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自動化設備を入れても改善されない企業の根本的問題

目次
はじめに:自動化設備導入の“夢と現実”
製造業の現場では、IoTやAI技術の進展による「スマートファクトリー化」への期待が高まっています。
人手不足や品質向上、コスト競争力強化など、数々の課題を解決すべく—多くの企業がロボットや自動化設備の導入に踏み出しているのが現状です。
しかし、現場の肌感覚として、「数千万円、時には億単位の投資をしたのに思ったより効果が出ない」「自動化で逆にトラブルや手戻りが増えて生産効率が落ちた」といった声も珍しくありません。
なぜ「自動化設備を入れても現場改善が進まない」企業が後を絶たないのでしょうか。
本記事では、昭和時代から続く現場風土と最新テクノロジーのギャップを踏まえ、導入失敗に潜む本質的な要因やバイヤー・サプライヤーが知っておくべき視点を、現場目線で深掘りします。
“自動化=万能”という誤解が招く落とし穴
自動化は「道具」に過ぎない
自動化設備そのものはあくまで「現場の道具」です。
昭和の高度成長期からロボットは活躍していたものの、業界内には「新しい道具が入ればラクになる」「人減らしができる」という短絡的な捉え方が根強く残っています。
この「自動化=即効性の魔法」とみなす発想は危険です。
現場の課題が明確でないまま、「とにかく自動化すれば良い」という流れで導入が進むと、業務プロセスとの乖離や、逆に現場の混乱を招きやすいからです。
“人減らしファースト”への偏り
人手不足をきっかけに自動化を本格検討する企業は多いですが、「今いる人材のダウンサイジング」「省人化だけにフォーカス」してしまう企業も少なくありません。
一方で、ノウハウ伝承・異常発見・応急対応・段取り変更…現場の付加価値活動は一朝一夕に自動化が担えるものではありません。
「単純作業は機械、付加価値業務は人」という整理こそ重要ですが、この意識が薄い現場ほど、人と機械の“すみ分け”があいまいとなり、投資額に見合った効果を感じられなくなります。
自動化の前に「現場課題の見える化」こそ本質
昭和時代から続く“職人頼み”の罠
今も多くの工場で、ベテラン技術者や現場リーダーの経験則・勘に頼った業務設計がなされています。
設備の老朽化やクリエイティブな現場改善を“現場まかせ”にして、「なぜこの作業をこの手順でやっているのか?」という部分がブラックボックス化している職場は要注意です。
この状態で自動化設備を単に置き換えても、既存のムダや問題が温存されるだけで、本当の改善からは遠ざかってしまいます。
現場で“ムダを見抜く目”の重要性
自動化に先立ち、現場では必ず「工程ごとのムダ」「品質リスク」「手待ち・運搬の無駄」などの“見える化”が欠かせません。
まずは下記のような点を現場で洗い出しましょう。
・多能工化できる作業、特定スキルに依存した作業はどこか?
・工程間に滞留する仕掛品やロスは何に起因するか?
・ヒューマンエラー発生の要因はどこに存在するか?
・ラインバランスの取り方、その時々の作業負荷の偏りは?
こうした課題の「解像度」を上げずに導入を進めると、自動化設備が“問題の温存装置”になってしまいがちです。
現場視点での“本質的な効果指標”設定が不可欠
自動化導入にあたり、「何をもって改善とするのか?」という指標設定を曖昧にしてはなりません。
— 歩留まり改善、安全性向上、人減らし、作業時間短縮、品質トレース性強化…
これらのうち何を優先すべきか、現場・購買・生産管理・品質管理と多職種で徹底した合意が必須となります。
ここが曖昧なままプロジェクトがスタートすると、「自動化機が入れば全てうまくいく」との幻想に現場が支配されてしまい、トラブル時に「こんなはずではなかった」現象に陥りやすいのです。
導入後こそ露呈する“昭和的マインド”と運用の壁
スキルアップとマインドセットのアップデート
導入プロジェクトの後半では必ずといっていいほど、現場オペレータや保全担当者の「使いこなし」「緊急対応」「日常点検」スキルの壁に直面します。
・マニュアルを読む習慣がない
・「とりあえず止まったらリセット」の繰り返し
・設備トラブルの初動対応がいつも同じ人への属人化
・メーカー任せの保守依存…
こうした昭和的なマインドや運用が色濃く残ったままで、ITやPLC、センサ、ロボットの新技術が入っても、本質的には何も変わりません。
むしろ、属人化が悪化し、トラブル時の生産停止リスクは増大します。
「人がダメならマシン」では何も変わらない
「人の教育は難しいから機械化を…」という安易な発想は、現場の成長機会・ノウハウ蓄積の芽を摘み取りかねません。
自動化を進める場合、プロジェクト初期こそ現場のキーマン(匠・班長・若手リーダー)をメンバーに参画させ、「機械との新しい向き合い方」を現場主導で考え抜くことが不可欠です。
現場に任せきりではなく、現場を“主役”としたDXが成否を分けるのです。
購買・調達部門が考えるべきバイヤー視点の盲点
装置メーカー“任せきり”の弊害
購買部門・調達担当が見落としがちなのは、「一式いくら」「納入したら終わり」の装置調達になりがちなことです。
自動化ソリューションは標準品とカスタム品があり、カスタム機は現場の運用に密接に関わります。
しかし、『現場のオペレーションをきちんとヒアリングし、運用マニュアル・段替えなど「現場育成」まで含めたサービス・保守契約を条件に入れる』という条項を盛り込みきれない企業も多いのです。
コストやスピード優先で「本当に必要な要件」が抜け落ちると、結果的に使いこなせない高額設備を買ってしまうリスクが高まります。
現場とのインターフェース設計を最重要課題に
自動化設備の投資効果は「設備」そのものだけでなく、「現場の柔軟な使い方」「変化対応力」とのインターフェースで決まります。
バイヤーは価格・納期だけでなく、以下の点をチェックリスト化しましょう。
・現場で複数用途や少量多品種に対応できる柔軟設計か?
・オペレーターへの教育や立ち上げ支援、トラブル対応までサポート体制を担保できるか?
・5年、10年先までのメンテナンス・部品供給体制はどうか?
・現場目線のUX(使い勝手)をどこまで真剣に考えているメーカーか?
現場担当者との密な連携なしに成功はありません。
ここを徹底できる調達担当こそ“真のバイヤー”です。
サプライヤー(自動化装置メーカー)が考えるべき提供価値
装置を売ること以上の「運用パートナー」へ
サプライヤー側にも「入れれば終わり」という昭和的営業スタイルが残っています。
真に現代的な企業は「現場で自走できる仕組み(教育支援、現場改善実践)」まで一貫し、運用パートナーとして寄り添う姿勢が求められます。
制作納期や仕様の可否だけでなく、現場プロセスや運用リスクを現場サイドと巻き込み、共創する姿勢が重要です。
現場“共創”でしか語れないソリューション
実際に現場に何度も足を運び、「本当に困っていること」を棚卸しし、現場主導のPoC(実証検証)を小さく回しながらPDCAを何度も繰り返すことで、初めて自動化設備が「生きた仕組み」になります。
装置の“スペック競争”から、“現場の未来創造”へ。
サプライヤー企業はこの意識改革を急ぐべきです。
まとめ:昭和的マインドの“アップデート”が改革の核心
自動化設備の導入は、現場文化の変革なしには決して成功しません。
— 作業の棚卸し・徹底した見える化
— 改善指標の明確化と多職種連携
— 現場起点でのスキル・運用習慣のアップデート
— バイヤー・サプライヤーの「現場中心思想」
どんなにAIやロボットが出揃っても、最終的には「現場力」が“肝”なのです。
昭和から続く「属人化」「人まかせ」「本質議論の先送り」から一歩踏み出し、新しい価値共創のフィールドを現場とともに切り拓いていきましょう。
それこそが、日本の製造業が次の半世紀も世界でユニークな存在であり続けるための、変わらぬ根本的な挑戦なのです。
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