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AIやIoTを入れても工程の根因は結局アナログに残る理由

目次
はじめに:製造業の現場に根付くアナログの本質
製造業界は、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった最新技術の導入が急速に進んでいます。
工場内の自動化やデータ可視化、生産計画の最適化など、あらゆる場面でITの力が活用され、業務効率の向上・人的ミスの削減・不良率の低減が期待されています。
しかし、現場での経験上、AIやIoTを導入しただけでは工程の本質的な課題、すなわち「根因(ルートコーズ)」の多くは未だにアナログの領域に残り続けているのが実情です。
なぜ、ハイテク技術が進化しても工程の課題はアナログに留まるのか。
その理由を、現場目線で多角的に解説します。
AIやIoTで解決できる「表面」の課題と、解決できない「根因」
AIやIoTの導入によって、製造工程で「見える化」や「自動化」が大幅に進みました。
例えば、生産ラインのセンサーからデータを自動収集し、不良発生時のトレーサビリティを実現することが可能です。
また画像認識AIによる外観検査や、機械稼働データを使った予防保全なども標準化されつつあります。
しかし、なぜか不良の根絶や工程改善の決定打にならないケースが多いのです。
その理由は、AIやIoTがカバーできるのは「見える・記録できる」情報だけであり、工程の深層に潜むアナログ的な要素(人の習慣や、本音・暗黙知、曖昧な現場ルール、場の空気感など)はデータ化できない、またはデータ化が非常に難しいためです。
現場に根付く、アナログな「ムラ・ムリ・ムダ」
製造現場でよく言われる「ムラ・ムリ・ムダ」をAIやIoTで自動化・可視化すると、多くの工数やデータは取得できます。
しかし、現場のリアルな業務は必ずしも設計どおりには動きません。
ベテラン作業者が長年の経験に基づき“感覚”で微妙な調整をしたり、突発的なトラブルにその場でアドリブで対応したりする現象が日常的に発生しています。
こうした「勘・コツ・経験」によるアナログな業務運用が、結果的に製品品質や生産性の安定を支えています。
デジタル設備が正常値を示していても、なぜか不良が止まらない、逆に設備が異常値でも現場の機転でラインは安定稼働する。
こうした現象の根因は、設備やシステムに現れる値ではなく、現場作業者の判断や行動、現場独特の“呼吸”にこそ宿っているのです。
「なぜなぜ分析」の限界とアナログの深層
不良やトラブルが発生した際には「なぜなぜ分析」などのツールを用い、真の原因を掘り下げます。
AIやIoTで取得した大量データも、この分析には大きな役割を果たします。
しかし、現場で長年感じている課題の一つは、「なぜ」の階層がある段階からアナログ領域に突入することです。
例えば、
1. 不良発生: 異物混入
2. なぜ?: 作業台が汚れていた
3. なぜ?: 作業台の清掃が不十分
4. なぜ?: 清掃ルールが徹底されていなかった
5. なぜ?: ルールは週1回清掃だが、担当が変わり認識ズレがあった
このように、一定階層まではAIやIoTで「見える化」ができますが、組織文化や担当者の認識ズレ、日々のコミュニケーションギャップといった“人”のアナログ部分が最深部に存在しています。
この領域こそが「根因」であり、いくらAIを高度化してもデータの世界だけでは掴みきれません。
昭和的アナログ文化を侮れない理由
「これだから昭和的アナログ文化は…」と揶揄されがちですが、現場視点で見ればこの文化には大きな意味があります。
製造業は本質的に「物」と「人」が密接に関わる産業です。
高度に自動化された工場でも、日々の小さなトラブルへの即時対応や、臨機応変なサプライチェーンの調整は人間の介入なしには成立しません。
また、歴史ある現場ほど、人どうしの信頼や”暗黙の約束”が品質や納期遵守を支えています。
正論のデータだけを武器に業務改革を進めても、現場のモチベーションや人間関係にヒビが入ればかえって大きな混乱を招くことも珍しくありません。
バイヤー・サプライヤーの現場目線が不可欠
調達や購買(バイヤー)の立場では、AIやITツールによるサプライヤー評価やコスト分析が一般的です。
しかし実際には、サプライヤー工場の現場には企業文化や職人スキル、担当者どうしの“肌感”など、数値化できない要素が重大な意味を持ちます。
これらのアナログ情報は、実際に現場を見る・現地で対話する・現場の声無き声を感じとるなど、五感と経験を駆使しないと掴めません。
優秀なバイヤーや調達担当は、データの裏にある「ナマの現場実態」を読み解く能力に長けてるのです。
同様にサプライヤー側も、データで納得させるだけでなく、現場の「信頼感」や「誠実さ」、「問題解決力」を示すことが長期取引の鍵となります。
現場のアナログが生み出す価値と今後の進化
最先端のデジタル技術が持つ圧倒的な効率化効果は確かに素晴らしいものです。
一方で、現場アナログ(人の感覚・場の意思決定)の発揮する力も絶対に軽視できません。
真の意味での工程改革とは、「AI・IoTなどのデジタル領域」と「昭和由来のアナログ領域」のベストミックスを生み出すことです。
現場の声をシステム設計に反映し、イレギュラーに対応できる“現場力”を保った上で、再現性の高い部分はためらわずデジタルに。
これが、現実的かつ強い現場を作るための道筋と言えます。
アナログ現場力を大切にしながらデジタル化を推進するために
AIやIoTの導入が進むなか、現場アナログを生かす現実的なポイントをまとめます。
現場の声の吸い上げをデジタル化設計に活かす
現場で実際に作業にあたる人たちの意見や小さな気づきを、プロセス設計やAI学習に取り込む。
「現場の違和感」を無視せず、むしろ改善の入口として重視することが重要です。
デジタルでは拾えない“異常の芽”の可視化法を工夫する
例えば作業日誌や口頭ヒアリング、現場写真記録など、アナログな活動もデータ連携してシステムに蓄積する。
これにより、デジタルの世界でも「現場感覚」を間接的にデータ化することが可能になります。
人のアナログ力とAI技術の両方を育てる現場教育
デジタル教育だけではなく、トラブルシューティングや「なぜなぜ」の深掘り力など、昭和的現場スキルの伝承・教育も引き続き重視しましょう。
熟練者によるアナログの“流儀”とAIのデータ解析力の融合が、生産現場の競争力を高めます。
まとめ:製造業の現場力が進化するために
AIやIoTの進化によるデジタル化は、今後も加速度的に進展していきます。
しかし、現場の「根因」は多くが人にまつわるアナログ領域に潜んでいます。
現場感覚・現場力を蔑ろにすると、いかにデジタル化が進んでも「本当に強い現場」や「本当の品質安定」は実現できません。
最先端技術と現場アナログの融合――この“両利き”アプローチこそが、これからの製造業に求められる生存戦略です。
製造現場が、今以上にデジタル×アナログのベストミックスとなり、現場で働く全ての人が課題解決や価値創出にワクワクできる未来を、ぜひ一緒に実現していきましょう。
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