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委託先の内部不正で情報漏洩が発生した場合の損害賠償リスクと対策

目次
はじめに
製造業の現場において、委託先の活用は事業運営の効率化やスピードアップに欠かせない重要なファクターとなっています。
サプライチェーンがグローバル化し、外部パートナーに業務を委ねる場面は日増しに増えています。
しかし、委託先の選定や管理が不十分な場合、情報漏洩という重大なリスクが生じることを見逃してはいけません。
特に最近は、委託先内部の不正行為による機密漏洩が多発しています。
本記事では、委託先の内部不正による情報漏洩がもたらす損害賠償リスクと、現場目線で実効性の高い対策を詳しく解説します。
昭和から続くアナログな業界に根付いた構造から最新のテクノロジー事情まで、幅広く踏み込みながら実践的な解決策を提案します。
製造業の現場から見る委託先内部不正の現実
委託先の内部不正はなぜ発生するのか
委託先の従業員による内部不正は、どの製造業現場でも起こり得ます。
例えば、開発委託した部品メーカーの作業員が設計データを持ち出し、第三者に売却するケース。
品質検査業務を委託した小規模事業者が、大手メーカーの情報をSNSに投稿してしまうケースなど枚挙にいとまがありません。
特に、昭和的な人的ネットワークや「なあなあ」文化の残る業界では、「委託先も昔からの付き合いだから大丈夫」という安易な空気が蔓延しています。
この馴れ合い、甘えの構造がリスクの温床になります。
サプライチェーン多層化が招く管理の盲点
発注元から一次・二次・三次委託先までサプライチェーンが多層化・複雑化することで、「どこまで管理が行き届いているか」を把握しにくくなります。
特にデジタル管理が進んでいない企業の場合、情報の流通ルートやデータ管理の手法が属人的になりがちです。
その結果、自社がどこまで責任を負うのか、委託先管理は適切なのかの境界が曖昧になります。
情報漏洩による損害賠償リスク
発注元が負う法的責任
委託先による情報漏洩が発覚した場合、発注元(バイヤー)は委託先への指導義務や監督義務が問われます。
個人情報保護法、営業秘密の不正取得防止に関する法律(不正競争防止法)など、複数の法的ルールが発注元に対して厳格な管理責任を課しています。
もしも発注元が「監督体制不備」と認められれば、多額の損害賠償請求や信用失墜、最悪の場合は刑事罰にまで発展する恐れがあります。
損害が及ぶ範囲の深刻さ
漏洩する情報によっては、知財流出、顧客クレーム、株価暴落、取引停止など、被害の範囲は会社の存続に関わるほど甚大です。
近年の判例でも、委託元が「予見可能性のあるリスクへの未対応」を指摘され、委託先と連帯して高額な損害賠償に応じた事例も増加しています。
また、親会社やグループ会社の連鎖的被害も広がりやすくなっています。
バイヤーの視点で知っておきたい内部不正の起点と兆候
具体的な内部不正の手口
現場では、以下のようなパターンが多く観察されます。
– 設計・生産ノウハウの外部記憶媒体(USBメモリ等)への不正コピー
– 社内外へのメールやクラウドサービスへの無断データ送信
– SNSやチャットアプリでの秘匿情報の拡散
– 退職・異動時の個人デバイスへの情報持ち出し
こうした行為の背景には、業務負担の増大や待遇不満、悪意ある引き抜き、管理手法の未整備など、様々な動機や構造的な問題が潜んでいます。
不正の兆候をつかむためのキーポイント
次の兆候が現場で見られた場合、内部不正の発生リスクが高まっています。
– 作業場からの無断持ち出しや出力履歴が多い
– システムへの不自然なアクセスログ
– 無断残業や夜間・休日のPC利用
– 社員や派遣社員のメンタル低下や不満爆発
これらを発見するためには、単なるITセキュリティソフトの導入のみならず、現場管理者が「人の動き」「モノの流れ」に細心の注意を払うことが不可欠です。
サプライヤーの立場から見るバイヤーの本音
サプライヤー側としては、バイヤーである発注元がどのような不安を抱えているかを理解し、安心してもらうための取り組みが不可欠です。
単に「情報管理規程を守っています」と説明するだけでは信頼は得られません。
積極的に第三者認証(ISO27001など)の取得をアピールしたり、定期的な情報管理体制の見直し・報告(監査受入れ)など、透明性のある体質であることを示しましょう。
バイヤーは「委託=リスク移転」ではなく「共通の責任」と認識していることが大半です。
サプライヤーも自社の弱点・盲点を見直し、バイヤーと建設的にコミュニケーションをとることが、取引継続・拡大の必須条件です。
昭和的アナログ管理からの脱却が急務
紙・FAX管理が生む根本的リスク
現在も意外と多くの現場で紙帳票、FAX、手書き伝票が情報管理の中心となっています。
紙の資料は持ち出しや盗難、紛失リスクが高い一方、アクセス・ログ管理や改ざん防止が極めて困難です。
また、非正規労働者や協力会社作業員の出入りが激しい職場では、誰がどの情報にアクセスしたかがブラックボックス化していることも大きな問題です。
デジタル活用とラテラルシンキングによる対応策
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の流れは中小・地方の製造現場でも不可避です。
しかし、単なる電子化にとどまらず、以下のようなラテラルシンキング(水平思考)を活用した新発想も必要です。
– 情報アクセス権限管理の徹底(現場ごとのロール設計)
– データへのアクセスログの可視化と定期監査
– スマートフォン、USBデバイスなど外部記憶媒体の全面シャットダウン
– ゼロトラストモデルの導入(信じて任せるのではなく常時検証)
– クラウドによるリアルタイム共有と履歴管理
– 社員教育とインセンティブ(ポジティブな情報ガバナンス)
現場だからこそできる「人」「物」「金」の流れとデジタルを融合させた仕組み作りが、今こそ必要です。
現場でできる情報漏洩対策の実践ポイント
委託契約書の見直しと厳格な遵守
契約書で「秘密保持義務」「再委託時の情報管理責任」「情報漏洩発生時の対応フロー」「損害賠償責任の所在」を明確に定めることが大前提です。
グレーゾーンを残さず、具体的なペナルティや監査権限まで記載することで、不正の抑止力とします。
日常管理体制の具体策
– 委託先への定期的な現場監査(ぬき打ち含む)
– バックオフィス・現場双方のダブルチェック体制
– 情報流通マニュアル・持ち出しルールの徹底教育
– 問題発生時の連絡体制(ホットライン)の明確化
– 社内・委託先双方への内部通報(ホットライン)制度
これらを机上論で終わらせず、「実際にやってみせる」「その場で指導する」にこだわることが、昭和的文化が残る現場でも実効性を持たせるコツです。
最後に:現場主体で業界の新たな地平線を切り拓く
委託先の内部不正による情報漏洩は「起こる前提」で備え、現場発の細やかな工夫と管理意識の高さで防ぐことが最重要です。
デジタル化も大事ですが、人の動き・心理・組織文化の視点も軽視してはいけません。
その両輪を実現できて初めて、現場に根差した本当のリスクマネジメントが可能となります。
モノづくりの誇りを守り、サプライチェーン全体の健全化を目指して、現場主体で業界の新たな可能性を切り拓いていきましょう。
製造業現場の知恵と経験を力に、本記事がより安心・安全な取引体制構築の一助となれば幸いです。
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