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調達判断が属人依存で再現性がない組織の危険性

目次
はじめに:調達判断の属人化がもたらす現場のリスク
製造業が直面するさまざまな課題の中でも、調達・購買部門の「属人依存」は見過ごせない問題の一つです。
ベテラン担当者の経験や勘に頼った調達判断が横行する現場では、再現性のない業務フローが定着してしまい、組織としての健全な成長や競争力の維持が難しくなります。
この傾向は、デジタル化が遅れている昭和型のアナログ気質が強いメーカーや、担当者のジョブローテーションが少ない企業ほど色濃く現れています。
今回は、調達判断の属人化がどのような危険をはらんでいるのかについて、現場目線で具体的に解説します。
属人依存の現状と、その背景にある業界慣習
なぜ、「人」に頼る調達が生まれるのか
多くの製造業現場では、調達・購買のベテラン担当者がサプライヤー選定から価格交渉、契約条件の詰めまで一手に引き受けているケースが少なくありません。
理由の一つは、長年の取引で培った「信頼」や「暗黙知」に価値があるとされてきたからです。
サプライヤーとの間で築いた信頼関係や、誰もが知ることのできない業界特有の商習慣、過去のトラブルの記憶などが「人」に蓄積され、自然と意思決定もその「人」頼りになってしまいます。
業界を支配するアナログ文化の強さ
多くの製造業では、「書類中心」「ハンコ文化」「メールや電話でのやりとり」といったアナログ的なコミュニケーションが今なお現場で根付いています。
調達においても、最新のサプライヤーマネジメントシステムが導入されていない企業では、情報がエクセルや手書きの帳簿、担当者自身の頭の中だけに蓄えられていることが珍しくありません。
この結果、他の社員がいざ同じ調達判断をしようと思っても、ノウハウが引き継がれず再現が困難になるのです。
属人依存の調達判断が生むリスク・弊害
組織力の低下と継続的改善力の喪失
調達担当者が離職・異動した途端に、業務が立ち行かなくなる事例はよく見られます。
せっかく高い経験値を持つ人材がいても、それが組織的なナレッジとして共有・標準化されていなければ、業務継続性が損なわれてしまいます。
また、改善活動も個人頼りになるため、PDCAサイクルの回転速度が鈍り、組織としての競争力強化やコストダウン活動が滞るリスクがあります。
サプライチェーンリスクの増大
属人的な判断によって構築されたサプライヤーネットワークは、客観的な評価基準や透明性が担保されにくいという側面もあります。
「昔から取引があるから」「あの担当者は顔が利くから」といった理由で、実質的な取引先が固定化され、新規開拓や取引先の見直しが進まないこともしばしばです。
これにより、いざサプライヤー側にトラブルが起きた場合、代替先がすぐに見つからず、サプライチェーン全体のリスクが高まります。
不正や談合の温床になる危険性
調達プロセスがブラックボックス化している状態は、個人的な癒着や不正につながりやすくなります。
実際に、特定サプライヤーへの便宜供与や見積調整・談合などが問題になるケースは少なくありません。
再現性のない業務・判断プロセスは、内部統制や監査上も大きな課題となり、会社の信頼やブランド価値を損なうリスクをはらんでいます。
再現性のある調達改革がもたらすメリット
ナレッジの可視化と全社的なノウハウ蓄積
調達判断の属人化から脱却し、「なぜこのサプライヤーを選んだのか」「見積比較や決定基準は何か」といったプロセスを明文化・標準化することで、属人的な暗黙知が企業資産となります。
このように可視化されたナレッジは、OJTや教育研修の現場でも活用しやすくなり、担当者間のスキル格差やノウハウ伝承の問題も解消しやすくなります。
客観的・継続的なコストダウンとリスクヘッジ
複数の調達メンバーや関係部門で透明性のあるディスカッションを行えば、客観的かつ論理的なコストダウンや仕入れ先見直しが可能です。
たとえば、過去データをもとに定量的な分析ができるため、「本当に最適な調達先なのか」「他社見積と比べて適切な価格か」といった判断の精度が上がり、中長期的なリスクヘッジも図りやすくなります。
サプライヤーとの公正な関係構築
属人化を廃し、組織基準で調達活動を行うことで、サプライヤーとの関係も変化します。
誰が相手でも安定的な条件交渉や発注ができるようになり、不必要な値引き要求や“情実”に基づく不公平な取引を減らすことができます。
これによって、サプライヤー側も「ルールに基づいた安定的な取引先」として安心感を持つことができ、相互にwin-winとなる健全なパートナーシップを築くことができます。
現場で属人依存から脱却するステップ
調達プロセスの見える化・標準化に着手する
いきなりすべてをシステム化するのは難しいかもしれません。
まずは調達案件ごとに「調達方針」「選定理由」「比較検討資料」などを必ず残す運用を始めましょう。
既存の担当者からも、「なぜその判断をしたのか」「どんな基準を持っているのか」などをヒアリングし、要素ごとにドキュメント化することが肝要です。
属人的ノウハウを「組織知」へ変換
長年の経験者ほど「自分の勘やコツ」を表現しづらいですが、OJTやワークショップ形式でナレッジシェアを促す仕組みが効果的です。
現場のリアルな判断ポイントや“裏技”も、体系的なフォーマットで棚卸ししてみましょう。
また、「現場の声」を経営層へレポートすることで、ボトムアップの調達変革を会社全体へ根付かせることも重要です。
小さな改善活動の積み重ねを重視する
属人依存からの脱却は、一度で完結するものではありません。
現場での小さな「気づき」、「改善提案」を積極的に拾い上げ、迅速に業務フローへ反映させる文化を醸成しましょう。
P(プラン)D(ドゥ)C(チェック)A(アクト)を現場主導で回すことで、調達業務の再現性と競争力が確実に高まります。
バイヤー志望・サプライヤーの方へ:知っておくべきこと
バイヤーを目指す人が身につけるべき調達力
調達担当者にとって重要なのは、経験の有無以上に「論理的な意思決定能力」と「情報収集・整理能力」です。
属人的な判断から脱却できるバイヤーは、社内外の情報を網羅的に集めてクリティカルに比較し、合理的に意思決定できる人材です。
また、調達プロセスを率先して明文化し、ナレッジとして社内へ還元できる力も求められます。
サプライヤーが意識すべきバイヤー心理
サプライヤーの立場では、「どのようなプロセスで調達判断が行われているのか」「再現性ある評価・選定基準を持っているか」を常に意識することが差別化につながります。
属人依存の取引先の場合、特定の担当者に依存しすぎず、提案書や実績データなど“誰が見ても分かりやすい客観的エビデンス”を用意しておくことが重要です。
また、調達改革が進む企業向けには、デジタルデータやカタログ、標準化対応など新しい提案を用意することが関係強化につながります。
まとめ:属人依存の脱却が、製造業の未来を切り拓く
昭和型アナログ業界のしがらみや、「人」に頼る調達判断が根付いた現場には、成長を阻む多くのリスクが潜んでいます。
しかし、調達プロセスを見える化し、属人依存から脱却することで、組織としての継続性・競争力・透明性は飛躍的に向上します。
これからの製造業では、現場の知見を「組織知」へと昇華し、再現性のある業務フローを通じて、バイヤーもサプライヤーも真のパートナーシップを築き上げていくことが求められます。
属人化は日本の製造業が長く向き合ってきた課題です。
今こそ一人ひとりが当事者意識を持ち、小さな改善から調達改革を始めてみませんか。
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