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製造業における安全衛生法令と現場でのリスクアセスメント

目次
はじめに
製造業は、私たちの生活を支える重要な産業です。
しかし、その現場には多くの危険が潜んでおり、少しの不注意が大きな事故につながるリスクを常にはらんでいます。
このようなリスクを最小化するために、「安全衛生法令」と「リスクアセスメント」は欠かすことができません。
本稿では、実際に現場で経験を積んできた立場から、法令の基礎知識と、現場で真に機能するリスクアセスメントの実践法、そして現代に根付く課題と今後求められる視点について解説します。
安全衛生法令の基礎知識
製造業に関わる主な法令
製造業に従事する上では、法律を守ることが最低限のルールです。
日本で特に重要なのが「労働安全衛生法」と「労働基準法」、そして「労働安全衛生規則」の3つです。
どれも事業者が労働者の安全確保・衛生的な作業環境維持のために最低限順守すべきことが定められています。
労働安全衛生法は、工場などの現場で従業員が労働災害に遭わないように、管理者や現場作業者の責任範囲や、機械設備の安全基準を細かく規定しています。
現場では、設備ごとに点検・保守の記録を残すこと、作業手順を見直すこと、各種保護具を適切に使用することが求められています。
法令順守はなぜ必要か
法令違反による事故が起きれば、従業員の命や健康が脅かされるだけでなく、企業としての社会的信用や持続経営すらも瞬時に失いかねません。
また、万が一の事故で多額の損害賠償や営業停止に至れば、サプライチェーン全体への損失も甚大です。
法令は「守るべき限界」ではなく、「安全を守るための最低限の通過点」と認識すべきです。
リスクアセスメントの重要性
リスクアセスメントとは何か
リスクアセスメントとは、作業現場に潜む危険性や有害性を体系的に洗い出し、それぞれのリスクの大きさを評価し、リスクを減らすための対策を講じる一連のプロセスです。
厚生労働省も2006年よりリスクアセスメントの実施を努力義務とし、現代の現場運営においては欠かせない業務になっています。
実践的なリスクアセスメントの進め方
1. 作業内容・現場設備を洗い出す
2. どんな危険(リスク)が潜んでいるか棚卸する
3. リスクの発生頻度と被害の大きさで優先順位をつける
4. 具体的な安全対策や管理策を検討し導入する
5. その効果を評価し、必要に応じて再改善を図る
“机上の空論”にならないためには、現場経験者の声を必ず反映し、生産・調達・品質・物流など多部門の視点をつなげることが必要です。
たとえば、実際に事故やヒヤリ・ハットのあった事例から現場目線で対策を考えることで、より本質的で実効性のあるアセスメントが可能です。
昭和型アナログ現場の限界
多くの日本の製造現場は、いまだに経験や勘に頼った作業手順や口伝文化が色濃く残っています。
過去の成功体験だけを繰り返し、「自分の現場は大丈夫」という根拠なき安心感がリスク認識を鈍らせます。
実際、ベテラン職人の離職や高齢化が進めば、暗黙知が継承されず、突然大事故を引き起こすケースが後を絶ちません。
今こそ、「気付けた人が手順書にフィードバックする」「アナログだけでなくデジタルも併用する」といった時代に合った新たな取り組みが求められています。
バイヤー・調達の立場で考えるリスクアセスメント
調達購買部門が果たす役割
バイヤーには、自社だけでなくサプライヤーにも高い安全衛生水準を求める責任があります。
調達先で重大事故が発生すれば、納期遅延や品質問題、果ては社会的な責任追及に発展する場合もあるため、契約時には「現場におけるリスクアセスメントの実施と改善報告」を義務化する動きも進んでいます。
サプライヤーの視点とコミュニケーションの重要性
サプライヤー側も「どうせコスト優先で、細かな安全管理までは見ないだろう」と考えがちです。
しかし、近年は多くの大手メーカーが強いコンプライアンス意識を持つようになり、安全衛生の投資が企業価値向上や新規受注獲得にも直結する時代となりました。
現場見学や定期監査に積極的に参加し、「自分たちの現場改善の事例を発信する」ことで信頼を高めることが競争力につながります。
現場で本当に機能するリスクアセスメントの在り方
組織風土の改革が成功のカギ
リスクアセスメントを“書類作業”で終わらせないために最も重要なのは、「失敗や違反を隠さずに報告できる風土作り」です。
たとえば、「ヒヤリ・ハット報告をポジティブな評価につなげる」、「現場リーダーの自主巡回を推進し、気付きや課題を共有する」など、現場の声を吸い上げる仕組みを強化することが求められます。
テクノロジーとDXの活用
昨今、IoTセンサーやAIを活用した異常検知、クラウド型のヒヤリ・ハット管理システムなども続々と登場しています。
加えて、AR(拡張現実)を用いた安全教育や、スマートウォッチによる作業員の体調管理等、従来人間の感覚に頼っていた安全管理をデータに裏付けられた先進管理へと変革する流れが加速しています。
これらを上手に組み合わせることで、「現場の勘」だけでなく、「科学的根拠」にもとづくアセスメントが可能になります。
未来志向の安全衛生管理へ
グローバル・サプライチェーン時代の新たな視点
グローバル展開が当たり前となった今、日本国内だけではなく、海外サプライヤーの安全衛生基準にも目を光らせる必要があります。
たとえば、海外工場では現地の法令や文化的背景が大きく異なるため、日本式の“当たり前”が通用しない場合もあります。
「現地スタッフへの日本式リスクアセスメント教育」や、「多言語での手順書整備」など、多様性を考慮した柔軟な対応力が求められています。
“人”中心の現場改革が不可欠
最終的には「人の命を守る」「安心して働ける現場を守る」ことこそが持続的な成長の土台です。
コンプライアンスやシステムの強化はもちろんですが、現場一人ひとりが「危険を感じ取る力」と「自ら改善する意識」を持つことが最も大切です。
そのためには、経営層から現場作業員まで巻き込んだ“共創”の姿勢が必要です。
まとめ
製造業における安全衛生法令の順守と、形式的ではなく本当に現場で機能するリスクアセスメントの実践は、企業の責任であり経営の根幹です。
古くからのアナログ体質を改善し、テクノロジーや多部門連携を積極的に取り入れることで、「ゼロ災害」と「レジリエントな現場」を目指しましょう。
調達購買担当者やサプライヤーも役割を再認識し、現場を磨き合うことで全産業の発展に寄与できるはずです。
安全文化・リスクアセスメントの定着には一朝一夕の魔法はありませんが、「現場を知る人が変革にコミットする」ことで、次世代の製造業を強くしなやかに育てられると信じています。
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