投稿日:2025年12月26日

サニタリー配管溶接部材の裏波不良が異物付着を生む背景

はじめに:サニタリー配管と溶接部材の現場課題

サニタリー配管は、食品・飲料・医薬品・化粧品の製造現場に欠かせない設備です。

その目的は、異物やバクテリアの混入を極力防ぎながら、安全かつ衛生的に流体(液体・気体)を輸送することにあります。

このような高い清浄性が要求される中で、配管同士の接合に欠かせないのが「溶接」です。

特に裏波溶接(バックビード)は、サニタリー配管の品質を左右する最重要工程と言っても過言ではありません。

しかし昭和時代に培われた現場のやり方が、デジタル化・自動化が進む現代でも未だに根強く残っており、「溶接部裏波の不良」が“異物付着”という形で品質トラブルを誘発しています。

本記事では、サニタリー配管溶接の裏波不良が異物付着に繋がる要因や背景、そして令和の時代に現場がどう対応すべきかを現場目線で深掘りしていきます。

サニタリー配管とは何か?

サニタリー配管とは、英語の「sanitary(衛生的な)」が示す通り、内部の清浄性・滑らかさ・メンテナンス性を徹底的に重視した配管システムです。

一般の工業配管とは異なり、継手やフランジ部分にもデッドスペース(滞留域)やバリ、隙間が生じないよう精密な加工が求められます。

飲食・食品・医薬品のGMP(Good Manufacturing Practice)やHACCPにおいては、サニタリー規格への準拠が必要不可欠です。

この配管をつなぐ際に「TIG溶接(タングステン・イナート・ガス溶接)」を使うのが一般的です。

TIG溶接はアークによる溶融温度が比較的低く、精密なビード形成ができるため、サニタリー配管の溶接には最適といえます。

しかし、ここで問題となるのが「裏波不良」と呼ばれる現象です。

裏波不良とは?製造現場の実態

サニタリー配管の溶接では、溶接した配管内側にできる「裏波」=バックビードの形成精度が決定的に大切です。

理想の裏波は、なめらかで均一な厚み・幅があり、配管内面との段差や凹凸、ピンホール(穴)、くぼみ、焼け、酸化スケール(焼き)などがほとんどありません。

ところが、現場ではこんな裏波不良が目立ちます。

– 裏波が高すぎて出っ張る(盛り上がり)
– 溶接部がえぐれて薄くなり、くぼむ(アンダーカット)
– 焼けや酸化スケールが残る(不完全なシールドガス供給)
– ピンホール(小さな穴)やブローホール(気泡による空隙)

この原因の多くは、技能者の熟練度・現場教育の遅れ・アナログ的管理(品質チェックの勘と経験頼み)、作業段取りミスに由来しています。

特に食品業界では古い装置やサニタリー配管が長期間現場で活用されており、昭和時代の既存配管と令和の新規配管が混在する現場環境が珍しくありません。

これが“溶接品質のバラつき”や、“裏波不良が放置されたままの状態”を助長する土壌となっています。

裏波不良が異物付着の温床となる理由

では、裏波不良がなぜ異物付着を生むのでしょうか。

現場目線で理由を解説します。

1. 段差・盛り上がりが汚染トラップを作る

裏波が出っ張ったり段差ができていると、その部分に洗浄時の流体が行き届かず、食品や化学物質、微生物、バイオフィルムが滞留・沈着します。

サニタリー配管はCIP(定置洗浄)やSIP(定置殺菌)で自動洗浄を想定していますが、裏波の段差・凹凸部分は“洗浄の死角”となります。

とくに乳製品・ビール・シロップなどの高粘度品目では、その部分に異物汚染が発生しやすく、長期間気付かれないまま“衛生事故”の要因になるのです。

2. 酸化スケールが異物として脱落

シールドガス管理が不十分だった場合、溶接時に配管内面に焼け・酸化スケール(酸化被膜)が発生します。

このスケールは非常にもろく、通液や洗浄の際にはがれたり、他の配管部位への“異物混入”のトリガーとなります。

医薬品製造や飲料品など“無菌・異物ゼロ”が絶対条件の現場では、1ミリ以下のスケール脱落すら重大な品質事故になります。

3. ピンホール・ブローホールがバクテリアの“巣”

溶接ビードのピンホールやブローホール(小さな空隙・穴)は、目視では発見が極めて困難です。

この部位に洗浄残渣や微生物、バクテリア、カビが繁殖しやすくなり、「異臭」「製品腐敗」「細菌由来のスケール」等の事故原因となるケースが後を絶ちません。

業界を覆うアナログ思考とその弊害

サニタリー配管の溶接や検査の工程は、昭和の時代から「職人の勘」、「手加減と経験」が重視されてきました。

QC工程表や標準作業書は存在しても、真の意味で現場全体に「溶接品質意識」が浸透しているとは言い難い現実があります。

とくに
– 検査工程での“外観チェック頼み”による見逃し
– 新人技能者へのOJTだけに偏重
– 作業記録・トレーサビリティのデジタル化不足
– 品質基準値あいまい
– 工程内での自動検出・AI異常判定未導入

など、アナログ的体質が根強く残る現場が実際には主流です。

このため、「溶接裏波OK・NG判定」が技能者ごとの主観にバラつき、根本的な異物付着リスクが排除されていないのが現状です。

サプライヤーとバイヤーの立ち位置と意識の差

サプライヤー(配管工事業者、装置メーカー)は「指定されたサニタリー仕様に従い施工・納入すればよい」と考えがちです。

一方、バイヤー(工場・発注担当者)はトータル視点で

– 異物事故のリスクヘッジ
– 法規制・認証(HACCP・GMP等)の取得
– メンテナンス性・ダウンタイムの最小化

などを重視します。

この“意識のギャップ”も、裏波不良=後の異物トラブルを生みやすくしている要因です。

バイヤーとしては「現場の溶接品質を現実的にどう担保するか」「仕様書・図面に表れない要求をどう根回しするか」が重要になります。

ラテラルシンキング的アプローチで課題解決を探る

課題の本質は、「今の延長線上では解決できない昭和型管理」の脱却にあります。

ここからは、ラテラルシンキング的発想で以下の解決策を提案します。

1. 溶接後の全数内視鏡検査&画像データベース化

内視鏡(ファイバースコープ)検査を、全数実施が難しければ“抜き取り”ではなく“要所ごとの全数”に切り替えます。

検査画像をクラウド管理し、過去との比較解析(AI自動判定含む)、技能者ごとの傾向管理を進めましょう。

「検査はしているがデータ未蓄積・紙のみ」では、いつまで経っても根本改善には繋がりません。

2. 溶接ロボット・自動TIG溶接の導入

人の勘に頼らず、搬送装置と組み合わせた自動TIG溶接システム(バックシールド自動供給装置含む)にシフトすれば、裏波品質の安定化が期待できます。

全て自動化は難しくても、一部の定寸配管で導入し、実績を蓄積するだけでも大きな一歩です。

3. 仕様書・注文書に明記すべきポイント

バイヤー側は「サニタリー配管溶接部の裏波・内面仕上げ品質」を明確に仕様書へ定義し、検査合格のしきい値・内視鏡画像提出・異物撲滅PDCAなどを事前交渉で組み込むべきです。

サプライヤーも「厚み、幅、焼け、ピンホール不可」など写真付きで明確に伝えられれば、受注後のトラブルややり直し工事を減らせます。

4. メンテナンス視点でのモニタリングシステム

– CIP/SIP時の流体流速・温度・不純物濃度センサ
– IoTで配管ごとの汚染リスクを定量化
– データで裏波部の異常傾向を事前に検知・清掃計画へ反映

これらを現場に導入することで、異物事故ゼロ工場への道がもっと具体的になります。

まとめ:裏波不良と現場力の進化が異物ゼロを実現

サニタリー配管の溶接裏波不良は、決して個人のミスや一時的な「うっかり」の積み重ねだけでなく、業界全体が長年温存してきたアナログ文化・職人至上主義が根本原因になっています。

時代は令和。これから求められる「品質ゼロ・異物ゼロ・デジタル活用」は、現場と管理職、サプライヤーとバイヤーが“納得感を持てるやり方”で、横断的に取り組むことが肝要です。

真に使える仕様書、科学的な検査・判定、現場技能の標準化、IoT・AIの活用によって、裏波不良による異物付着リスクを劇的に減らすことは十分可能です。

昭和型アナログ業界の常識をラテラルシンキングで耕し直し、「工場現場力の正しい進化」を協働して目指しましょう。

サニタリー配管の異物ゼロ実現こそ、日本の製造業がグローバル競争で生き残るための“当たり前品質”であり、未来への投資なのです。

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