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制御盤扉部材のシール不良が短絡を招く理由

目次
はじめに:身近なリスク、制御盤に潜む落とし穴
昨今、製造現場の自動化やDX推進が叫ばれていますが、現場の最前線では今なお、アナログ的なリスクが根強く残っています。
特に“制御盤”という存在は、あらゆる生産設備の心臓部として、その稼働安全性が厳しく問われます。
制御盤の扉部材(ドア、ヒンジ、シール材など)は一見地味ながら、致命的なトラブルを引き起こす要因となることも珍しくありません。
今回は「制御盤扉部材のシール不良が短絡を招く理由」と題し、現場経験者だからこそ知る実際のリスク、その本質、対策のヒントを掘り下げていきます。
制御盤とは何か?現場にとっての“命綱”
制御盤が守るもの
制御盤は生産設備の動作を支える電気信号の要所です。
回路ブレーカー、PLC(シーケンサ)、リレー、変圧器など、緻密に配置された部品が組み合わさり、一分一秒の狂いさえ許されない制御を実現しています。
この制御盤が正常に機能することで、生産ラインの安全、品質、効率が維持されます。
万が一、制御盤内部で短絡(ショート)が発生すると、設備の停止や火災にまで発展しかねません。
それだけに、制御盤は万全の保護が必須であり、「扉部材のシール」もその要です。
扉部材、特にシールの役割
制御盤には外部から粉塵・水分・有害ガスの侵入を防ぐため、フェルトやゴム、スポンジ等でできたシール材が扉の隙間に用いられています。
このシール材による密閉性が維持されてこそ、
・結露による漏電・腐食の防止
・外部異物によるショートの未然防止
・空調効率の保持
など多岐にわたる重要な働きをしています。
逆に言えば、シール不良は「何もしていない間にじわじわと進行するリスクの入口」でもあるのです。
シール不良が制御盤をどう蝕むのか
結露がもたらす電気短絡のメカニズム
工場の制御盤が設置される場所は、必ずしも清潔で安定した環境とは限りません。
鉄鋼・プラント、食品、化学メーカーなど、環境の温度・湿度差が激しいケースは多いです。
シール不良が発生すると、外気がわずかな隙間から侵入します。
朝夕の寒暖差や冷房停止時などに内部が外気と温度差を生じると、制御盤内壁に結露が生じます。
その水滴が端子台や基板、回路上に垂れると、そこに金属粉や塵が混入していれば最悪の場合 “導通経路”が自然発生してしまいます。
乾燥時には問題なく見えても、湿度が75%以上になるなど環境変化で一気に短絡リスクが高まるのです。
粉塵や有害ガスによる腐食
日本の多くの工場は、いまだ昭和的な“現場主義”が根強く、清掃やエアフィルタが十分でない場所も散見されます。
シール不良でわずかなエアフローでも扉部の隙間を抜けて粉塵や有害ガスが入り込むことがあり、これが端子台の金属部分に吸着すると、長期的には酸化や腐食の進行原因となります。
腐食は肉眼で見つけにくい上、導通抵抗値が微妙に上がって熱を持ったり、絶縁材料の脆弱化による絶縁破壊の遠因となったりします。
この“見えにくい劣化”こそ、ベテラン担当者も年次点検を怠る原因となり、やがて短絡や事故に繋がってしまうのです。
虫や異物の侵入リスク
昭和から続く古い工場では防虫設備が未整備なことも多く、小さな隙間からクモやゴキブリが入り込む例も少なくありません。
虫の死骸や体液は意外と導電性が高く、これが基板やはんだ部分に触れると“思わぬ経路”で短絡を起こすことがあります。
都市伝説のように聞こえるかもしれませんが、現場では“電気盤内の異物トラブル”としてしばしば報告されているリアルな話です。
実際の短絡事故事例とアナログ業界における教訓
見えない劣化が一夜にしてトラブルを生む
ある化学プラントで、深夜急に設備の制御盤から煙が発生し、ラインがストップした事例があります。
原因を調査すると、制御盤扉のゴムシールが数年に一度の定期改修時にきちんと貼り直されておらず、いつしか扉と枠の間に1mm弱の隙間が…
そこからたびたび起きていた“工場内の湿度の上昇時”に結露が発生。
端子台近くに水滴+粉塵が蓄積され、ついにショート&局部発熱→絶縁体が溶けて本格的な短絡事故に至りました。
このような事例は決して珍しいものではなく、
・粉塵の多い現場
・改修頻度の低い設備
・保全よりも生産スループットを優先する風土
の“トリプルパンチ”が昭和的アナログ業界の現場でまだ散見されます。
ヒューマンエラーを生む「気づきにくさ」
シールの経時劣化は、目視でも分かりづらいことが多いです。
特に現場では
「まだ隙間はなさそう」
「点検は面倒だから時間がある時に」
と後回しにされがちです。
さらに、設備投資を渋る企業では「まだ壊れていないから」や「余計なコストはかけられない」と、シールの補修・交換がなおざりにされ、そのしわ寄せが大事故のリスクとして積み重なっていくのです。
短絡を防ぐための実践的な現場対策
設計段階から見直す「密閉性重視」の思想
高信頼性を求める製造業界では、制御盤筐体のIP(国際防水防塵規格)等級の指定に加え、設計段階から
・シール材の二重化(ダブルリップ型やテーパー型の導入)
・ヒンジやロック周辺部の気密処理
・出し入れ配線部のコーキング・グロメット化
など、「本当に侵入を許さない」設計への工夫が必要です。
今なお多い“設計由来の弱点”は、現場の声を設計部門にフィードバックし、冗長度のある密閉設計へラテラルに思考展開することが求められます。
保全現場で実際に効いたシール管理・点検ポイント
1. 目視チェックだけでなく“手触り”で劣化を発見
・劣化したシールはべたつきや弾力低下が現れやすいです。
・年次点検時に必ず指で押して感覚を確認しましょう。
2. 端子近傍の結露検知センサの設置(一体型温湿度センサなどの活用)
・IoT化による遠隔モニタリングを活用し、異常があれば即アラートで応急保守も可
3. シール形状の違いによる“死角”を作らない設計
・扉部の曲面や段差には個別対応したシール材の採用を徹底
4. 設備停止時の“ドライヤー養生”で内部残留水分の完全乾燥
・“数分換気”では足りず、ピンポイントヒーターやダクトで基板表面もドライする意識が重要
昭和アナログ工場あるある「現場合わせ」文化からの脱却
管理職やリーダーは、現場合わせでごまかしがちな「部品流用」「一時しのぎ」の悪習を断ち切ることがまず求められます。
たった数百円のシール材のケチりが、数千万円単位のダウンタイムを招くリスクになりうること、その投資対効果と真摯に向き合うべきです。
また、トヨタ流カイゼン的目線だけに縛られず、「世界水準」の密閉管理に踏み切る柔軟性も重要です。
サプライヤー・バイヤーの立場で「見落としがちな視点」
サプライヤーが意識すべき“現場実装力”
シール材を納める側としては単に「納品した後の品質保証」ではなく、「現場で本当に密閉性・耐久性を発揮できるか」を最重要視するべきです。
実際に、現場の扉形状や使用条件に即したカスタマイズ提案(例えば低温柔軟材質や難燃シール等)は、バイヤーからの評価も大きく高まります。
また、定期交換インターバルの設定や、点検ツールの提供まで踏み込めば、単なる部品供給以上のバリューを訴求できるのです。
バイヤーに求められる“真の課題発掘”
見積競争で“コストダウン”だけを優先するのではなく、現場ヒヤリングを徹底し、「短絡リスクの源泉を本質から断つ」目線で調達活動を推進することが重要です。
現場の“阿吽の呼吸”に頼らず、仕組み・仕掛けで短絡リスクを潰すという、昭和の常識をアップデートする視座を持ちましょう。
まとめ:シール不良対策が“見えない災害”から工場を守る
制御盤扉部材のシール不良は、つい見落とされがちな“見えないリスク”です。
しかし、結露→短絡→設備停止、粉塵・腐食→絶縁不良といった重大事故に直結するため、設計・調達・保全の各現場が共通認識で取り組まねばなりません。
アナログの現場も、ラテラルな発想力で工夫を重ね続けることこそ、現代製造業の底力です。
自社の現場を定期的に見直し、「たかがシール、されどシール」の精神で安心・安全な制御盤管理体制を築いていきましょう。
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