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人が足りない原因を可視化せずに改善を始めるリスク

目次
はじめに:製造業における「人が足りない問題」とは
日本の製造業において「人が足りない」という声は、常に現場で聞かれる切実な課題です。
この現象は単なる労働力不足以上に、企業の成長や品質維持、ひいては競争力そのものに直結する重要な問題です。
少子高齢化による新規採用の困難化、熟練作業員の定年退職、業務の多様化・煩雑化など、要因は多岐にわたります。
しかし、現場では「人手が足りない」という認識を持ちながらも、その背景を可視化せず、感覚的な人員増強や要員配置に頼ることが少なくありません。
本稿では、なぜ「人が足りない」状態の原因を可視化せずに改善策を始めることがリスクになるのか、そしてそのリスクを回避し製造現場に真の解決をもたらすためのアプローチを、現場目線で具体的に解説します。
「人が足りない」の本当の正体――現場で見落とされがちな原因
人手不足の定義が曖昧なまま進む議論
「人が足りない」という現場の声は、往々にして曖昧です。
毎日残業が発生する、納期が遅れる、設備稼働率が下がる…といった現象が「人手不足」と混同されやすい傾向があります。
しかし、その実態を分析してみると
・作業が属人化していた
・一部工程に負荷が集中していた
・段取り・待ち時間にロスが多かった
など、必ずしも単純な“人数の問題”だけではないケースが多発しています。
昭和的アナログ運用の弊害
今なお根強く残る「ムリ・ムダ・ムラ」の多いアナログ運用では、現行の人員体制の業務遂行能力が見えづらくなります。
手作業中心の情報伝達、フォーマルでない現場指示、旧来手順の踏襲は「本当に人が足りないのか? それとも工程の最適化余地が大きいのか?」という根本分析を妨げます。
結果として「とにかく人を増やせば解決する」という短絡的な発想に陥り、真因の解明や根本対策が立ち遅れてしまいます。
可視化しないまま改善を始めるリスクとは
1. 誤った投資=コスト増につながる
人員不足の原因を正確に可視化しないまま「とりあえず人を採用しよう」と進めると、期待した効果が得られず、コスト過多の悪循環が生まれます。
業務プロセスや工程ごとの負荷を客観的に見ずに、人モノ金を投入しても、成果にはつながりません。
特に、製造業の人材採用は数年単位・数百万円レベルの投資となり、本当に必要な工程や役割に人材を配置しなければ、利益率の低迷や赤字転落のリスクさえあります。
2. 属人化・業務のブラックボックス化が加速
「とりあえず人を増やす」ことで、現場では“熟練作業員の経験頼り”や“上司の勘と経験だけの割り振り”が続きがちです。
その結果、課題の可視化や標準化への意識が希薄になり、“できる人”に業務が集中、属人化のスパイラルに陥る現象が目立ちます。
新たに採用した人材の戦力化も遅れ、現場の疲弊感はさらに増していきます。
3. 現場の当事者意識の低下
業務のボトルネックやプロセス改善を可視化するカルチャーを作らないまま「現場に任せる」だけでは、スタッフの当事者意識も希薄になります。
「どうせ人が増やされるだけ」といった諦めムードや、“声の大きい人”の主張だけが通る状態となり、本質的な改善は進みません。
4. サプライヤー・バイヤーとの信頼関係への悪影響
工程の可視化が不十分だと、納期や品質にブレが生じやすく、対外的な信頼性にもダメージを与えかねません。
バイヤーの立場からしても、サプライヤーが“現場感覚だけで人手不足をアピール”していると受け取られれば、パートナーシップにも悪影響を及ぼします。
現場目線での「人が足りない状態の可視化」ノウハウ
1. データを用いた作業分析の徹底
現場の実態を正しく捉えるには、まずデータに基づく作業分析が必要不可欠です。
・作業工程ごとに「時間」「負荷」「停滞ポイント」を測定
・人ごとの作業量・作業スキル・工程間のつながりを数値化
・シフト、残業、休憩、突発対応なども含めた“実データ”の抽出
これらにより、どこに本当の“ボトルネック”があるのかを明確にできます。
近年はIoTセンサーや作業実績の自動収集ツールも身近になってきており、Excelだけでなく安価なシステムも導入しやすい時代です。
2. 「業務棚卸し」+「標準化」で人の価値・必要量を再定義
従来の担当者ベースではなく「業務単位での棚卸し」「標準作業の策定」を推進することで、人の役割と必要数が明確になります。
属人化の解消にも直結し、どの工程が本当に「多くの要員」を要するのか、逆に自動化の余地があるのか…といった選択肢を具体化できます。
3. 「ヒト」に頼りすぎない工程設計の再構築
見える化した業務フローを基に、現場が“回るためのプロセス設計”を見直していくことが重要です。
自動化技術の活用や、工程統合・業務の見直し(多能工化を含む)で、単純な人員増強よりも大きな効率化・省人化効果を得ることができます。
また、熟練者のノウハウをマニュアル化・動画化などで集約し、教育期間の短縮・再現性の向上も並行して行うことが価値を最大化します。
バイヤー・サプライヤー・現場…三者が納得する“真の改善アプローチ”とは
バイヤー:数値で語れる現場は信頼される
バイヤー側から見れば、サプライヤーが「人が足りないから納期遅延」という抽象的な説明をしているだけでは、本質的な信頼にはつながりません。
逆に、業務工程・人的リソースの見える化、課題の根拠と今後の改善策が論理的に示されていると、「一緒に改善していくパートナー」として認識されやすくなります。
サプライヤー:現場主導の業務可視化が新たな価値創出に
現場が主導で業務を可視化し、データに基づく改善アクションを提案できる企業は、価格競争力だけでなく“現場力”をアピールできます。
他社との差別化のためにも、現場の実態をリアルタイムで把握し、付加価値の高い提案につなげる姿勢が求められます。
現場:一人ひとりが「見える化」の担い手として自立
現場従業員が“日々のムリ・ムダ・ムラ”を見える化し、自分自身で改善案を考えられる組織は、変化に強く、定着率も向上します。
「働きやすさ」や「やりがい」につながり、単なる人海戦術ではなく、価値ある働き方改革が進みます。
まとめ:可視化なき改善は「現場の未来」を奪う
人が足りないという思い込みだけで、付け焼き刃の改善策(人員増強や外注・派遣活用)に走ることは、長期的な組織力の低下につながります。
業界がアナログであっても、必ず“可視化→改善”を基本のサイクルに据えなければなりません。
現場の生産性を飛躍的に高め、バイヤーとの共創や業界競争力を維持・強化するためにも、まずは「本当に人が足りないのか?」の見える化に全力を注ぐべきです。
ラテラルシンキングの発想を持ち、今までの常識や現場の惰性に疑問を持つこと。
“人が足りない”時代を生き抜く最強の現場を、一緒に目指しましょう。