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耐摩耗部材と耐腐食部材の選定を誤るリスク

目次
はじめに ― 製造業現場での部材選定が与える影響
製造業の最前線では、日々さまざまな部材の選定が行われています。
特に重要なのが「耐摩耗部材」と「耐腐食部材」の選定です。
この2つのカテゴリは設備稼働の信頼性や製造ラインの安定性、さらには長期的なコストにも大きく影響します。
しかし現場では、こうした部材選定のミスにより重大なリスクを見逃しているケースが少なくありません。
本記事では、20年以上大手製造業で現場とマネジメントを経験した立場から、誤った部材選定が引き起こすリスク、そして現場目線での実践的な対策、さらには昭和型アナログ文化の中で根付いた課題にまで踏み込み、業界人の皆さまに深い気付きを提供します。
なぜ耐摩耗部材と耐腐食部材が必要なのか
生産プロセスで避けられない摩耗と腐食
部材が消耗する大きな要因は2つあります。
一つは物理的な摩耗、もう一つは化学的な腐食です。
たとえば、搬送ラインやシャフト、ギヤなど硬いもの同士が接触・摩擦を繰り返せば、表面が削れて徐々に薄くなっていきます。
一方、化学薬品を使う工程、湿気や酸性ガスの多い現場などでは金属や樹脂が化学反応などで劣化します。
これが腐食です。
耐久性をもたせるには、摩耗と腐食それぞれに強い素材や加工を選ぶ必要があります。
部材トラブルがもたらす“見えない損失”
仮に摩耗や腐食に弱い部材を誤って選定した場合、生産ラインの突発停止や不良品発生の原因となります。
目の前の調達コストだけを優先し、「今までの定番品だから」と根拠なく部材を選ぶと、次のような事態に発展しかねません。
– ライン停止による生産ロス
– 品質クレームの増加
– 保守・修理工数の増加
– サプライヤーとの関係悪化
– ひいてはメーカーの信頼失墜
これこそが“見えない損失”です。
だからこそ、部材選定は単なる「コストダウン」作業ではないことを、購買にも生産現場にも強く意識していただきたいのです。
間違いやすい部材選定の落とし穴
形式的なカタログ選定
多くの現場でよく見かけるのが「カタログ至上主義」です。
スペック表や価格表に頼りすぎ、実際の使用環境・負荷条件を十分に見極めていないケースが多くあります。
例えば、「ボルトはSUS304でOK」と書類に記載し、それが惰性で引き継がれていく。
しかし、実際その現場環境は塩分や酸にさらされやすく、SUS304では耐えられなかったという事例もしばしば発生します。
“昭和型”アナログ文化が生む属人化
熟練オペレーターや資材担当が個人的経験に頼り「ウチはこれでずっとやってる」という発言がまかり通るケースも見られます。
部材メーカーへの細かな情報提供を怠り、「何かあったら都度変えれば良い」という発想では、現場トラブルが永遠に減りません。
部材や工程の定期的な見直しをせず、ベテランの“カン”が効かなくなると、現場は大きなリスクにさらされてしまいます。
間違った部材選定が生む現場のリスク
① 安全性と信頼性の低下
摩耗や腐食に弱い部材が突如破断した場合、機械装置が暴走したり、生産従業員がケガを負う危険性があります。
部材トラブルは単なる設備ダウンに留まらず、現場の安全性そのものを脅かす場合もあるのです。
② 品質不良・不具合品の増加
例えば、耐摩耗性を軽視したホッパーや送り機構は、材料が詰まる・擦れ粉が混入することもあります。
これにより製品自体の品質低下や顧客クレームが発生します。
腐食した部材では部品同士のサイズ精度が損なわれ、微細な異物混入といった重大な品質事故を招くこともあります。
③ 保守コスト・設備稼働率の悪化
間違った材料選定が原因でメンテナンス頻度が高くなれば、予備在庫管理も複雑化し、現場の保守担当も疲弊します。
短期的には部品代が安くても、長期的にはコスト増になるケースが後を絶ちません。
現場目線での部材選定 ― 実践のポイント
1. 使っている場所・条件を具体的に洗い出す
「どこで」「何に使うか」を明確にするだけでなく、
– 周囲の温度・湿度・化学薬品の有無
– 摩耗の種類(滑り摩耗/衝撃摩耗/疲労摩耗)
– 部材が受ける荷重や運動
など、できる限り詳細に使用環境を言語化しましょう。
ベテランだけに任せず、若手も巻き込み現地現物で確認する習慣づけが重要です。
2. サプライヤーと“共創”する姿勢
部材メーカー(サプライヤー)は、想像以上に豊富な知見を持っています。
購買主導で「この型番でいける?」と聞くだけでなく、「今こんな環境で使っていて、トラブルもここまで出ている。何か提案できないか?」と現場課題の共有を行いましょう。
サプライヤーにとっても「顧客からリアル現場データがもらえる」のは実は貴重な機会です。
新材質の評価提案や、最適な表面処理の導入が思わぬコストダウンにもつながります。
3. 定期的な“棚卸し”とKPI管理
部材選定が「過去のしがらみ」や「経験則のブラックボックス化」になりがちなのも昭和型現場の特徴です。
現役世代が退職する前に、「耐摩耗部品」「耐腐食部品」ごとにKPI(平均耐用年数/不具合発生率など)を見える化しましょう。
ベテランの口伝だけに頼らず、見える形で部材の選定・評価・切り替え情報を残すのは工場の“資産”になります。
バイヤー・サプライヤーの立場から ― 課題と解決アプローチ
バイヤー(調達担当)が意識すべきポイント
– 価格交渉だけに偏らず、発注根拠を“現場の声やデータ”で裏付けする
– カタログスペックだけでなく、実稼働状況(耐摩耗・耐腐食の実績含む)をヒアリングする
– サプライヤーとの情報共有をルーチン化し、新素材/新技術も積極的に吸い上げる
– トラブル発生時には「当たり前」を疑い、代替案の提案を求める柔軟性
サプライヤー(部材メーカー)が期待されていること
– 最終エンドユーザーの使用状況を能動的にヒアリングする姿勢
– “うちの材料で落ちた現場”のフィードバックを受け止め、新しい提案をセットで出す
– 昭和型工場の属人的な情報管理の限界を共感し、現場課題を共に掘り下げる姿勢
– コスト以外にも、納期・技術サポート・トラブル時の迅速対応をセールスポイントに加える
ラテラルシンキングで考える―未来の部材選定のあり方
製造業現場の悩みは「今ある設備をいかに長く安全に使うか」に直結しています。
IoTやAIの普及により、現場データの可視化が進みつつありますが、逆に“現場の肌感覚”を完全に捨てることはできません。
これからは、ベテランの直感とデータ分析の“融合”こそが品質・コスト・生産性の最大化をもたらします。
“選定の自動化”と“現場ヒアリング”のバランスを目指し、失敗を積み重ねることで最適解が進歩し続けるのも製造業の醍醐味です。
バイヤーもサプライヤーも、単なる「安い・早い」から脱皮して、“現場起点の付加価値”をともに追求しましょう。
まとめ ― 正しい部材選定は経営にも効く“究極の現場改善”
耐摩耗部材と耐腐食部材の選定を誤るリスクは、単なる部材費用のロスに留まりません。
一度の判断ミスが全社的な信頼低下、品質事故につながりかねないことを本文でご紹介しました。
現場発信の細やかなニーズをくみ取り、データ化・標準化していくことが真の現場改革です。
時代遅れの昭和型からひと皮むけ、「現場」と「調達」と「サプライヤー」が一体になってものづくり価値を高める。
これこそが、日本製造業が未来に生き残るための鍵だと確信しています。
読者の皆さまが、現場起点での深い部材選定によって、より良いものづくりと経営改善につなげられることを心より願っています。