投稿日:2025年8月8日

シートベルトエクステンダーOEMが航空各社互換ピン+難燃ポリエステル

シートベルトエクステンダーOEMが航空各社互換ピン+難燃ポリエステルとは

シートベルトエクステンダーOEMとは、航空機向けのシートベルト用延長アダプターを、航空会社などの顧客向けに相手のブランドや仕様に合わせて設計製造するビジネスモデルを指します。

特に航空分野では「各社互換ピン」と「難燃ポリエステル」という2つのキーワードが製品品質や安全性、調達管理で重要な意味を持っています。

では、なぜこの2つが選ばれるのでしょうか?

また、アナログな現実が色濃く残る航空機業界の調達現場で、どのような経営判断や購買の論理が働いているのでしょうか?

今回は、長年製造現場と調達業務に携わった筆者の視点から、最新の動向と業界の本質を深掘りし、OEMメーカー・バイヤー・サプライヤー双方の目線で考察していきます。

なぜ“航空各社互換ピン”が必要なのか

互換性=ビジネスの拡張性

航空業界は安全基準に非常に厳しく、部材や部品ひとつを変更するにも認証や承認の手間が掛かります。
各航空会社によってわずかに異なるシートベルトの仕様に合わせて複数種を調達するのはコストや在庫管理、運用上の大きな負担になります。

こうした現実を踏まえ、OEMメーカー側は主要航空各社に対応可能な「互換ピン」仕様を標準提案する流れが生まれました。

「どのエアラインの座席にもマッチする汎用デザインで勝負する」ことは、OEM供給先の拡大=ビジネスの継続と直結します。

機種更新・リース機混在など複雑な車両事情を持つ航空会社にとっても、
「どのシートにもとりあえず付け替えできる安心感」は大きなメリットです。

現場では“合わない”トラブルが絶えない

実際の整備・運航の現場では、利用頻度の低いエクステンダーも、国際線や多様な乗客対応で急に必要になる状況があります。
その時、ピン部分が微妙に違い使えない… といったトラブルが起きると、安全運航や顧客満足の観点からも大きな問題です。

このような現場の声こそ、「各社互換性」に重きをおく購買担当の意図を強く後押ししています。

既存アナログ系統が根強い航空業界では「前から使っているから何となく」採用しているレガシー品が多く残っています。
しかし、働き方改革や運営の効率化が進む中、汎用品へのシフトは今後一層強まるでしょう。

なぜ“難燃ポリエステル”なのか

エビデンス重視の安全設計

なぜ難燃ポリエステルが求められるのでしょうか?
航空機素材に求められる最大の特徴は“燃えにくい”ことです。
火災時の延焼リスクを最小化し、乗客の安全な避難確保を最優先するためです。

難燃性ポリエステルは、高い引張強度や耐久性を持ちながらも、国際的な難燃試験(FAR25.853など)をクリアできる素材です。
しかも、供給の安定性やコストパフォーマンスの面でも有利なため、多くのOEMや部材メーカーで標準採用されています。

品質保証のための「ラベル管理」と「トレーサビリティ」

航空業界の顧客は、OEMメーカーに対し「この材料が本当に難燃である証拠」を文書・デジタルで常に求めてきます。
エクステンダーでも「ラベルの有無」「材料ロットの追跡性」「ISO・JIS等の試験成績書」の整備が必須です。

実際の長期運用において、調達側の現場担当者は
「いつどこでどのロットを誰が納品し、最終的にどのお客様に何本使われたのか」
を正確に把握できる仕組み作りに苦心しています。

このアナログとデジタルの狭間で、いかに簡便な管理・運用フローを練り上げるかが、バイヤーや製造現場の力量として問われるポイントです。

OEM・サプライヤー現場の「リアル」を知る

小ロット多品種、在庫の壁

シートベルトエクステンダーは滅多に使われない一方、いざ必要な時には十分な数が迅速に求められる“隠れた重要品”です。
発注サイクルが長く、在庫の持ち方次第では「予算消化」「経年劣化」の問題も浮上します。

OEMメーカーとしては、小ロット・多品種・規格のブレといったカスタム要求を「どう標準化し利益を作るか」が腕の見せ所です。
営業マンと購買担当の泥臭いやり取りが現場では今なお主流です。

“信頼”は仕入れ現場と現場作業員の間で生まれる

OEMメーカーの営業/技術担当者にとって、航空会社の現場(整備士や設備管理者)との地道なコミュニケーションが不可欠です。

「この品物は使いやすい」「管理がラク」「万が一破損しても交換手配がスムーズだ」
といった日常の安心感が、10年20年に渡る継続受注の鍵となります。

また、現場ニーズを拾い上げた意見開発者=調達部門が、サプライヤー評価や価格交渉の主導権を握る構造は、アナログ志向の強い航空業界ならではの伝統的な購買スタイルと言えるでしょう。

バイヤー視点で「真の調達価値」を考える

供給の安定性とリスク分散

近年のコロナ禍や国際情勢の変化により、サプライチェーンの混乱が繰り返し起こっています。
航空エンターテインメント装置や内装パーツが納入遅延する例が目立つ中、シートベルトエクステンダーも例外ではありません。

賢いバイヤーは“価格比較”だけでなく、
・冗長化した調達ルートの提案
・予備部材の確保
・材料調達~製造~納品工程までのリスク管理
といった広範な視点でサプライヤーを評価しています。

二つの“見えないコスト”を意識する

①現場手間コスト:
使いにくい製品やバリエーション違いによる混乱は、現場の時短・効率化を妨げ、見えないムダを生みます。
②証跡管理コスト:
難燃性証明やラベル管理の手間も、IT化の流れと逆行する部分が多く、調達部門に負担が蓄積します。

「現物の信頼性」「書類/証跡管理の容易さ」「サポート体制の安定感」は、調達現場で真剣に選ばれる“隠れた決め手”となるのです。

サプライヤーが“選ばれるOEM”になるヒント

1. 顧客の悩みを設計段階から理解する

単なる安売り業者で終わらず、“航空各社の現場担当がどんなニーズで困っているか”を深く分析しましょう。
座席更新やFA(Factory Automation)の波を見越し、将来的に「互換ピン」「難燃素材」以外の新要件が登場する可能性も見据える観察眼を持つことが重要です。

2. 高度なトレーサビリティ構築を提案する

バーコード管理やデジタル証明書発行など、現場の管轄負担を“ITで可視化・軽減”する発想が今後不可欠になります。
これは単なる附帯サービスでなく、これからの競争力の源泉です。

3. 製造現場の改革も怠らない

どんな優秀な営業も、現場(生産の現場・検査の現場)が「昔ながらのやり方」に固執していては、調達競争に勝てません。
調達・生産管理・工程設計・品質保証まで、部門横断で全体最適(コスト・納期・安全性)を追求する組織体制を目指しましょう。

まとめ:これからのOEMと製造業に必要な“たった2つ”の原則

シートベルトエクステンダーOEM製品が「航空各社互換ピン+難燃ポリエステル」を基本とする時代、
製造現場も調達現場も、“本当の価値”にどこまで徹底的に向き合えるかが勝負の分かれ目です。

ひとつは、現場(整備・乗務員・エンドユーザー)の声を“構造的に聞く仕組み”を作ること。
もう一つは、それを基に現場も管理部門も納得できる“スマートな運用(管理/証跡/流通)”を共に設計することです。

両者の知恵と工夫、そして地道な改善の積み重ねが、淘汰の激しい航空機部材OEM市場で、
次の10年をサバイブするためのカギなのです。

今後のOEMサプライヤーには、アナログな現場力とデジタル思考を両立しながら、現場起点の価値創出を極めていく“知恵と誇り”が求められるのだと言えるでしょう。

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