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スカートのウエストゴムの戻り率を高める縫製と素材選定の工夫

目次
はじめに:ウエストゴムの「戻り率」がもたらす顧客満足への影響
スカートのウエストゴムは、見た目には目立たないパーツながら、「快適さ」や「フィット感」に大きな影響を与える重要な部位です。
特に、ウエストゴムの戻り率は着用感の持続性を左右するポイントであり、ここを疎かにすると、短期間でだるんだるんに伸びきってしまったり、ウエストのフィット感が損なわれ、着用者の満足度が著しく下がります。
また、返品やクレームといったコスト増大にもつながりかねません。
今回は、生地やゴム素材の選定、縫製技術など現場経験で培った知見をベースに、古き伝統が根付くアパレル工場ならではの課題と、現場目線でできる“ウエストゴムの戻り率”向上に向けた工夫を解説します。
戻り率とは:なぜウエストゴムは伸びてしまうのか
ウエストゴムの「戻り率」定義と現場での重要性
「戻り率」とは、ゴムが伸縮した後、元の長さ・形状にどれだけ忠実に復元するかを示す数値(%)です。
工場の現場では、「何回着てもウエストが伸びきらないスカート」「繰り返しの着脱に耐えるか」といった観点で非常に重視されます。
戻り率が低い製品は、一度伸びきると縮まらず、着用者にとっての不満や品質クレームの主要因となります。
昭和時代から抜け出せない「アナログ素材」への依存
実は、多くのアパレルOEM工場や縫製現場では、いまだに「昔ながらのゴムバンド」や「非機能性のポリエステル混ゴム」など、進化の止まった資材を使い続けているケースが多くあります。
これは「大量ロット管理が容易」「コストが読める」という調達視点もありますが、現場力を鍛えるどころか製品品質の足かせとなっている現状を無視できません。
理想のゴム素材選定:従来素材から最先端へ
天然ゴムvs合成ゴム:耐久性とコストのトレードオフ
昭和の高度成長期から続いた定番は、安価な天然ゴムやカバーリングコアヤーンを駆使した平ゴム・丸ゴムです。
しかし、天然ゴムは変質・劣化・伸び癖が早く、「戻り率」を維持するには不向きな場合が多いのです。
一方で、合成ゴムやポリウレタン(スパンデックス)は耐久性・形状保持力で圧倒的に優れており、欧州ハイブランドなどでは積極的に採用されています。
コスト差はあるものの、長期的なリピーター獲得やブランド価値向上には、合成ゴムの比率を上げることが賢明と言えるでしょう。
「カバーリング」と「芯材化」技術で差がつく
最新トレンドでは、ゴム繊維自体にコットンやナイロン糸を細密にカバーリング(被覆)し、美しい光沢、表面滑りの良さ、耐モケモケ(ピリング)性能が飛躍的に向上。
さらに、ゴム紐の中心に高弾性ポリエステルや2WAYポリウレタンを芯材化させた複合型ゴムも登場しています。
これらはアナログ工場でも入手可能になってきており、“いつもの平ゴム”から脱却できるチャンスです。
縫製現場視点:ゴムの性能を100%発揮する縫い方とは
従来のミシン縫製がもたらす「ゴム切れ」「部分伸び」の原因
よくあるトラブルの一つが「縫い目からゴムが出たり切れたり」、「ウエスト周りの一箇所だけ極端に伸びきる」といったもの。
これは主に、ゴムと生地を同時にミシン縫製する際に“ゴムを引っ張りすぎたまま”縫製してしまうためです。
特に工場のラインでは、「1日に100着以上」というスピード重視ゆえ、どうしてもテンション(張力)のバラつきや、ゴムのよじれを見逃しやすくなります。
簡単にできる現場の工夫:割り印・均等しごき・低張力縫製
現場で今すぐ試せる方法として、まず「ウエスト布」と「ゴム」の接合部に均等割り印(マーク)をつけ、全周でテンションが均等になるよう事前に“しごき”をかけます。
さらに、ミシンの押さえ圧や糸調子も標準よりやや緩めに設定し、縫いズレやゴム切れを防ぐことが重要です。
経験豊富な現場では「手しごき(ウエスト全体を4等分してゴムを一度仮留め)」など、熟練の工夫が生きています。
環縫いやカバーステッチによる固定強化
ウエストゴムの“戻り率”を更に高めたい場合、単純な直線縫いだけでなく「環縫い(ループ状)」や「カバーステッチ(裏面も糸が絡む)」を活用することで、生地とゴムの密着力が向上し、型崩れを防止できます。
特に、ジャージーやニット系素材との相性が良く、スポーツウェア大手メーカーなどでも重宝される技術です。
サプライヤー・バイヤー視点:コストと品質、その先の顧客価値
「コスト抑制」だけでは持続的な品質向上は難しい
現場では「できるだけ安いゴムを」との声が根強いですが、長期的なブランド力向上やリピーター獲得には“目先のコストより、製品パフォーマンス”のバランスが大切です。
バイヤー目線では、単価だけでなく「耐洗濯試験後の戻り率」や「耐加重(繰返し伸縮)試験」など実データを付けてくるサプライヤーを選ぶことがトラブル防止につながります。
工場現場とバイヤーが対話すべきチェックポイント
・ゴム素材の“ロット毎”の品質保証はあるか
・縫製仕様書が現場の実情(熟練度・機械設備)に落とし込まれているか
・現場リーダーや技術者との直接意見交換を推奨
こうした「現場と購買のリアルな連携」が戻り率トラブルを激減させ、サプライヤー側も“価値提案型”として評価されやすくなります。
今こそ昭和の縫製文化から進化を
私は二十数年、伝統的なミシンと格闘しながら、多くの現場で“品質クレーム”と“製造原価”のバランスを追求してきました。
歴史ある工場では、今も「昔ながらの方法」を重んじる傾向が強いですが、グローバル市場やサステナビリティの潮流が押し寄せる現代においては、素材技術・縫製技術双方の最新版を積極的に学び・導入することが必須です。
また、「お客様の満足(快適なフィット感)」に焦点を当て、“現場目線”で試行錯誤を重ねることで、継続する品質の底上げとコスト効率の両立が必ず実現できます。
まとめ:実践的な改善の積み重ねが、業界の未来を変える
スカートのウエストゴムの戻り率を高める取り組みは、「地味」かもしれませんが、着用者にとっては毎日の満足度を左右する、最重要ファクターの一つです。
伝統と変革のはざまで模索する製造業の皆様こそ、細部へのこだわり(素材選定・縫製工夫・現場の知恵)をアップデートし、他社との差別化・顧客からの愛着醸成へとつなげていきましょう。
昭和から令和へ。
ウエストゴムの“戻り率”が問われる今、その一着にこめる情熱が、業界全体の未来をも豊かにしていきます。
実践的な改善提案や新技術の導入アドバイスをお求めの方は、現場経験豊かな専門家へのご相談、ご質問もぜひご検討ください。
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