投稿日:2025年11月7日

パジャマのゴムウエストがねじれないための縫製とテンション管理

パジャマのゴムウエストがねじれないための縫製とテンション管理

パジャマのウエスト部分に使用されるゴムは、着心地やフィット感を大きく左右する重要な部品です。
しかし、家庭や現場から最も多く寄せられる不満のひとつが「ゴムがねじれる」「着用や洗濯のうちにゴムが回転してしまう」という問題です。
この一見小さな問題は、使用感を損ねるだけでなく商品価値の低下、果てはブランドイメージの毀損にもつながる可能性があります。
本記事では、パジャマ製造現場目線での実践的なゴムウエストの縫製・テンション管理を詳しく解説し、アナログから抜け出せない現場でも実現可能なアプローチを紹介します。
また、バイヤー目線やサプライヤー目線でも役立つ知識を、現場経験をもとにお届けします。

ゴムウエストがねじれる根本的な原因

原材料と設計の問題

ゴムウエストのねじれは、素材選定と設計段階の課題が密接に関係しています。
まず、ゴムの幅が狭かったり厚さが均一でなかったりすると、摩耗や収縮の際に一部が浮き上がるなどしてねじれを誘発します。
また、ゴムのアタリ(端部の返しや処理)が甘かった場合も、装着の際に引っかかりやすくなります。

設計面では、ゴム通し口の幅とゴム帯のサイズが不適切だと、動作中のズレやねじれが起きやすくなります。
たとえば極端にゴム通し口が広ければ、内部でゴムが自由になりすぎてしまい、ねじれが加速します。

縫製技術の課題

ゴムウエスト部の縫製における「こだわり不足」も大きな要因です。
たとえばゴム帯そのものを生地に直接縫い止めていない、もしくは縫い目が甘く数カ所のみの仮止めに留まっていると、洗濯や着用時の力でゴムが自由回転してしまいます。
また、手作業によるゴム挿入時のテンション管理が均一でない場合、ゴムが部分的に伸びたままとなり、その戻りの際にねじれにつながります。

現場でできる有効な対策

ゴム素材と寸法設計の最適化

ゴムの幅、厚み、伸縮率、巻きしろなど、材料仕様の見直しは製造の根本的な改善につながります。
現場で多く採用されてきた標準仕様を疑い、自社現場・用途・ユーザー層に合わせて「どの幅・どの厚さならねじれにくいか」「伸縮性と耐久性のバランスは最適か」を確認しましょう。

特に、ゴム通し口(スリーブ)とゴム自体のクリアランス管理は重要です。
クリアランスが2mm程度と一般的に言われる中、洗濯や生産設備のクセを鑑みて、現場ごとに0.5mm刻みで検証することが効果的です。

縫製の基本ルールの徹底

最も重要なのは「ゴム止め」です。
ゴムの端部を生地ごとミシンで上下左右しっかりと縫い留めるだけで、ねじれが顕著に減少します。
この工程を、「慣習だから」「生産性優先だから」と省略しないことが現場文化として根付くことがカギです。

また、ゴムをぐるり一周、生地に縫いつける「抑え縫い(押さえステッチ)」や、一定間隔で数カ所を縫うことで中間止めをする工夫も有効です。
特に設備投資が難しいアナログ現場でも、工夫次第で品質向上は十分可能です。

テンション管理の徹底

ゴムウエストの伸縮率(テンション)は人体工学・着用感にも直結します。
現場のオペレーターが同じテンションで縫製できるよう、必ずテンションゲージや専用スケールを用いた管理をルーティン化することが肝心です。

手作業の現場では、治具(ゴムテンションボード)や仕様書に「伸ばす長さ」や「張力の目安」を数値で明記し、だれでも同じ作業ができるよう見える化することが重要です。

アナログ現場でもできる一工夫

古くからの製造現場では、「前例踏襲」「職人の勘頼み」が根強い反面、新たな設備投資やIT化は進みにくい傾向にあります。
ですが、現有資産の中でも改善できるポイントは多く存在します。

ゴム挿入の治具を木枠やアルミで自作する、定規や型紙を活用し寸法ブレを減らす、担当従業員の交替ローテーション時には「勘違いミス」「省略」をチェックリストで防ぐ――そうした”小さな積み重ね”が最終的な品質を安定させます。

また、現場のアイデアから出た「ゴムの滑り止めテープを端部に貼付し、縫製時の逃げ止めにする」「定期的に抜き取り点検・洗濯後のエイジング評価を行う」など、実践知の共有と定着化が重要です。

バイヤー・サプライヤーの視点での品質担保

バイヤーが押さえるべきチェックポイント

バイヤーの立場としては、ゴムウエスト製品の品質をどう見極めるかが重要です。
単にサンプルを一目見て判断せず、「複数回の洗濯テスト後にゴム部のねじれ・耐久性を必ずチェック」「サイズ展開やロット間違いがないか数量管理も徹底」といった現場目線の確認が大切です。

製造工場への指定としては、「必ずゴムの端部を生地に縫い留める」「ゴムの種類と寸法を明記した仕様書と現物照合を義務付ける」などを調達条件に入れると、安定した品質確保につながります。

サプライヤーが理解すべきバイヤーニーズ

サプライヤーにとっては、「ねじれ防止のためにどう工夫しているか」「テンション管理の方法や抜き取り検査方法はどのように実施しているか」という点を説明できることが信頼獲得に直結します。

また、「現場で設備は最新でないが、それでも〇〇の工夫をしている」「前回ロットで発生したトラブルへの対策を〇〇した」など、現場エピソードをバイヤーに伝えることで、伝統的な工場でも信頼と取引拡大につながることが多いです。

今後の工場自動化・DX時代への展望

生産ラインにおける自動化・IoT化が進む中で、ゴムウエスト処理もさらなる精度向上が可能です。
自動テンション測定器や画像認識による異常検知、仕掛品管理ソフトとの連動なども、大手や一部中小メーカーで事例が増えています。
とはいえ、いまだ全体の6割近くは手作業部分を残しているのが実態です。

アナログ現場こそ、こうした最先端事例の部分適用あるいは学びを取り入れることで、「昔ながらのよさ」と「現代人が求める快適さ」の両立につなげられます。
バイヤー・サプライヤー問わず、これからも「どんな現場だから」「何が現場で起きているから」こそ、品質改善と持続的成長のための小さな努力と挑戦を続けていくことが大切です。

まとめ

パジャマのゴムウエストのねじれ問題は、わずかな差が着用感や製品価値を大きく左右する分野です。
原材料・設計見直しから始まる現場での地道な改善と、小さな一工夫の積み上げが、昭和から続くアナログな現場であっても、大きな品質向上と信頼確保につながります。
バイヤー、サプライヤーそれぞれの立場で、問題への理解と解決策の水平展開が、さらに産業全体の競争力強化に直結することを忘れず、こだわりあるものづくりを進めてまいりましょう。

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