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アパレルOEM初心者でも理解できるパーカーの縫製工程とリードタイム

目次
はじめに:アパレルOEMとパーカー生産の全体像
アパレル業界がこれほどまでに急速な変化を見せる中、OEM(Original Equipment Manufacturer)による生産は、ブランドにとってもサプライヤーにとっても必要不可欠な存在です。
特にパーカーは一般消費者への人気が高く、季節やトレンドに関係なく安定した需要があります。
「これからアパレルのOEM生産に携わりたい」「バイヤーとして縫製工程やリードタイムを正確に把握したい」と考える方々、またサプライヤーとしてOEMビジネスに参入したい企業にとって、製造現場の実情と正しい知識は大きな武器となります。
そこで今回は、アパレルOEM初心者でもイメージしやすいようパーカーの縫製工程とリードタイムについて、現場目線で詳しく解説します。
工場内部のリアルな動きから伝統的なアナログ業界特有の慣習まで、最新の業界動向も交えながらご紹介します。
パーカーの縫製工程:全体フローを理解する
アパレルOEMで“モノづくり”を始めるにあたって、まず全体像を明確に理解することは必須です。
パーカーの製造は大きく下記のプロセスに分かれます。
- デザイン・仕様書作成
- パターン作成(型紙)
- 生地・資材手配
- 裁断
- 縫製
- 仕上げ・検品
- 梱包・出荷
ここでは各工程ごとに現場の視点でポイントを説明します。
1.デザイン・仕様書作成
バイヤーとサプライヤー(工場やOEMメーカー)は、最初に「どんなパーカー」を作りたいのか、具体的なイメージ・要望をすり合わせます。
– デザイン画、サンプル、過去の実績品などをベースにアイデアを伝える
– 寸法、素材、カラー、プリントや刺繍など装飾の仕様書(スペックシート)を作成する
ここで「伝えたつもりが伝わっていなかった」などのコミュニケーションロスが多発しやすいのが現実です。
特に老舗アパレルメーカーや伝統的な工場では、“阿吽の呼吸”や“経験値”に頼りがちですが、近年はミスやトラブル回避のためにも仕様書の精度と図面の統一が強く求められています。
2.パターン作成(型紙)
仕様書もとにパターンナー(型紙を作る専門職)がCADソフトや手作業で型紙を製作します。
ここが製品の出来・不出来を大きく左右するため、特に重要な工程です。
近年は3D CADの活用が進む一方、昭和時代からの卓越した手作業職人の存在も根強いのがアパレル縫製の特徴です。
3.生地・資材手配
型紙が固まると、生地やリブ、紐など副資材の選定と発注に移ります。
このとき、在庫品を活用するか、新たに国内・海外から取り寄せるかによってリードタイムが大きく変わります。
特に近年は原材料高騰や物流網の逼迫、SDGs配慮によるオーガニック素材や再生素材の選択肢拡大が工程管理の複雑化にも寄与しています。
4.裁断
手配が出来た生地を、職人や自動裁断機でパターンに従いカットします。
生地の伸縮特性やロス率を考慮しながら効率良く裁断することがコストダウン・品質安定のカギを握ります。
また、パーカーの場合は厚手の裏毛など特殊な生地も多く、カット面のほつれやズレが生じやすいため、経験豊富な現場スタッフの技術が求められます。
5.縫製
カットされたパーツは、複数のセクションやラインを経て組み立て・縫製されていきます。
– 本体(身頃・袖)縫い合わせ
– フード、ポケット、リブ、ファスナーなどの付け作業
– 仕上げステッチや装飾縫い
縫製工程では“誰が・どこで・どの順番で”作業するかが大きく効率と品質に関わるポイントです。
昔ながらの一人多能工によるセル生産と、最新の自動ミシンを活用する部分ライン生産のハイブリッド化が進んでいます。
海外工場でも、検品や一部工程のみ国内回帰させるケースが生じており、“分業派”と“統合派”のせめぎ合いとなっています。
6.仕上げ・検品
縫製が完了したパーカーは、検針・アイロン仕上げや外観チェックを経て全数検品されます。
縫いズレ・縫い目外れ・汚れやミシン油付着など細かな点までチェックしますが、ここも“人による目視”に頼ることが多い工程です。
AIカメラによる自動検品など最新技術も導入されつつありますが、日本のアパレルは“職人技=精度”という文化が色濃く残っています。
7.梱包・出荷
検品後、個包装・まとめ梱包を経て出荷となります。
納品先指定の梱包仕様(タグ・下げ札など)に従いパッキングを行い、国内・海外それぞれの物流事情も加味した出荷手配を行います。
パーカーのリードタイムを決めるファクター
OEMビジネスでは「一体どれくらいで納品できるのか?」が最大の関心ごとです。
パーカーの場合、一般的なリードタイム(初回打合せ~納品まで)は下記が目安です。
– 量産前のサンプル作成:2~3週間
– 生産開始から出荷まで:30~50日程度
ですが、実際の現場は“理論値通りに進まない”場合が圧倒的に多いです。
バイヤー・サプライヤーの両方から見ておきたいポイントを深堀解説します。
発注前段階のコミュニケーション遅延
– デザイン・仕様の変更
– サンプル作成後の追加修正
– 見積依頼後の価格交渉や条件すり合わせ
この“キャッチボール遅延”が全体のスケジュールをいちばん大きく圧迫します。
熟練現場ほど阿吽の呼吸や前例を重んじてしまいがちですが、令和の市場環境ではビジネススピード重視&書面でのすりあわせが求められます。
生地・副資材の調達難易度
– 特殊素材や別注副資材の納期遅延
– 天候や世界的物価高による物流遅延
– サステナブルな新規素材の立ち上げ期間
安価重視や短納期重視で既存在庫品を選ぶか、差別化重視で新規素材や特殊加工を選ぶかで、リードタイムに雲泥の差が出ます。
繁忙期・閑散期の影響
工場には「閑散期」「繁忙期」が存在します。
7月〜9月や年末年始前などは大口注文が重なるため、希望通りの工程ライン確保や人材手配が難航することがあります。
現場側でも、生産スケジュールの柔軟な調整が必要になります。
品質トラブルと再作業
– 仕様書違い
– 材料違い
– 縫いズレや色ブレ
トラブルや不良発覚後のやり直し(再検品・修理・再生産)は、現場においては「避けて通れない現象」です。
経験豊富な工場ほど“見込みバッファ(余裕期間)”を敢えて見込んだ工程管理をしています。
パーカーOEMを成功させるための現場目線アドバイス
1.「図面・仕様書こそ命」常識を徹底
現場スタッフにとって“あいまいな指示”ほど生産の敵はありません。
仕様書には、寸法・色・素材・パーツ位置といった情報はもちろん、縫い仕様や副資材の詳細まで書き込みましょう。
サンプル段階での仮縫いやサイズ合わせも、できる限り写真や図付きで共有すると現場の間違いは減ります。
2.サンプル作成段階でトラブル洗い出しを
工程トラブルや仕様ミスは“量産開始後”よりも“サンプル段階”で発見できれば痛手が少ないです。
– 得意な工場(Tシャツは得意でもパーカーは苦手など)の選定
– 初回生産品の“人”を固定
– サンプルに対する詳細なフィードバック
昭和的な“現場任せ”を改め、納品前のサンプルで慎重にチェックしておきましょう。
3.現地現物・現場主義の重要性
どんなにオンラインで情報共有しても、現場に足を運び「現実を見る」ことには勝てません。
– 材料の現品確認
– 工場設備や縫製環境の見学
– ラインスタッフとの直接対話
OEM担当者やバイヤーが同じ“ものづくりの現場目線”を持つことで、トラブル防止や信頼関係の構築が飛躍的に進みます。
4.リードタイムは「最短」より「確実」を選ぶ
短納期・安納期をうたう工場も増えていますが、実際には「確約できない納期」はリスクのもとです。
– 工程ごとの日数根拠を明確化
– バッファ(余裕日数)の設定
– 部材・生地入荷遅れへの代替案の用意
現場目線で“遅れる可能性のある工程”をあらかじめリストアップし、納期厳守のためのリスクヘッジも計画しましょう。
アパレルOEMと業界の未来動向:アナログからデジタルへの進化
アパレルOEMの現場では、いま“昭和的アナログ業界”から“デジタル&分業化時代”への大きなうねりが起きています。
– 3D CADによる型紙デジタル化
– AI自動検品・IoT縫製ラインの導入
– サステナブル素材や再生品調達分野の拡大
– 少量多品種&短納期生産への対応力強化
しかし、現場では古き良き「職人技」による精度や妥協のなさも依然として重要です。
この両者のバランスをいかに取りながら、時代の流れに合わせた“ものづくり”を進めていくかが、これからのアパレルOEM企業・バイヤー・サプライヤーに求められます。
まとめ
パーカーの縫製工程とリードタイムは、一見シンプルなようで実は細かな現場の工夫や経験が詰まっています。
昭和的な慣習によるコミュニケーションエラーや突発的な工程遅延も、まだまだ“現場のリアル”として存在しています。
ですが、仕様書や工程管理のデジタル化、AIや自動化の導入、サステナブルな材料選定といった新しい流れも着実に広がっています。
現場と本部、サプライヤーとバイヤー、それぞれの立場で正しい知識と共感を持って取り組むことが、より良いアパレルOEM生産へのカギとなるのです。
これからOEMビジネスに携わる方も、現場を支える方も、ぜひ現実や時代の変化にアンテナを張りながら、ものづくりの新たな可能性に挑んでください。
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