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請負契約と準委任契約の区別を誤った場合のリスクとトラブル事例

目次
請負契約と準委任契約の基礎知識
請負契約とは何か
請負契約とは、注文者が発注し、請負者がその仕事の完成を約束する契約のことをいいます。
成果物が完成して初めて報酬が支払われる仕組みです。
製造業では、部品や装置の製作、工事などの特定の成果物が求められる場合によく利用されます。
準委任契約とは何か
準委任契約は、特定の「業務の遂行そのもの」に報酬が支払われる契約です。
成果物の完成は必ずしも求められません。
たとえばコンサルティング業務やエンジニアの派遣業務が該当します。
区別をつける重要性
どちらも外部リソースへ業務を発注する方法ですが、契約の性質が異なるため責任範囲やリスクの所在が大きく変わります。
この区別を曖昧なままプロジェクトを進めると、想定外のトラブルに直面することが非常に多いです。
契約形態の誤認による主なリスク
成果物の完成責任が不明確になる
請負契約では成果物の完成まで請負者が責任を持ちます。
一方、準委任契約では「業務をきちんと遂行したかどうか」だけが問われます。
例えば、AIシステム開発プロジェクトを「請負」と「準委任」のどちらで契約するかで、システムが未完成だった際の責任の所在が全く変わってきます。
コストコントロール・工数管理の違い
請負の場合、一定金額で成果物を納品すれば費用が確定します。
準委任の場合は、かかった工数分だけ都度費用が増えていきます。
どちらの契約形態かを誤認することで、予算超過や利益圧迫のリスクが高まります。
契約解除・途中終了のトラブル
準委任契約は比較的柔軟に中途解約ができますが、請負の場合は原則、成果物完成まで契約が続きます。
工場の自動化システムなどの長期案件で、契約内容を十分に把握せずに途中解除を申し入れると、損害賠償を請求されることもあります。
瑕疵担保責任・損害賠償リスク
請負契約では成果物に瑕疵(欠陥)があった場合に一定期間、請負者が責任を負う義務があります。
一方で、準委任契約では成果物そのものの瑕疵は原則問題になりません。
どういう契約形態かによって、トラブル解決時の責任分担が大きく変わります。
実際によくあるトラブル事例
事例1:製造装置の設計業務
あるメーカーが、製造装置の「設計」を外部業者へ発注しました。
契約書上は準委任契約でしたが、実運用上は「設計図の完成」という成果物が必要不可欠でした。
途中で要件変更があった際、設計図の納品遅れと追加費用が発生。
メーカーは「契約違反」と主張し、業者は「準委任なので工数ベースの追加請求は当然」と反論。
結果、設計作業が大幅に遅延し、現場の量産開始も延期されてしまいました。
事例2:工場ライン自動化プロジェクト
システムインテグレータがライン自動化プロジェクトを受託しました。
発注側は請負契約のつもりでプロジェクト一式と考えていましたが、契約書は準委任契約でした。
「目標KPIを達成できなかった」として損害賠償請求を検討したものの、「請負でないから成果責任は問えない」と弁護士に指摘されました。
これにより予想していたリスクヘッジができず、想定外の損失を出しました。
事例3:生産管理システム導入の委託先対応
ITベンダーに生産管理システム導入を委託しましたが、成果物の「納期」「性能基準」を明確にしていなかったため、いつまで経ってもシステムが完成しませんでした。
中途で契約解除を申し入れましたが、ベンダーは「準委任なので解約には応じる」「これまでの工数分はしっかり請求する」と主張。
最終的に数百万円単位の費用を負担する結果になりました。
昭和からの“現場感覚”が招く落とし穴
「言わなくてもわかるだろう」がリスクに直結
長年の取引や“現場感覚”に頼ったコミュニケーションは日本の製造業の美徳でもありました。
しかし複雑化・多様化した現代の取引では、こうした非公式な進め方が大きなリスクになります。
契約の本質を曖昧にしたり、「昔からこうだった」という慣例に頼ったりすると、高額なトラブルの火種になります。
業界特有の商習慣と法解釈のギャップ
「都度相談して柔軟に動いてもらう」「一部を先に納品してもらう」など、業界特有の事情が期待されている場合でも、契約形態が不適切だと、その期待が裏切られてしまいます。
法解釈と商習慣の間にギャップが存在することを常に認識すべきです。
バイヤー・サプライヤーの立場から考える契約のポイント
バイヤー(発注者)が留意すべき点
まず、自社が本当に何を求めているのかを明確にすることが重要です。
「成果物なのか、業務の遂行なのか」をはっきりさせ、契約書に落とし込みましょう。
また、要求事項・変更範囲・検収方法・納期・費用精算ルールなどは必ず具体的に記載します。
IT・装置導入のように複数部門にまたがる案件は、法務部門ともよく相談しましょう。
サプライヤー(受注者)が意識すべき点
契約書の内容と実際の進め方が合致しているか、必ず確認しましょう。
もし契約形態と実作業の期待値が食い違う場合は、小さな違いでも発注者側に説明し、お互いの合意形成をしてからスタートすることが大切です。
責任の範囲やリスクの所在をきちんと書類で明確化しておきましょう。
交渉時のポイント
契約書作成時には、プロジェクトの目的・範囲・成果物の有無・納期・費用精算の基準などを整理し、両者で合意してください。
特に工場の現場では、「口頭での約束」「現場での柔軟運用」が日常的にありますが、トラブルになった際には法的根拠が問われます。
請負・準委任の区別があいまいなまま契約するとどうなるか
責任が曖昧になり、お互いの信頼関係すら揺らいでしまいます。
万が一トラブルが発生した際には、「自社が必要なものが納品されない」「法的根拠をもとに適切な補償を請求できない」「納得のいかない損害賠償を支払うことになる」など、不利益しかありません。
特にサプライチェーンが複雑化する今日、契約のトラブルは企業ブランドやリスクマネジメントの問題にも直結します。
まとめ:これからの製造業に必要な契約リテラシー
これまでのような“現場力一辺倒”では、複雑化したサプライチェーンや多様な働き方に対応できません。
契約の基本的な考え方をしっかり理解し、現場の実態と法的基準のバランスを取ることが、令和の製造業に求められます。
「誰が、何を、どこまで、いつまで、いくらで、どのように達成するのか」
この基本を契約書にしっかりと落とし込み、現場での運用にも活かしてこそ、真に強い現場が生まれます。
契約形態をきちんと理解し、お互いの信頼関係をより確かなものにしていきましょう。
製造業の発展は、一つひとつのトラブル回避と適切な契約実務なくして語れません。
これからの時代を切り拓くためにも、「請負」と「準委任」の本質を、今一度学び直すことをおすすめします。
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