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国際制裁対象企業との取引が判明した場合のリスクと緊急対応方法

目次
はじめに:国際制裁と製造業の現実
近年、国際情勢の変化を背景に、欧米諸国や日本をはじめとした各国が、特定の企業や団体を制裁対象とするケースが増えています。
とくに製造業では、調達や購買、生産拠点のグローバル化が進んだことで、意図せず国際制裁対象の企業と取引してしまうリスクが高まっています。
昭和から続く「人と人との信頼」が重視されるアナログな業界文化においては、相手先のリスクチェックが疎かになりがちです。
また、商社や複数サプライヤーを介すことで、実際の最終取引先が制裁対象企業であったことが後から判明するケースも珍しくありません。
この記事では、国際制裁対象企業と取引が判明した場合に製造業が直面するリスクと、現場目線での具体的な緊急対応方法を徹底解説します。
加えて、長年製造現場で培った経験を元に、再発防止につなげるための本質的な視点を共有します。
国際制裁対象企業との取引が製造業にもたらす主なリスク
法令違反による刑事・民事リスク
国際制裁の多くは、外為法や経済制裁法などの国家法として国内で効力を持ちます。
実際に制裁対象企業への輸出や取引が行われた場合、関係者個人にも刑事責任(罰金、懲役など)が問われることもあります。
民事訴訟に発展した場合は、実損だけでなく損害賠償・違約金などの金銭的リスクも極めて大きいです。
特に上場企業やグローバルサプライヤーの場合、株主や取引先からの責任追及が避けられません。
信用失墜・取引先からの排除リスク
制裁違反はグローバルサプライチェーンにおいて重大な不祥事とみなされます。
一度「制裁違反企業」のレッテルが貼られると、海外取引先や顧客、多国籍企業から指名停止や取引停止措置を受ける可能性が高いです。
また国内においても企業の社会的信用を致命的に損ない、新規取引獲得が困難になることは想像に難くありません。
再発リスクと法的監視強化
一度違反があれば、さらなる監査や調査の対象となり、日常の業務プロセスに多大な影響が及ぼされます。
定期的な法令遵守体制・内部監査の強化、従業員教育の追加対応が必要になり、現場の生産性が大きく低下する恐れもあります。
事例に学ぶ:昭和型慣習が招く意図しない違反
長らく「人間関係」を重視し、「昔からの付き合い」で仕入先や協力工場と取引を続けてきた製造業は多く存在します。
こうした業界では、取引先のオーナーや担当者を信じて、相手方企業の実態や所属グループ、最新の取引実績を深堀り調査しないまま契約を進めることが珍しくありません。
私は現役時代、商社経由での原料調達後、最終供給先が制裁対象国の国営企業だったと取引後に判明した事例を目の当たりにしています。
当時、現場の担当者は「仲介業者がきちんと確認しているはず」「信頼できる会社だから問題ない」という油断があり、チェック体制の穴につながったのです。
現代の国際調達現場では、「昭和流の信頼」は法令違反の盾にはなりません。
情報を鵜呑みにせず、主体的・システマティックに取引先を検証する時代です。
もし制裁対象企業との取引が “判明” したら:緊急対応の実務フロー
ここでは実際の製造現場、調達購買部門を想定し、制裁違反リスクが発覚したときの実践的な対応フローを解説します。
まずは事実確認と影響範囲の特定
・疑わしい取引の有無、取引条件、金額、品目など客観的証拠の速やかな収集
・関係書類(契約書、納品書、支払伝票、メール履歴)の保全
・社内の関係部門(調達、生産管理、法務、経営層)への即時連絡と初動対応会議の設定
・現時点で未出荷の製品または未実行の契約については“保留”判断
法務・コンプライアンス部門を中心とした調査
・外部弁護士や専門家へ調査依頼、およびヒアリングの実施
・制裁対象への該当事実(国名、企業名、資本関係など)および制裁名(例:米国OFAC、日本の外為法等)の特定
・現行契約の解消も含めた法的処理、違反に該当する場合の自主報告準備
当局への自主報告・業界団体への相談
違反が確定、または濃厚な場合は、迅速な自主申告や所管官庁への相談が肝要です。
自発的な報告は、後の行政処分や裁判での減免理由になるケースが多いため、隠蔽や先送りは絶対に避けてください。
国際制裁関係については、業界団体(日商・商工会議所、製造業協会など)も相談窓口を設けている場合があるため迷わず活用しましょう。
関係者・ステークホルダーへの説明と情報共有
・取引先や顧客への説明資料の作成と、説明責任の遂行
・社内教育(調達担当、生産部門)への徹底周知
・内部通報制度を活用した継続的な監視体制の再整備
取引先チェックの“意外な落とし穴”と見抜く観点
名義変更・グループ再編リスク
制裁対象企業の中には、制裁回避のために子会社名義や複雑な資本関係で事業継続を図る例が増えています。
登記簿やグループ構成、過去の社名変更履歴まで広く調査する視点が必要です。
取引の多重下請け・商社多層構造問題
アナログな現場の「多重下請け」「商社‐商社‐メーカー」の調達構造の場合、一次仕入先しか調査しないで済ませてしまう傾向があります。
実際には2次、3次委託先に制裁対象企業が隠れていることがあり、全調達プロセスの透明化が必須といえる時代です。
最新リストとの照合漏れ
制裁対象リストは日々更新されており、担当者が1年前の名簿しか使っていない場合、知らぬ間に新規指定されていた、というトラブルが生じます。
最新データにタイムリーにアクセスできるデジタルツールやサービスの導入も現代の製造業には不可欠です。
昭和からの脱却:制裁回避のため今企業がとるべき仕組みとは?
調達・購買プロセスのデジタル化
エクセル台帳や紙の伝票運用のままでは、膨大な情報管理と更新作業に限界が生じます。
取引先情報の一元管理、スクリーニング自動化、海外制裁リストとのAPI連携等、DX推進でヒューマンエラーを抑制する時代です。
内部監査・コンプライアンス教育の徹底
現場担当者や経営層に対し、国際制裁の基礎知識や注意点を定期的に教育しましょう。
属人的・口伝えでの“暗黙知”ではなく、仕組みとして根付かせることが大切です。
取引先との信頼の再構築
単に「信頼している」から「定期的にチェックする」企業文化へシフトする必要があります。
そのためには、パートナー企業にも協力を仰ぎ、情報開示とセカンドチェックの運用を取り入れるべきです。
バイヤー・サプライヤー双方が押さえておくべき視点
バイヤー(買い手側)は“法令遵守が調達力”であると認識し、社内で問題が起きた時に迅速かつ透明な対応が求められます。
また、サプライヤー(供給側)は「バイヤーがなぜ厳重な確認を行うのか」の意図を理解し、積極的な情報提供や協力姿勢を持つことが選ばれるサプライヤーの条件となります。
まとめ:国際制裁は「遠い話」ではない
国際制裁は単なる他国の出来事ではなく、日本の製造業現場にリアルなリスクをもたらします。
昭和流の“信頼重視”文化と、グローバルサプライチェーンの透明化要求は時に相反しがちですが、
今後は「信頼を数値化」「仕組み化」することがサステナブルな事業継続の生命線です。
不測の自体を未然に防ぐには、「自分事」としてリスクに向き合い続ける姿勢が不可欠です。
本記事が、製造業従事者、将来のバイヤーを志す方、サプライヤーの皆さんの現場改善・競争力強化への一助となれば幸いです。
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