投稿日:2025年11月2日

ベビー服の肌当たりを良くするための縫い代処理と糸テンション

はじめに:ベビー服に求められる「肌当たり」の重要性

ベビー服は大人の衣類と異なり、「やさしく、やわらかく、刺激がない」ことが大前提です。
なぜなら、赤ちゃんの肌は大変敏感で、ちょっとした刺激や違和感でも、かぶれや赤みなどの肌トラブルにつながる可能性があります。

そのため、ベビー服を製造する現場では「縫い代処理」や「糸テンション(糸張力)」など一つ一つのプロセスで、より高い配慮と技術が求められます。
本記事では、実際の工場現場で長年得た知見と実践ノウハウを交え、どのようにして“肌あたり”を良くするのか、その肝となるポイントを掘り下げて解説していきます。

ベビー服縫製の現状と課題

アナログが根強く残る縫製現場

製造業全体がデジタル化の波にさらされる中、縫製業界は今もアナログ要素の強い作業が色濃く残っています。
特にベビー服の縫製は自動化だけでは実現しにくい“人の手による微調整”が要であり、職人の技術と感性に重きを置いた工程が多いのです。

例えば、縫い目の“わずかな段差”がベビーの肌にどう影響するか、糸を引き締める力加減をどうするか──こうした部分は経験則や現場感覚が大きくものをいいます。

バイヤーが特に重視する「縫い代処理」

ベビー服を扱うサプライヤーが品質面でまず問われるのが、“縫い代の処理”です。
バイヤーがサンプルチェックにおいて、最初に手で触れるのも実はこの部分です。

縫い代がごわついていたり、縫い目の端が肌に当たる作りになっていると採用されにくくなり、下手をすると取引自体が難しくなります。
また、リピート発注やOEM開発を受けるためには、“見た目の美しさ”だけでなく“着心地のやさしさ”を両立することが肝要です。

縫い代処理の種類とベビー服での最適解

代表的な縫い代処理法

現在、ベビー服でよく使われる縫い代処理には次の手法があります。

  • ロック巻き(オーバーロックミシン仕上げ)
  • パイピング(縁取りテープくるみ)
  • 伏せ縫い(二重縫い/折り伏せ縫い)
  • 袋縫い(生地の中に縫い代を包み込む)

それぞれに長所短所があり、コストや量産性、着心地、そしてデザイン性の観点から工場やブランドごとに“こだわり”が活きるポイントです。

現場で推奨されるベビー服の縫い代処理

現場経験からいえば、最も肌当たりがやさしいのは「袋縫い」と「パイピング」の組み合わせです。
袋縫いにした場合、生地の間に縫い代が完全に隠れるため、赤ちゃんの素肌に硬い縫い目が直接触れることがありません。

一方、パイピングはデザイン的なアクセントにもなります。
ただし、パイピングテープの質や幅、巻き具合によって硬さが変わるため、極力“やわらかな綿素材”を薄く加工したものがおすすめです。

大手バイヤーが仕入れる基準としては、「できるだけ縫い代が表側や裏側に露出していない」仕上がりを強く求める傾向があります。

ロック巻きだけでは不十分な理由

量産性やコスト重視で使われやすい「ロック巻き」は、実はデメリットもあります。
糸端のほつれはカバーできますが、表面の凹凸が手触りで伝わりやすく、ベビーの柔らかい肌には刺激となる場合が多いのです。

また、ロックミシン自体の糸テンションが強すぎたり、縫い目が厚手になると、ますます“ごわごわ感”が出てしまいます。
このため、必ず“肌に当たる側”を指でなぞってチェックし、違和感があれば追加でパイピングや袋縫いに加工するひと手間が理想です。

糸テンションの管理が肌当たりを左右する理由

糸テンション(糸張力)の基本と現場評価

糸テンションとは、縫製時にミシンの上糸と下糸の張力を調整することです。
ベビー服では、糸テンションが強すぎると、
生地に“食い込み”が生まれ、
硬い縫いあとが肌と擦れるリスクが高まります。

逆に、緩すぎると縫い目がほつれやすくなり、耐久性が低くなるだけでなく、洗濯時の型崩れや安全性の懸念も生じてしまいます。

実践現場での糸テンション調整ポイント

現場では、実際に縫い上がったサンプルを「曲げてみる」「ねじってみる」など手で触ってみることが基本動作です。
この“触覚検査”によって、縫い目が固すぎず、薄くしなやかに仕上がっていれば理想的です。

ベビー服の場合、あえて糸テンションをやや緩めに設定することが多いです。
これは、多少伸び縮みする縫い目にすることで、
赤ちゃんが動いたときにステッチが生地に追従しやすくなるためです。

また、伸縮素材(天竺など)を用いるケースが多いベビー服では、伸びた際の縫い目のつっぱりや糸切れがないかまで加味した調整が必要です。

自動化と経験値のハイブリッド

最新のミシンには自動糸テンション調整機能が搭載されています。
ですが、まだまだ現場職人の「指先感覚」による微調整には及ばないのが実情です。

特に、同じ商品でも生地ロットごとに糸滑りや伸縮率が違う場合、
最終的には現場のリーダーや検品担当による“実地チェック”が不可欠です。
サプライヤーとしてバイヤーの信頼を勝ち取るには、「自動化+人の目・手」の両立を怠らないことが差別化のカギとなります。

アナログ業界に学ぶ:現場力を高めるヒント

現場共有とノウハウの可視化

アナログが色濃く残る縫製現場では、「この感触、この目加減」という老練な技術者の経験が、若手にうまく伝わらず属人化しがちです。

そこで製造現場でおすすめしたいのが
「縫いサンプルとコメント付き写真のセット管理」
「仕上がりイメージを手触り、厚みごとに分類、明文化」
「失敗事例の共有と再発防止ノートの運用」
といったナレッジ共有手法です。

これらは現場の改善提案や技術継承に役立つだけでなく、バイヤーに対しても「うちは管理基準が高い」とアピールする武器になります。

品質管理=最終工程だけではない

現場目線で強調したいのは、「品質管理は検査工程だけの問題ではなく、最初の裁断から糸セット、仮縫いに至る全てのプロセスと一体」であるという考え方です。

特に、糸テンションなど“見えない品質”は、最終検品だけでの判別が難しい場合が多いです。
だからこそ、流れ作業の途中で連携と気づきが生かせる現場改善活動が大切です。

バイヤーの視点:ベビー服サプライヤーに望むこと

大手バイヤーがサプライヤーを評価する際、「肌あたり」の良し悪しは数値だけでなく、必ず「自分でさわって確かめる」審査項目です。

また、仕上げや洗濯試験後の毛羽立ち、縫い目の変化までチェックする企業も増えています。
そのため、サプライヤー側からも「どんな素材、どんな縫い方、どんな糸テンションで製造したか」を根拠として提出できると、バイヤーとの信頼関係はより深まります。

まとめ:新たな品質基準を現場主導で築こう

ベビー服の製造において、「縫い代処理と糸テンションにどこまでこだわるか」は、まさに現場力・管理力が問われるところです。

昭和的な“当たり前”は決して無意味ではなく、そこにデジタル化やナレッジ共有の力を掛け合わせることで、ひと味違う品質を打ち出すことができます。

バイヤー志望の方、サプライヤーの立場でバイヤー心理を知りたい方、現場の改善リーダーを目指す方は、今回紹介したノウハウを自職場でぜひ活用してください。
肌あたりの良いベビー服づくりは、小さな赤ちゃんだけでなく、その家族やブランドイメージにまで優しさを届ける大切なものづくりです。

未来のスタンダードとなる“やさしい”製造現場を、私たちの手でつくり上げていきましょう。

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