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防爆モーター部材の選定を誤った場合のリスク

目次
はじめに
防爆モーターは、化学工場や石油精製、製薬工場など、爆発性ガスや可燃性粉じんが存在する危険な環境で安全に運用するための重要な設備です。
これらの現場では、防爆モーターの部材選定を誤るだけで大きなリスクが発生し、事故や品質問題、さらには命に関わる重大な事故へとつながりかねません。
長年にわたり現場で調達・生産管理・品質管理・工場長経験を積んできた筆者の立場から、どんな注意点があり、どんなインパクトがあるのか、現場目線で実践的に解説いたします。
防爆モーターと部材選定の基本
防爆モーターとは、爆発性ガスや粉じんが存在する場所で発火源にならないよう厳しい安全設計が施されたモーターです。
JISやIECなどの国際規格でも耐爆基準は定められており、部材選定も「型式認定」や「製品認証」に依存するため一点の妥協も許されません。
特に重要なのは、次のポイントです。
- 爆発等級(ゾーン区分)に適合した設計・部材か
- 耐腐食性や耐熱性など現場環境に合わせているか
- ガス種別による安全マージンを見込んでいるか
- 外部要因(振動、水分、薬液)なども考慮したか
サプライヤー・購買担当・造る側それぞれの立場で「なぜその部材が必要か」「なぜ他の部材は不可なのか」をしっかり把握しておく必要があります。
選定ミスがもたらす5大リスク
部材選定に誤りがあると、想像以上に多くのリスクが現場に降りかかってきます。
代表的な5つのリスクを、現場ならではの視点で解説します。
1. 爆発事故による人命・設備被害
もっとも恐ろしいのは、やはり爆発事故による甚大な被害です。
例えば、防爆パッキン材の耐熱温度が足りず、スパークが保護されず引火、火災へと至る事案は実際に過去の国内外事故にもあります。
現場は油断しがちですが、「昔からこれで大丈夫だった」「コストダウンで安い部材にする」など、場当たり的な判断が大事故のきっかけになってしまうのです。
工場の操業停止、人命の損失、企業の信用失墜、賠償責任などリスクは極めて大きいことを理解してください。
2. 法令違反に起因する行政処分
防爆規格違反は、消防法や労働安全衛生法など各種法令・監督官庁の認証を大きく損なうことになります。
定期監査や突発事故時には、提出した部材リストや技術仕様書をもとに厳しい調査も実施されます。
部材トレースができていない、証明書の偽造・未取得、記録の誤記などが発覚した場合、罰則金・行政指導・営業停止など甚大なペナルティが科せられます。
3. モーター寿命や生産設備信頼性の崩壊
短絡や劣化によるモーター停止、異常発熱などを引き起こす原因の多くは「想定外条件への耐性不足」にあります。
部材選定を間違えると、設計寿命を待たずして故障や劣化が多発。
それだけで生産設備全体の計画外停止や大量不良、納期遅延・機会損失につながります。
自動化・省人化が進む現代工場において、モーター停止は全工程の停止リスクに直結しますから、現場としては死活問題です。
4. 品質問題・リコール発生のリスク拡大
部材のグレードダウンや仕様書との不整合に起因した品質トラブル、さらには顧客からのクレーム・リコールが発生すれば、たちまち「信頼ゼロ」となりかねません。
大手自動車メーカーを中心に、「わずか数円の安い部材を使ったせいで全製品リコール」という事例が世間を賑わせてきました。
防爆モーターでも状況は同じであり、「たった一つの部材ミス」が全体の品質リスクを連鎖的に引き起こすのです。
5. サプライチェーン全体のトラブル波及
防爆部材は、調達・製造・設置・保守全体でトレーサビリティが必要不可欠です。
万が一、部材の入手経路がブラックボックス化していたり、リードタイム短縮目的で一部違うものを混ぜて使えば、検知できぬまま大規模トラブルへ拡大します。
現代のバイヤーや調達部門は「サプライヤー管理=調達リスクの最小化」を最優先しています。
一度不適切選定が発覚すると、その後の取引や評価に加え、関連する社外取引先にも波及し、負の影響は予想以上に大きくなります。
アナログ体質がつくる「あるある選定ミス」とその実例
いまだに昭和気質が抜けない製造現場では、独自の「現場ルール」や「経験頼み」の判断が根強く残っています。
この体質が、部材選定ミスの温床になりうるのです。
パターン1:現場で即応・代用品を安易に使う
「あのパッキンが無いから今日は手元にあるこっちで仮対応」
「仕様通りじゃなくても短納期を優先しよう」
このような”現場合わせ”は、特に繁忙期ではよく見られる光景です。
一時的な納期優先が、のちに重大な火種となることは言うまでもありません。
パターン2:技術シートや図面が古いまま継承
図面や部材仕様書が、数十年前に標準化したまま棚上げ状態。
「これで問題なかったから大丈夫」と根拠なき継承が、現代の法改正や安全基準に沿わないまま現場に残ってしまいます。
定期的な更新・第三者チェックがされていない工場は要注意です。
パターン3:安値購買優先でリスクを見落とす
コスト低減要求が強まる時代、「一円でも安いものを入れてほしい」というバイヤーのプレッシャー。
その過程で、十分な評価・検証をせず安易に部材切り替えしてしまうと、後々大きなツケが回ってきます。
とくに海外調達や小ロット品は注意が必要です。
部材選定ミスを防ぐための現場実践アクション
ここからは、現場や調達バイヤーが具体的に取り組むべき”実践的なアクション”を紹介します。
1. 部材仕様・選定根拠の見える化とドキュメント化
何をどんな根拠で選んでいるか、仕様書や認証書で“見える化”します。
選定理由が一目で分かるよう管理台帳やセルフチェックシートを整備しましょう。
これは新任担当者や技術伝承にも極めて有効です。
2. サプライヤーチェックと継続的な品質監査
単に発注するだけでなく、サプライヤーの現場監査や抜取テスト、工程管理まで踏み込んで確認します。
サプライヤーを「価格」だけでなく「安全対応力」「品質証明力」で比較し、信頼できるつながりを築くべきです。
3. 「現場ベテラン×若手」のクロスチェック体制の構築
どうしても「昔ながら」や「思い込み」が残る現場文化を是正するために、熟練者と若手担当者のダブルチェック体制を取りましょう。
第三者視点や異なる観点で仕様の見直しを定期的に行えば、ヒューマンエラーのリスクを効果的に低減できます。
4. PDCAサイクルに則った部材評価と改善
部材選定も一度決めたら終わりではありません。トラブルや不具合事例を集め、振り返り・改善提案・教育へとつなげていくことが肝要です。
特に「ヒヤリハット」や現場からの改善案は宝の山。
せっかくの失敗事例を全員で共有し、二度と同じ轍を踏まない文化を醸成しましょう。
バイヤー・調達担当・サプライヤーへのメッセージ
防爆モーターの部材選定は、調達担当・設計技術者・製造現場・サプライヤー、すべての連携と共通認識があってはじめて安全・安心を確保できます。
「目先のコスト」や「納期対応」だけに目を奪われるのではなく、「事故ゼロで長く使えること」「お客様の信頼を守ること」という本質を忘れないようにしてください。
部材選定は、単なる購買の「物選び」ではなく、御社の安全文化・品質力・社会的信用の根幹を決める重大業務です。
その責任と誇りを携えて、業界の進化・価値創出に貢献していきましょう。
まとめ
防爆モーター部材の選定ミスは、現場の安全・品質・コスト・信頼…あらゆる側面で大きなリスクとなり得ます。
古い慣習やコスト優先から脱却し、全体最適・安全最優先の意識を持った調達・管理体制を構築していくことがますます重要です。
自らの現場目線・バイヤーの視点・サプライヤーの考え、あらゆる立場で「なぜ」を突き詰め、よりよい製造現場を一緒につくっていきましょう。
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