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スマートウォッチの防水性能を支えるシーリング材と組立精度管理

目次
はじめに:スマートウォッチ防水におけるシーリング材と組立精度の重要性
スマートウォッチは今や身近なウェアラブルデバイスとして、多くの人々の生活に溶け込んでいます。
その洗練されたデザインと機能性の裏側で、ひときわ重視されているのが「防水性能」です。
アウトドアから日常使いまで、想定されるシーンは多岐に渡り、水没や汗、雨など、様々なリスクと常に隣り合わせです。
そんななか、防水性能を根底から支えているのが「シーリング材選定」と「組立精度管理」という、製造現場ならではの実践的な技術です。
本記事では、20年以上の製造現場経験を活かして、現場のリアル・昭和から連綿と続く業界のアナログ的実践知・最新の動向など多角的な視点から、スマートウォッチの防水技術を支える舞台裏をわかりやすく解説します。
これから製造業を学びたい方や、バイヤー志望者、サプライヤーの立場から現場を理解したい方にとって、現場目線の知見がヒントとなる内容です。
スマートウォッチ防水性能の基礎知識
なぜ防水性能が重要なのか?
スマートウォッチは、腕時計と同様に常時着用するデバイスであり、使用シーンも多様です。
生活防水はもちろん、プールやシャワー、時にはダイビングなど、用途に応じて求められる防水等級も大きく違います。
一度でも水や汗が内部に入り込めば、基板やバッテリーなどの重要部品の腐食、動作不良の原因となり、お客様からのクレームや品質事故へ直結します。
そのため製造現場において、防水性能の確保と信頼性向上は最重要テーマの一つであり、各メーカーは日進月歩で改良を重ねています。
防水等級「IP規格」とは
スマートウォッチの防水性能は、大抵「IPX7」や「IP68」といったIP規格で示されます。
IP規格は、固体(塵埃)や水に対する浸入防止レベルを段階的に示す世界共通の基準です。
例えば「IP68」は、塵埃が全く侵入せず、水滴への完全な耐性を持つことを意味します。
この高い防水等級を実現・維持するには、内部パーツと外装の隙間・繋ぎ目から水を確実に遮断する「シーリング」と、組立の微細な精度管理が必須です。
シーリング材の種類と選定の現場知見
シーリング材とは何か
シーリング材とは、防水・防塵のために筐体の合わせ面やスイッチ部、コネクター、センサホールなど、外部からの侵入経路となる隙間に充填される樹脂やゴムなどの材料です。
スマートウォッチのような小型精密機器は、外観の小さな窪みや段差さえも水の侵入リスクとなり得るため、その隙間を徹底的に「埋める」「覆う」ことで高い防水性能を担保します。
具体的なシーリング材の種類
製造現場で採用されている主なシーリング材には、次のようなものがあります。
- シリコーンゴムガスケット:耐熱・耐候・柔軟性に優れ、長寿命。耐塩素水や経年劣化にも強い
- 液状ガスケット(シリコーン、ウレタン系):部品合わせ面に塗布し、硬化して隙間を充填。繊細な面貼りも可能
- 両面テープやOリング:部品の着脱性・交換性が高い箇所に活用。メンテナンス性に優れる
- フッ素樹脂やEPDM系:特殊環境への耐性が必要な場合。耐薬品性や絶縁性にも配慮可能
また、近年では「フォームインプレイスガスケット(FIPG)」という、自動塗布ロボットでシーリング材を精密に塗布する量産手法も普及しています。
材料選定のポイント
シーリング材の選定は、単純な防水性能の追求に留まらず、実装面での工法・歩留まり・コスト・部品構造・量産再現性まで複雑な評価・検討が求められます。
例えば、バッテリー部やマイク部などは、密封し過ぎると放熱や音響特性に悪影響が出るケースもあります。
また、小型で薄型な筐体では、ガスケットを厚くできないため、圧縮特性・復元性・長期耐久性が重要となります。
現場では素材選定だけでなく、設計段階から部品形状や締め付け圧の分布をCAE解析するなど、シーリング材の成形しやすさ・密着性・実装性も事前にシミュレーションする取り組みが拡大しています。
組立精度管理の現場ノウハウ
なぜ組立精度が防水を決めるのか
組立ラインでのわずかなズレ、偏り、ボルトの締め不足、パッキンのねじれなど、アナログ的な「作業のバラつき」がそのまま防水性低下やNG流出の原因となります。
防水性は部品自体の性能だけでなく、ミクロな隙間さえ許さない厳格な「組立精度」の管理で初めて実現できます。
昭和から続くアナログ製造現場では、「勘」や「コツ」に依存した職人技術も根強く残っていますが、組立精度が不十分だと、たとえ最高級のシーリング材でもその実力を発揮しきれません。
組立精度管理に必要なポイント
スマートウォッチのような高密度組立品では、次のような精度管理技術が重要です。
- パーツ合わせ面の平面度・寸法公差の徹底管理
- 自動トルク測定器などによる締め付け圧力の均一化
- 部品表面粗さの管理によるシール材密着性の向上
- 画像処理などでのシーリング塗布量・塗布位置の自動検査
- 温湿度管理・静電対策などの作業環境の最適化
高度な自動化ラインを構築する場合、「マイクロ単位での組立ズレ可視化」「AIによる外観検査」などの最新技術も投入されています。
一方で、組立工程の最終人員には微妙なパーツ位置調整、Oリング伸びの見極めなど“指の感覚”も求められるため、従来技術とデジタル化の融合による歩留まり向上も大きなテーマとなっています。
生産現場での組立精度改善事例
例えば、組立精度のバラつきを減らすために、トルク管理工具のデジタル化、自動記録システムの導入によって、ネジ1本ごとの締め付け力推移をリアルタイムに記録し、異常傾向を早期発見しています。
また、シール材塗布ロボットの導入による塗布トレーサビリティ、生産ライン内のIoTセンシングによる温度・湿度のモニタリング、ヒューマンエラーを防ぐポカヨケ装置など、最先端技術の導入も加速中です。
これらの取り組みは、製造現場が品質事故ゼロを目指し、業界全体でシェア拡大競争を繰り広げている証拠です。
品質管理の要:防水検査の最前線
現場で行う防水検査の種類
シーリング材と組立精度が管理された製品でも、最終的な防水品質を担保するには「防水検査」をクリアする必要があります。
よく使われる防水検査は以下の通りです。
- 水没試験:実際に規定時間水中に沈め、漏水・浸水有無を確認
- 気圧加圧・減圧試験:加圧した空気漏れを検知し、ミクロン単位の漏れも測定
- 加温・冷却サイクル耐久試験:熱膨張・収縮によるシール材劣化の追跡
- 美観チェック:シーリング材のはみ出しや塗布ムラの有無確認
現場では、歩留まり・コスト・生産効率の最適化の観点から、全数/抜取り検査のバランス、大量生産時の自動機による高速検査など、その選択眼も問われます。
防水不良の“兆し”を察知する視点
製造ラインでの防水不良は、設計段階から量産、部材納入、現場作業、さらには納品後まで多岐に渡って現れます。
ベテラン現場担当者の“深いラテラルシンキング”、「現場の空気を読む力」が、実は最大の品質維持策であり、設計・調達・現場・検査部門が一丸となりフィードバックループを構築することが肝となります。
例えば、納入部材のロット変動に伴うパッキン寸法差、作業員の交代初期のエラー傾向、シーリング材の経時劣化など、小さな“違和感察知”が大きな品質事故を防ぎます。
昭和から続く「指導員の巡回指導」「現場KY(危険予知)活動」なども、実は現場監督層の貴重な経験値の蓄積と言えるでしょう。
調達・バイヤー・サプライヤー視点:防水性能の確保における役割
調達現場が見るべきシーリング材のポイント
調達(バイヤー)の立場では、防水性を担保するためのシーリング材やOリング、ガスケットなどの信頼性・安定調達性・二次加工性(自社組立との適合性)が最重要となります。
品質認証(ISO、JIS、UL)、供給元のトレーサビリティ、コスト対品質のバランス、災害などリスク管理も求められます。
また、量産中のロット毎の寸法差・物性劣化・ゴムバリ検査など、製造現場との密なコミュニケーション、現場実態に即した“優れた仕様書づくり”こそ、調達部門の力量の証となります。
サプライヤーが押さえるべき現場の要求
シーリング材や樹脂部材のサプライヤーは、単なる「カタログスペック」を超えた“現場目線”での柔軟な提案力が欠かせません。
巷で語られるスペック値ではなく、実際の「組立しやすさ」「色ムラや匂い」「0.01mmオーダーの寸法安定化」など、ものづくり現場固有の要求への迅速な対応が信頼構築となります。
また、設計変更・組立工程改善にもすぐ連携できる「現場力」、トラブル時の即対応、試作段階の協業体制、技術資料や品質データの即時提供など、サプライヤー側の能動的な巻き込み姿勢が長期取引の決め手となります。
まとめ:スマートウォッチ防水は「現場総合力」への挑戦
スマートウォッチの防水性能は、設計・材料選定・組立施工管理・品質検査・調達サプライチェーンが一体となる「現場総合力」の結晶です。
シーリング材や組立精度・検査に込められた多くの知恵と工夫は、アナログ手法の良さと最新デジタル技術の融合によって、日々進化し続けています。
現場を知る立場から「一見地味でも、全ての精度が揃って初めて製品信頼性は生まれる」こと、それをこそ誇りに思い共有したいと考えます。
製造業に携わる皆様、今後バイヤーを目指す方、サプライヤーとしてお客様の真の要求を知りたい方に、本記事がより深い「現場理解」の一助となれば幸いです。
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