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投稿日:2026年2月12日

人手不足ソリューションの選定を現場任せにするリスク

はじめに:人手不足は製造業全体の課題

多くの製造業が直面している最大の課題の一つが「人手不足」です。

高度成長期を支えた熟練工も高齢化し、若手の確保が思うように進みません。

しかも、昭和時代からのアナログな業務フローが根強く残る現場では、デジタル活用が思うように浸透しないケースも多々あります。

こうした状況下で、「現場力」に頼りがちな日本の製造業は、人手不足の解消策=ソリューションの選定を現場任せにするケースが散見されます。

しかし、この“現場任せ”には大きな落とし穴が潜んでいます。

本記事では、私自身の工場長や調達・品質管理の経験をもとに、「人手不足ソリューションの選定を現場任せにするリスク」と、その回避方法、導入成功のポイントを具体的に解説します。

現場任せが招く3つの重大リスク

1. 部分最適の罠〜全体最適との乖離

現場任せの最も大きなリスクは、どうしても自分の所属部門や作業工程だけの“部分最適”に陥りやすいことです。

たとえば、製造ラインの一工程で自動化設備を独自に導入した場合、その前後の工程が従来通りアナログのままだと、かえって工程間のバランスが崩れます。

結果として全体のスループットが悪化することも珍しくありません。

この“全体最適との乖離”は日本の製造現場で意外なほど頻繁に起きています。

2. 現場発想による変化への抵抗感・形式的改善

人手不足対策の現場主導は一見理想的にも思えますが、実際には現状維持バイアスが強く働きがちです。

長年の習慣や手順を重視し、「今のやり方の延長」で済ませようとする傾向が強いからです。

そのため、本質的なプロセス改革や、大胆な省人化・自動化施策まで踏み込めず、部分的な改善や形だけのデジタル化に終始してしまうケースがあります。

3. コスト・ROIの誤認識

現場任せの導入検討だと、どうしても「今、手が空いていないからこの部分に人を減らそう」といった、その場しのぎの発想に傾きがちです。

ちゃんとした効果検証(ROI=投資対効果)や、導入後の保守運用コストまで踏まえた「中長期視点」での判断が不足するリスクがあります。

その結果、「安かろう悪かろう」の導入や、“誰も使いこなせない設備”を高価格で購入してしまう事態が起こることもあります。

なぜ現場任せにするのか?業界に根付く背景

このようなリスクがありながらも、多くの工場が人手不足ソリューションを現場任せにしがちなのは、日本製造業特有の文化や歴史が影響しています。

属人化文化と職人の誇り

昭和の高度成長期からの流れで、日本の製造現場には「職人技」や「現場力」が強調されてきました。

“改善”という言葉が好きな業界でもあります。

そのため、外部からの画一的な改革やトップダウンの大規模投資よりも、現場の“小さな改善”や「カイゼン活動」が受け入れられやすい土壌があります。

工場長や現場主任への過剰依存

工場内の人手不足ソリューションも、「現場を一番知っている」現場リーダーや工場長の経験則やネットワークに頼りがちです。

また、本社のITや経営企画部門との“距離感”も大きく、情報の非対称性も根強く残っています。

ITアレルギーとデジタル化の壁

デジタル化やAI・IoT導入に対する抵抗感も依然として強く、パッケージのERPなど標準化ソリューションに馴染む企業はまだ一部です。

その結果、人手不足解消ツールの本格導入も現場任せになり、“昭和アナログ文化”から抜け出せない好例とも言えるでしょう。

現場任せを脱するために必要な視点

1. バリューチェーン全体を意識する

人手不足を“現場”で感じるとしても、その根本課題は原材料調達から生産、品質、物流、調達先管理に至るまでのサプライチェーン全体に目を向ける必要があります。

バリューチェーン全体でボトルネックを可視化し、部分最適ではなく「全体最適」で省人化・自動化を考えることが不可欠です。

調達購買や生産管理担当、さらにIT部門や総務、人事も巻き込み、横串を刺した課題認識が大切です。

2. デジタル・IoT活用で“つなぐ”発想を持つ

昭和流の現場任せでは、手元の作業や工程管理が限界となります。

業務データをすべてデジタル化し、IoTセンサーやクラウド連携を活用することで、工程間/工場間の連携をスムーズにし、見える化・自律化できる一歩が踏み出せます。

これからの人手不足対策は「現場力を最大化するためにデータを徹底活用する」発想転換が鍵となります。

3. 経営主導のPDCAサイクルを回す

現場での課題抽出や改善提案に任せきりにせず、経営層・現場・生産技術部門が一体となってGOAL(あるべき業務プロセス)を明確化し、中長期のロードマップを策定すべきです。

投資判断も経営レベルできちんとKPI/ROIを管理し、導入後の効果検証から見直しまで一気通貫でPDCAを回します。

“現場に答えを求めすぎない”、経営戦略としての人手不足対策が必要になります。

サプライヤー・バイヤーが知るべき視点

バイヤー:選定の「見るポイント」を持つ

バイヤーとして人手不足解消ソリューションを選定する場合、カタログや提案書だけでなく、必ず実運用している他工場・他社を見学することをおすすめします。

導入後の保守コスト、現場運用のしやすさ、データ活用度、工程間のつながり——これらを現場担当者だけではなく生産管理、エンジニア部門、経営層まで幅広くヒアリングしましょう。

また、単発導入でなく「将来的な全体最適化」への展開可能性も視野に入れる必要があります。

サプライヤー:現場の「本音」と「将来展望」をセットで聞く

サプライヤーとして提案活動を行う際は、現場担当だけでなく、生産管理・調達・品質管理・経営企画・人事など複数部門を巻き込むことが重要です。

「現状の困りごと」だけでなく、「5年後・10年後にどんな働き方を実現したいか」——この将来ビジョンを複眼的に掴み、現場と経営をつなぐ提案につなげてください。

現場と経営、両輪のアプローチで未来を切り拓く

人手不足の根本解決には、デジタル技術・工程改革・働き方改革の「三位一体」で臨む必要があります。

現場主導の改善活動や“現場の知見”が大切なことは間違いありませんが、部分最適で“現場頼み”な小手先対応にとどまっていては、日本の製造業の未来はありません。

経営戦略として人手不足を見据え、現場・経営・サプライヤー・バイヤーが共に協働し、ときに“常識や前例”に捉われないラテラルシンキング(横断的思考)で新しい仕組み・技術を取り入れることが不可欠です。

それこそが、これからの不確実な時代を乗り越える「現場力の進化形」となるはずです。

まとめ:人手不足ソリューションの選定は“一体感”が生みだす

人手不足時代に生き残る製造業となるためには、ソリューション選定・導入・活用のすべてで「全体最適」の視点を持たなくてはなりません。

現場任せのリスクを正しく認識し、サプライチェーン全体や経営戦略として位置づけることが必要です。

リアルな現場視点と経営的発想、最新デジタル技術を“つなぐ”ことが、新たな製造業の価値を創り出します。

人手不足解消へのチャレンジは、昭和型アナログ現場から、未来志向の工場へ進化する絶好の機会でもあります。

この転換期を攻めの姿勢で乗り越え、産業発展の新たな地平線をともに切り拓きましょう。

読者一人ひとりが、“今以上の現場”をつくるヒントとなれば幸いです。

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