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品質トラブルの再発を防ぐ根本原因の見極めと全体最適による対策ノウハウ

目次
はじめに:品質トラブルの「本当の再発防止」とは何か
長年、製造業の現場に身を置いていると、「品質トラブルが繰り返し発生してしまう」という悩みに必ず直面します。
一度は収束させたはずの品質問題が、時間をおいてまた再発する。
現場担当者も管理職も、「なぜ同じミスが起きるのか」という自問を何度も繰り返します。
この「再発」が起きる真因は、根本原因が本当に解決されていないこと、そして部分最適の改善策に閉じこもってしまうことにあります。
本記事では、昭和型のアナログな思考から抜け出し、「全体最適」の視野で再発防止策を深掘りするノウハウを、現場のリアルな課題感を交えてお伝えします。
品質トラブルの再発防止の落とし穴と現場の葛藤
表層的な対策がなぜ繰り返されるのか
品質トラブル発生時、多くの現場でまず行われるのは、発生直後の「応急処置」と「原因調査」です。
ですが、納期圧力や顧客対応を優先するあまり、「とりあえず今回はこれで様子をみよう」となりがちです。
また、原因調査も「誰が悪かったのか」「どこで間違えたのか」という犯人探しや、機械や設備といった分かりやすい部分のみに調査が集中しがちです。
このときつい見落としてしまいやすいのが、人や組織、工程設計など「プロセス全体」に横たわる根本的なムリ・ムダ・ムラの存在です。
「品質教育を強化します」は再発防止と言えるのか
現場でよくある再発防止策が、「作業標準を再確認しました」「品質教育を徹底します」といったものです。
確かに一時的な効果はあるのですが、本質的な構造や仕組みに手を入れなければ、違う現場や人で同じトラブルが繰り返されるリスクはなくなりません。
自分が工場長として管理していた時代も、「作業者の注意力不足」という言葉に逃げそうになる幹部と衝突した経験が何度もあります。
しかし、本当の『再発防止』とは、“人”の問題に帰結する前に、“仕組み”そのものを見つめ直し、組織的に再発しない仕組みに変えていくことなのです。
根本原因(真因)の見極め方:なぜなぜ分析の“その先”へ
なぜなぜ分析の限界に気づく
製造現場では「なぜなぜ分析(5Why)」がトラブル解析の基本です。
ですが、現場でよくある形だけの“なぜなぜ”は、実は再発防止の落とし穴です。
例えば、「なぜ不良品が流出したのか」「なぜ検査者が見逃したのか」「なぜ作業者が規定通りに作業しなかったのか」……この順番で終えてしまうと、人の責任だけが浮き彫りになり、本来改善すべき仕組みや流れにメスが入りません。
真に求めるべきは、「なぜ仕組みとしてミスが起こり得るのか」「なぜ工程自体に人的エラーの余地が残るのか」と、さらに1段階深い視点で“全体最適”に迫ることです。
現場×工程×組織横断で真因に迫るラテラルシンキング
顕在化したトラブルの背後には、往々にして「部門間の壁」や「情報伝達の断絶」「責任分界点の曖昧さ」などが潜んでいます。
例えば調達購買部門と生産現場、設計部門と製造現場の間で、必須情報がきちんと流れていなかったり、サプライヤー管理ルールが現場に共有されていなかったりすることはありませんか。
このようなとき、ラテラルシンキング(横断的思考)を活かして、部門の枠を越えて全体の流れを見る視野が必要です。
「この工程でこの条件なら、どこで、どんな異常種が発生し得るのか」「担当者のスキルやヒューマンエラーだけを責めず、どんな仕組みならミスが起き得ないか」を徹底的に“横”で考えるクセを組織に根付かせることが、真因追及の鍵と言えます。
全体最適の視点で考える再発防止策の実践ノウハウ
全体最適の再発防止フロー例
現役で現場改善や品質管理に携わってきた立場から、全体最適の再発防止策の設計手順を紹介します。
1. トラブルの直接要因だけでなく、発生プロセス全体の“見える化”
工程フロー図やプロセスマッピングで、「いつ、誰が、どの情報を、どこで使っているのか」まで洗い出します。
2. 部門横断・外部(サプライヤー)も巻き込む情報共有
設計→購買→生産→品質保証 まで、担当者・サプライヤーを交えた多面的なミーティングを実施します。
3.仕組み(ルール・設備・設計・人)の4要素でミスを「起きにくくする」仕掛けへの改善
例:ダブルチェックの導入、判断の自動化、ポカヨケ(ミス防止具)設計、情報伝達フォーマットの標準化
4. 部分最適からの脱却-部署毎の目標だけでなく、工場全体のKPIを統一
バイヤー・サプライヤー間も『不良発生率』『初回合格率』『顧客クレーム発生件数』などの共通目標を持たせ、全体責任を共有します。
5. 改善効果の振り返りとトラブル未然防止のサイクル
PDCA+OODAループ(観察-方向付け-意思決定-行動)のように、「変化」を軽やかに回す文化の醸成
デジタル・自動化は“なぜ効くのか”
いまだ昭和型の手書き台帳や属人化に頼る現場では、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進が再発防止の大きな武器となります。
– トレーサビリティ確保のための生産管理システム
– IoTセンサーによる検査値自動収集・異常値アラーム
– 設計変更情報や作業変更指示のリアルタイム共有
これらは「人の記憶」や「伝える負担」に頼らず、仕組みとしてミスを防ぐ=根本的な再発防止策となります。
「IT化=コスト増」と捉えがちですが、長い目で見れば品質コスト・納期コスト・信頼コストを減らす最適投資です。
バイヤー/サプライヤーの立場で考える再発防止の着眼点
バイヤーが真に求めているサプライヤーの質
バイヤー経験者として断言できるのは、「適正価格」や「納期遵守」だけでなく、サプライヤーの“品質トラブル時の姿勢”が選定の大きな要素になるということです。
単に「原因は〇〇でした」で終わる報告書ではなく、
– 起きた背景・現場プロセスまで掘り下げているか
– 再発時にどんな全体最適策を実施しているか
– 予兆や傾向に気づき未然防止できているか
など、いわば“本質を見抜く力”をサプライヤーに期待しています。
サプライヤーとしてバイヤーに評価される対応策
サプライヤー側は、「元請けの指示待ち・責任逃れ」にならないよう、率先して自社プロセスの全体最適を志向しましょう。
– 品質トラブル発生時は社内だけでなく関係部署・バイヤーにも発生状況をオープンに共有
– 仕組み・設備・人材まで横断的な再発防止策を提示
– 定期的な品質監査や工程見学にも積極的に応じる(隠し事ゼロ)
これらを継続することで、「このサプライヤーは問題が起きても安心できる、責任感がある」とバイヤーから高い信頼を勝ち取れます。
昭和型アナログ文化からの脱却-組織変革ストーリー
時代遅れと言われるアナログな管理体制から、全体最適を実現するためには、中・現場管理職層が「一石」を投じることが欠かせません。
自分自身も、“帳票管理のDX反対派”の中心だったベテラン現場を巻き込み、「小さな成功事例(ペーパーレス化の効果やポカヨケ改善によるヒューマンエラー激減)」を積み重ねていきました。
ポイントは、現場作業者の生の声や作業負担の削減効果を、日々の管理会議でデータとして示し続けることです。
“デジタルは信用できない”という昭和型価値観を、目に見える事実・数字で一つずつ変えていきます。
変革の主導役は必ずしも経営トップでなく、現場リーダーでも可能です。
まとめ:再発防止の“新しい常識”で製造業を進化させる
品質トラブルの再発防止は、一度の事件に終わらない「企業体質そのものを進化させるためのチャンス」です。
– 部分最適でなく全体最適、“なぜ”のその先まで突き詰める
– 人の責任論に逃げず、仕組み作り→プロセス改善→組織連携で根本解決を目指す
– デジタル・自動化の活用で属人化から“仕組み品質”への進化を図る
– バイヤー/サプライヤー問わず、お互いの立場で現場の「本質」を見抜く姿勢と行動が評価される時代
を意識し、現場から日本のものづくり全体をアップデートしていきましょう。
「再発防止」という課題は、現場の知恵とラテラルシンキング、そして現実の数字で新たな地平線を切り拓く契機になります。
今こそ、昭和のやり方をアップデートし、「世界に誇れる現場力」で製造業の未来を築いていきましょう。
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