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投稿日:2026年1月30日

セキュリティソリューション強化がコネクティッド・カー開発を遅らせる場面

はじめに:コネクティッド・カーとセキュリティの最前線

コネクティッド・カーは、クルマがネットワークに常時接続することで様々なサービスや機能を実現します。
スマートフォンによる遠隔操作、渋滞・道路情報のリアルタイム取得、OTA(Over the Air)によるソフトウェアアップデートなど、かつてない利便性と機能をドライバーにもたらしています。

しかし、この進化と表裏一体を成すのが「セキュリティ対策」の強化です。
クルマがネットワークに繋がるということは、つまり「ハッキング」や「サイバー攻撃」の脅威に常にさらされることになります。
自動車の走行安全や情報漏洩、果ては人命に関わる問題へと発展する可能性があるため、セキュリティ対策強化は業界全体の最重要事項となりました。

しかし、昨今のセキュリティソリューション強化が、結果的にコネクティッド・カー開発のスピードを遅らせてしまう場面も増えています。
本稿では、昭和的な現場感覚と現代的な視点を交えながら、調達・生産・品質・現場全体がどのような悩みを抱え、今後どのようにバイヤーやサプライヤーが協力しあい“新たな地平線”を拓いていくべきか、深く掘り下げていきます。

コネクティッド・カー開発の進展と現場の変化

コネクティッド・カー開発は、従来の自動車開発に比べて「IT/ソフトウェアウェイトの増大」「多層的なサプライチェーンの構築」「法規対応の複雑さ」といった特徴があります。
もはや単なる“モノづくり”の現場ではなく、“コト”すなわちサービスやデータセキュリティも含めて全社を挙げた体質変革が迫られています。

車載セキュリティと“昭和の設計・評価”の断絶

かつての自動車設計では、ワイヤーハーネスとECUを物理的に“つなぐだけ”で良かった時代が長く続きました。
しかし、コネクティッド・カー時代においてはマイコン、ストレージ、無線通信モジュール、センサー等あらゆるものがインターネットや外部システムと“つながる世界”へと様変わりしました。

その結果、現場は「既存の評価手法では不十分ではないか?」「これまで無関係だったIT知識が必須化した」といった戸惑いに直面しています。
昭和から脈々と受け継がれた“手触りのある現場感”と、抽象度が高い最新のセキュリティ技術がうまく噛み合わず、開発現場の混乱を呼んでいるのが実態です。

サプライチェーンの新たなリスクとペインポイント

製造業にとって調達の現場でも“見えないリスク”が急増しています。
部品・モジュールサプライヤーがグローバル化し、多層階のサプライチェーンが構築されています。
そこに脆弱性が仕込まれてしまうと、「部品一点の脆弱性」が「全世界数百万台の脆弱性」に直結します。

バイヤー(調達担当者)は、従来の価格・納期・品質だけでなく「サイバーセキュリティ要件」が加わり、重層的な評価・選定を迫られています。
一方、サプライヤー側はセキュリティ標準への対応、人材教育、追加開発負担などが増加し、スムーズな供給や新技術採用のスピード感が損なわれつつあります。

なぜセキュリティ強化が開発のスピードを遅らせるのか?

では実際なぜ、セキュリティソリューション強化がコネクティッド・カー開発を遅らせる主因となるのでしょうか。
現場で起こっている「典型的なシーン」を紐解いていきます。

1. 要求仕様が増える、複雑化する

セキュリティ要件は、一つ一つのシステム、サブシステム、通信インターフェースごとに個別に設定する必要があります。
たとえば「通信プロトコルの暗号化」「ファームウェアの有効性確認」「OTAアップデート時の認証」「外部ネットワーク区分管理」など、求められる仕様が膨れ上がります。

このセキュリティ要求を満たしているか確認するため、設計段階で何度もレビューが行われ、開発の手戻りや「やり直し」が多発します。
さらに欧州・北米・中国など各市場ごと法規や標準も違うため、一部の車種では市場ごと開発プロセスを分けざるを得ません。
これがプロジェクトの遅延を生む大きな要因となります。

2. サプライヤー間の情報連携・管理コストの増大

セキュリティの観点からは、“サプライチェーン全体”の安全が不可欠です。
そのため、Tier1(主要な一次取引先)だけでなく、各サブサプライヤーとの間で「安心できる証明書」「脆弱性評価レポート」「対策実績」の提出を求めるケースがほとんどです。

現場レベルでは、この追加資料のやりとり、既存部品差し替えの許諾申請、各種法規に合わせた認証対応など、目に見えない膨大な書類・情報管理作業が発生しています。
その分だけ意思決定や購買判断が遅れ、量産立ち上げにも支障をきたします。

3. 設計変更の頻発と品質保証工数の増加

「セキュリティホールが新たに発見された」「サイバー攻撃手法が高度化した」という理由で、開発途中に設計変更が強いられるケースが増えています。
これらの仕様変更は、ソフトウェアやファームウェアのみならず、ハードウェアの追加対策、機構設計の見直しにも波及します。

その度にサプライヤーへの図面再発行、試作品の再検証、品質保証プロセスのやり直しが求められます。
これにより、現場の手間・コストが激増し、「昭和的な現場主義」が逆に仇となるケースさえ見受けられます。

現場で工夫できること、バイヤー・サプライヤーが取るべき視点の転換

こうした状況下でも、現場目線・昭和的な知恵とラテラルシンキングの融合で「新たな突破口」を見出すことはできます。

“セキュリティ・バイ・デザイン”の思想徹底

セキュリティを「後追い」で考えるのではなく、開発初期から“織り込んで設計する”ことが不可欠です。
バイヤーはサプライヤー選定時点から「セキュリティ設計力」や「サイバーインシデント対応体制構築」を重視しましょう。
サプライヤー側も、自社開発体制内でセキュリティ設計力の底上げ、人材教育を進め、バイヤーと『共通言語』でのやりとりができる準備をしておくことが重要です。

現場間の“タテ割り意識”打破と、横断的なコミュニケーション構築

セキュリティ対応は、設計、調達、品質、生産、IT、全ての部門横断で対処するものです。
従来の「各部門バラバラ」で進めてきたやり方を捨て、初期から横断的ワーキンググループなどを設置することが、結果として開発の手戻り防止、全体納期短縮につながります。
昭和的な“現場中心主義”にこだわりすぎず、新しい風と現場知見の融合が生産性向上のカギとなります。

国内外規格・法規インテリジェンスの共有・標準化

セキュリティ項目の多くは、「ISO/SAE 21434」や「UNECE WP.29」といったグローバルな標準規格で定められています。
また各国ごとに追加要件や解釈の違いがあります。
バイヤーもサプライヤーも、国内外規格の情報を共有し、ナレッジベース化しておくことで、仕様追加や設計変更時も迅速に対応できる基盤を整えましょう。

今後の展望と、製造業が目指すべき“新たな地平線”

コネクティッド・カーは、これからの製造業に“ゼロデイ脆弱性”との闘い、“セキュリティbyデザイン”への構造転換、そしてグローバル競争の只中で安全性・信頼性を制した企業が勝利すると言っても過言ではありません。

製造現場の「昭和から脈々と続く泥臭い経験主義」と、現代的な「DX・セキュリティエンジニアリング」。
この両輪をうまく噛み合わせ、現場力×テクノロジーで“開発スピード”と“セキュリティレベル”の最適バランスを見つけ出すことが問われています。

バイヤーは油断せず、リスクを先読みした購買活動を。
サプライヤーも、“楽をして受注し続けられる時代”は終わったことを認識し、「安心して預けられるパートナー」へと進化することが必要です。

日本のものづくり現場が、さらなる進化を遂げるためにも、「セキュリティ強化が開発を遅らせる」現実から目を背けず、ラテラルシンキングと現場知見のハイブリッドで新たな答えを探していきましょう。

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