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「長く勤めれば偉い」とする昭和の価値観が組織を腐らせる課題

目次
はじめに:昭和的価値観が今の製造業にもたらす影響
「長く勤めていれば偉い」という価値観は、日本の製造業を支えてきた側面がある一方、令和の時代において組織活力を奪う根深い課題ともなっています。
今日も現場では、経験年数や年齢による序列が根強く残っている企業が多く、その影響が調達購買、生産管理、品質管理、そして工場の自動化のすべての領域に波及しています。
工場現場の視点から、この根の深い「昭和マインド」が何をもたらし、これからの製造業が進むべき道とどのように向き合うべきか、現場目線で実践的に解説していきます。
昭和型の年功序列のルーツと美徳
組織の骨格を作った背景
戦後日本の復興期、人材流動性が低かった時代には、一つの職場で長く働き、スキルを身に付けて役職を担うことが企業の強みでした。
「石の上にも三年」という言葉にも代表されるように、技術習得には時間がかかるものでしたし、一定期間勤め上げることそのものが「信用」とされてきました。
技能継承と熟練の時代
指導者から見習いへの、いわゆる「職人技」の継承を重視したこの風土は、生産現場において安定した品質や納期遵守を実現するうえで一定の合理性がありました。
時代背景とマッチしていた点は否定できません。
年功序列主義が組織にもたらす実態と弊害
意思決定の遅さと現場力の弱体化
技術が高度化し、市場変化が激しい今、年功序列的な序列やタテ社会は意思決定を遅らせる主因となっています。
現場で働く若いバイヤーやエンジニア、現場スタッフが良い提案をしても、「お前はまだ早い」と黙殺されてしまう場面を幾度となく見てきました。
これでは俊敏な改善活動や、意欲的なチャレンジが現場から生まれません。
また、形式的な報告や根回しに時間を取られ、スピード感ある対応が求められる現代の製造業では競争力の低下につながっています。
「長く勤めた人」が必ずしも優れた人材ではない
経験年数が増えても、意欲や柔軟性、情報感度は必ずしも上昇しません。
むしろ「これまでもこうやってきた」という固定観念を強め、自動化やDXを推進する際にもっとも強い抵抗勢力となることが多いです。
時代変化の受容よりも「従来通り」を貫くことで、若手や中堅のやりがいを損ない、人材の流出、閉塞感を生み出す温床にもなっています。
見えづらい現代の「昭和的」上司の影響
パワハラや指示待ち体質の温存、「失敗するな」「波風を立てるな」という無言の圧力。
意見を出し合えるはずの会議でも、本音が語られにくいムード。
IT導入やサプライヤー変更のような大きな意思決定に、現場が協力的になれないことも、こうした目に見えない昭和的風土の弊害です。
今も根強く残るアナログ文化とカルチャーショック
紙とハンコが残る現場の象徴
製造現場はいまだに紙の帳票やスタンプラリーが当たり前の世界が残っています。
調達購買でも、見積もりや受発注、検収作業は、ほとんどが対面説明と紙ベースで回っている工場が珍しくありません。
IT導入や生産管理システムへの移行を提案しても、「今までもやってこれたから」と一蹴され、新しいツールや効率化アイデアは取り入れられにくい実情があります。
「顔見知り重視」の商習慣の根深さ
バイヤーとして現場に立つと感じるのが、「長く付き合っているサプライヤーが優先される」という空気です。
価格や品質以上に「人間関係」や「情」が重視されがちな文化は、ある種の安心感をもたらす半面、他社との比較検討や新規取引を難しくしています。
最適調達やコストダウンを目指す若手バイヤーにとっては、大きな壁となりかねません。
これからの時代に求められるバイヤーと現場マネジメントの思考
多様な価値観とフラットな組織文化の重要性
新たな創造や改善は「違和感」や若い発想から生まれるものです。
経験年数や年齢だけで価値を決めるのではなく、「課題発見力」「情報収集力」「コミュニケーション能力」「成果へのコミット」――こうしたスキルで人物評価がされる現場づくりが急務です。
バイヤーも調達力だけでなく、現場の課題に真摯に耳を傾け、サプライヤーとのオープンな関係構築、ITツールの導入推進役となることが求められます。
サプライヤーと対等なパートナーシップへ
昭和から続く「お得意様」的上下関係から脱し、サプライヤーにも率直に困りごとを打ち明けたり、現場同士で共通の課題をシェアできる風土が必要です。
視座を上げて「同じチームで共に価値を生み出す」という意識を持てれば、不要なルールや儀礼的な手順も見直しやすくなります。
現場主導の実践的業務改善を回すコツ
何事もまず現場から小さく始め、多様な意見を受け入れる土壌作りが第一歩です。
紙帳票のデジタル化や調達プロセスの自動ワークフロー化なども、小さな範囲でトライし、効果や課題を現場自身でフィードバックする。
その声を直接、経営層やマネジャーが吸い上げて実装につなげる仕組みが、組織全体の体質強化に不可欠です。
昭和の価値観から抜け出すための現場リーダーの取り組み
まず「なぜ今これを変える必要があるのか」を言語化する
変革には現場の納得感が欠かせません。
「世の中が変わったから」と言うのではなく、自社の事業環境や取引先、市場ニーズの変化を具体的なデータやストーリーで語ることが重要です。
「なぜ今まで通りではいけないのか」「現場の負担軽減や成長につながるのか」をリーダー自ら明確にし、現場の共感を得る努力が必要です。
若手からベテランまで互いに学び合える土壌づくり
意欲ある若手には思い切った権限移譲と新しいプロジェクトの機会を。
ベテランにはこれまでのノウハウや人脈、現場感覚を惜しみなくシェアしてもらい、ともに現場を変える参謀役となってもらう。
ダイバーシティではなく「インクルージョン」――誰もが主役になれる風土がカルチャー変革の原動力です。
サプライヤー目線で考える「バイヤーの本音」と今後の調達
調達戦略のトレンドと期待されるマインド変化
サステナビリティ、SDGs、BCP(事業継続計画)意識の高まり。
価格や納期だけでなく、安定供給・共創・リスク分散が重視されつつあります。
サプライヤーとして重要なのは、「言われた通り」から一歩踏み出して、バイヤーが困る前に柔軟な提案や問題解決に積極的に関与する姿勢です。
現場のバイヤーは今、変化を求めています。その思いを汲み取ることが競争力アップにつながります。
サプライヤーに求められる姿勢と具体的アクション
情報共有や改善提案を積極的に行い、困りごとやリスクを早めに伝える。
取引先主導であっても「このやり方はもっと良くできるのでは?」と提案し、関係を深化させる。
バイヤーも、サプライヤーからの声にしっかり耳を傾け、パートナーシップの深化を目指す。
これが昭和的なしがらみを超えてサプライチェーン全体に新しい価値を生み出します。
まとめ:製造業の新たな地平線を共に切り拓くために
「長く勤めれば偉い」「これまで通りが一番」という価値観が、今、日本製造業の進化を妨げています。
過去の積み重ねは大切ですが、それに縛られることで現場力が弱まり、若手は失望し、サプライチェーンの競争力が低下しています。
年齢や年数にとらわれず、多様な人材が互いの価値を認め、柔軟な発想でものごとを変えられる風土こそ、これからの製造業の強さです。
一人ひとりが、「なぜ変わる必要があるのか」「どうすれば現場がもっと生き生きするのか」を問い続け、新しい方法やチャレンジに寛容であってほしいと願います。
バイヤーもサプライヤーも現場リーダーも、昭和カルチャーの良さを活かしつつ、変化を恐れず組織変革の旗手となることで、新時代の製造業を力強く切り拓けると確信します。
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