購買・調達、生産管理、営業など関わる部門が多岐にわたります。
現場担当者任せの属人的運用では、全体最適が図れず、ミスチェーンも見逃されがちです。
「昔からこうやってきた」に潜む時代遅れリスク
「うちは長年このやり方」という体質の現場は、今までは許されていた小さなミスや省略も、世界基準では通用しません。
新たな顧客やグローバル調達への門戸を閉ざしている実情にも注意が必要です。
現場目線の実践的な対策とは
1. 作業標準化とチェックリスト導入
書類作成、記入、保管、社内承認プロセスなど、一連の流れを細かく標準化しましょう。
現場でよくミスするパターン(例:手書き記載ミス、抜け漏れ、署名忘れ)を事前に洗い出し、入念なチェックリストを運用することが効果的です。
2. デジタル化で「見える化」・「一元化」推進
紙ベース管理からエクセルや専用システムへの移行で、入力ミス自動検知や履歴管理が格段に進化します。
「○年○月の○番ロット」の原産地証明書が必要、といった要求にも即座に電子で対応でき、紛失リスクや記録の曖昧さも根本解決します。
3. 多部門連携によるダブルチェック体制
購買担当だけに任せるのではなく、生産管理や品質保証部門も巻き込んだ「Wチェック体制」を作りましょう。
定期的なクロス監査や教育研修により、書類のヌケモレを減らせます。
4. サプライヤー教育・啓蒙活動の強化
取引先となるサプライヤーに対しても、原産地証明書の重要性や最新ルールを明確に伝えることが肝要です。
年次総会や現地監査での啓蒙・教育で「なぜ必要なのか」を理解してもらうことで、全体の底上げにつながります。
5. 海外規制・貿易協定のキャッチアップ体制構築
EPAやFTA新規締結、各国の法令変更の情報を常にキャッチアップし、規定変更を速やかに現場に落とし込む仕組みが不可欠です。
「営業部頼み」「総務部丸投げ」ではなく、現場と法務・貿易管理部門が頭を突き合わせて対応しましょう。
具体的な現場イメージと成功事例
ケース1:書類不備による海外輸出ストップ事件
ある部品メーカーは、タイ向け輸出で毎回FAXと郵送で原産地証明書を管理していました。
記入漏れの修正を現地バイヤーから求められるたびに対応が遅れ、「次回から仕様書類不備は納品拒否」と通告されました。
その後、電子化配信とダブルチェック導入で、記入ミスと遅延が激減し、逆に「書類対応が早い日本企業」との評価が向上しました。
ケース2:「なんとなく対応」からの脱却
金属プレス加工の現場では、複数部門で同じ証明書をコピー・転記しており、微妙な差分が混在していました。
国際監査で発覚した際は一時的に大口取引停止の危機を迎えましたが、プロセス標準化と教育徹底によって信頼が回復。
顧客から「供給能力と統制力の高さ」を改めて認められ、受注増につながりました。
アナログ業務の壁を突破するヒント-ラテラルシンキング的視点から
伝統的な日本の製造現場では「人が信頼できる」「昔ながらの方法が安心」と考えがちですが、本当にそうでしょうか。
近年のデジタルツールや業務自動化技術(RPA、クラウド運用、AIによる記入補助など)は「人のミスを減らし、強みを活かす」ための味方です。
また、書類管理だけでなく、「調達先選定」「生産ルート再設計」「リスク分散」など上流からの見直しや、万一取引停止になった場合の「バックアップ体制」も、今こそ本格的に考えるべき時代です。
まとめ:現場主導の改善アクションが製造業の未来を強くする
原産地証明書の不備は、単なる書類上のミスではなく、信用・利益・規制対応、さらには製造工程そのもののバリューチェーン全体に波及しかねません。
「昭和のアナログ管理」から脱却し、現場目線で具体策を積み上げることで、自社・サプライチェーン全体の競争力が飛躍的に高まります。
これからバイヤーを目指す方も、サプライヤーの皆さんも、原産地証明書を「コスト」や「雑務」と見るのではなく、「会社を守り、商機を拡大するための必須武器」と捉え直し、一歩踏み出してみてください。
製造業の現場から日本の強さを発信し続けるために、確かな管理と継続的な改善で新たな未来を切り開いていきましょう。
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