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研究開発成果を事業化に結びつけるロードマップとマネジメント手法

目次
はじめに:研究開発の「死の谷」をどう乗り越えるか
日本の製造業は高度経済成長期を経て、今や世界でも高い技術力を誇ります。
しかしその一方で、「研究開発は盛んだが、なかなか新しい製品事業に結びつかない」というジレンマを感じている企業も多いのではないでしょうか。
特に、現場のバイヤーや調達担当者、サプライヤーの皆様は、「この新技術はいつ、どのようにビジネスへ展開されるのか」を常に意識しながらお仕事されていることでしょう。
昭和時代から根強く残る「山を作っては谷を越えられない」体質を脱し、研究成果をしっかり事業化に結びつけるには、どこに力を入れ、どんなロードマップを描けばよいのか――。
本記事では、製造業のプロ目線で現場で役立つ実践的な手法や業界の最新トレンドを解説し、皆様の仕事に直結するヒントをご提供します。
研究開発を事業化につなげるロードマップの作り方
ステージゲート方式を基本に据える
まず、研究開発と事業化をスムーズにつなげる王道の方法として「ステージゲート方式」が挙げられます。
この方式は、アイデア創出から基礎研究、応用研究、試作、生産準備、市場投入までのプロセスをいくつかの段階(ステージ)に区切り、それぞれの段階で評価・審査(ゲート)を設ける手法です。
各ステージで「技術的実現性」「事業性」「市場ニーズ」「コスト試算」などを評価し、不合格なら次のステージに進まず見直すという、トラブルを未然に防ぐシステマチックな仕組みです。
多くの日本の製造業では、アイデアが現場から自然発生的に挙がってブームだけが過熱し、「とりあえず研究したが売り方がわからない…」という事例が後を絶ちません。
ですから、最初から「事業化」をゴールに据え、ステージゲート方式を敷いておくことが極めて重要です。
ロードマップは「技術」と「市場」の2本柱で設計する
研究開発ロードマップ作成時には、「技術進化のシナリオ」と「市場ニーズ変化のシナリオ」を並列に描くことが肝心です。
多くの場合、開発現場は「技術の研究」にばかり目が行きがちですが、市場側で必要とされるタイミングやニーズは常に変化しています。
例えば、「新素材が5年後に実用化できそうだが、そのタイミングで市場が欲しがっているのは従来品か、まったく別のスペックか?」という双方向のストーリーが不可欠です。
現場目線で言えば、「この技術を使う場合、材料調達のコストや納期、従来ラインとの互換性、品質管理体制はどうなるのか」といった、実運用上のハードルも同時に盛り込んでおきましょう。
バリューチェーン全体を意識する
研究開発の成果を事業展開へつなげる際、製造現場と調達現場を分断して考えていては壁を越えられません。
顧客への新しい価値提供(バリュー)、社内生産・調達・販売の流れ(バリューチェーン)、サプライヤーやパートナーとの連携(エコシステム)――これらを“ひとつづき”としてロードマップに描くことが、現場で成功する秘訣です。
現場のバイヤーなら、「新技術を採用する場合、サプライヤーの切り替えや新規開拓が必要か?」「品質保証体制は本当に市場投入にまで耐えられるか?」といった視点を必ず洗い出しましょう。
昭和的アナログ習慣から脱却:意思決定・マネジメントの変革法
トップダウンからボトムアップ、そしてラテラルへ
日本の多くの製造現場では、未だに「経営層のトップダウンか、現場のボトムアップか」の極端な議論に陥りがちです。
しかし実際に成功するプロジェクトを見ていると、「部門横断的なラテラル(横断)な意思決定」が不可欠です。
具体的には、技術・現場・調達・営業・生産管理の各チームが各自の専門性だけでなく、「全体最適」を見据えた横断コミュニケーションを促進することです。
現場主導でアイデアを積み上げる→経営層が最終決断→関係部門間で対話を重視し全体最適化、という“ラテラル(横断)”型の運用を設計段階で仕組み化してみましょう。
多様なKPIで進捗管理:従来の「予実管理」だけではない
昭和世代のKPI(重要評価指標)は、「予算」「納期」「品質」の3点セットに収れんしがちです。
しかし、現代の事業化プロセスでは「あえて失敗を許す」「不採算ラインでもプロトタイプ評価を重視」「新規顧客のパイロット導入」などの定性的なKPIも重要になっています。
たとえば、「失敗数」「パートナーからのフィードバック質」「サプライヤー刷新率」「市場テスト時の顧客反応」など、幅広いKPIを設け、それぞれタイムリーに共有・見直す柔軟さも求められます。
また、これらKPIを現場と経営層がリアルタイムで連携・可視化できるダッシュボードを用意することも極めて効果的です。
SlackやTeams、PowerBIなどのツール導入を社内横断で推進しましょう。
レガシー文化との付き合い方:完全否定より「うまく使う」柔軟性
完全なデジタル化やスピード重視を目指し、現場が抵抗勢力化して“新旧対立”となるケースもありえます。
理想論を振り回すより、昭和的アナログ文化の強み(現場観察力、緻密な段取り、熟練の肌感覚など)を最大限活かしつつ、新しい仕組みを上乗せ「溶け合わせる」ことが持続的な改革を生みます。
「絶対デジタル」「全部システム」ではなく、「要所で紙&ハンコで最後の品質担保、情報伝達や進捗管理はシステムで一元化」…と使い分ける柔軟発想が大切です。
バイヤー・調達目線で考える“事業化に効く”現場の視点
サプライヤーと“共創”する時代へ
バイヤーや調達部門の仕事は、従来は「安く・早く・良いものを仕入れる」の一点でした。
しかし、これからの事業化成功のカギは「サプライヤーを単なる取引先でなく、“パートナー”として育てる」ことです。
たとえば、新しい技術・素材の開発において、「この仕様変更は御社で吸収可能か?」「一緒にプロトタイピングし、相互にノウハウを開示した上で標準化していこう」と、早い段階から協調しながら進めるスタイルです。
サプライヤーとしては、「御社のR&Dで何をチャレンジしたいのか」まで把握し、技術提案や品質保証、コスト面の提案まで積極的に踏み込んでいく態度が評価されます。
これにより、従来の“価格競争型サプライヤー”から脱却し、“付加価値共創型パートナー”として地位を高められます。
ROI視点をもつ:現場の数値感覚が事業化後の成否を左右する
R&Dフェーズでは「とりあえず試そう」「面白そうだから予算をつけてみた」のノリも悪くありませんが、事業化の意思決定には最終的にはROI(投資対効果)の明確化が欠かせません。
現場の調達・バイヤーこそ、「この部品を新技術に切り替えた場合、全体のコスト構造やサプライチェーンにどんなインパクトが?」と、“現場の数値体感”を盛り込むことが、最終的な事業化の安定性につながります。
品質保証・リスク管理の最前線に立つ
製造業では製品が市場で一度問題を起こすと、サプライヤーもバイヤーも「お客様の信頼」を一気に失う危険があります。
特に新技術・新規材料の導入フェーズでは、実験室のデータでは見えなかった「本番ラインでのスペック不一致」「組み立て時の歩留まり劣化」「現場作業者の混乱」など多面的なトラブルが起きやすくなります。
そうしたとき、現場のバイヤーや調達担当者が「小さなリスクも早期に可視化・報告」しながら、迅速な改善PDCAを主体的に回す体制こそが、研究成果を事業化で活かし切る究極の要素です。
おわりに:製造業の進化は“現場力×新しいつなぎ方”から生まれる
AIやデジタル技術の進化、省人化・自動化の流れ、カーボンニュートラル・SDGsの波など、製造業は未だかつてない変革期にあります。
その中で「研究開発の成果をどう事業化につなげるか」という課題は、一過性で終わらせてはなりません。
現場目線に立ったロードマップを描き、地に足の着いたマネジメントを固め、“ラテラルな横断型の連携”へ至る道筋が、必ず成功の鍵となります。
本記事をきっかけに、バイヤー・サプライヤー双方で新しい価値共創の視座を持ち、昭和の良き伝統と令和の新技術が融合した唯一無二の現場力を皆様とともに作りあげていきたいです。
現場に根差した“本当に役立つ”事業化マネジメント。
その最先端を、ぜひ皆さんも明日から一歩ずつ歩んでみてください。
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