OEMパーカーの品質を左右する縫製仕様と糸番手の選び方

はじめに：OEMパーカーの品質、本当の決め手はどこにある？

OEMパーカーの品質を判断する際、多くのバイヤーやサプライヤーは、表面的な生地の厚みやカラーバリエーションに注目しがちです。

しかし、製造業の現場で20年以上培った経験から断言できるのは、本質的な品質の良し悪しは「縫製仕様」と「糸番手」に大きく左右される、ということです。

昭和時代から続く日本のアパレル生産現場では、時には「これが業界の常識」とされる慣例に縛られ、縫製仕様や糸選定が適切にアップデートされていないケースも多く見受けられます。

本記事では、製造の最前線で得た実践知と時代の変化を読み解くラテラルシンキングを駆使し、OEMパーカーの品質に直結する「縫製仕様」と「糸番手」の選び方について、バイヤーやサプライヤー双方の視点で掘り下げてご紹介します。

OEMパーカーの品質を左右する「縫製仕様」の基礎知識

なぜ縫製仕様が重要なのか

パーカーは日常着として酷使される衣服の一つです。

そのため、縫製仕様が甘いと、洗濯や着脱の繰り返しで糸がほつれたり、縫い目から破れが発生しやすくなります。

せっかく良質な生地を使っていても、縫製仕様が弱ければOEM商品としての評価は大きく下がってしまいます。

代表的な縫製仕様一覧

1. 本縫い（シングルステッチ）
2. 二本針（オーバーロック＋カバーステッチ）
3. フラットシーマ（フラットロックミシン）
4. 三本針
5. パイピング始末

これらはパーカーの製造現場でよく使われる縫製仕様です。

中でも、裏毛パーカーなどは「二本針」「三本針」「フラットシーマ」の採用が多く、汎用性と耐久性の高さが求められます。

各縫製仕様の特長と使い分けポイント

– 本縫い（シングルステッチ）
もっともシンプルな縫製方法で、コストは抑えられる反面、強度は最も低い部類です。

古くから採用されてきた方式ですが、本格的なスポーツ用途など負荷の大きい場面には不向きです。

– 二本針
オーバーロックとカバーステッチを組み合わせることで、縫い目の強度と伸縮性を両立します。

「長く着られて、洗濯でも傷みにくいOEMパーカー」を目指すなら、二本針仕様がおすすめです。

– フラットシーマ
縫い目がフラットになり、見た目にも高級感、着用時の肌触りも向上します。

高価格帯やブランド向けのOEMパーカーでよく使われます。

– パイピング始末
縫い代をパイピングテープでくるみ、耐久性と見栄えの良さをプラスします。

袖口や裾、フードまわりなど、摩耗の多い箇所に部分的に使うことも増えています。

製造現場・コストとのバランス

高度な縫製仕様を採用するほど、工程は細かくなり、コストも上昇します。

また、職人の熟練度や工場の対応力によって品質のバラつきも出やすくなります。

OEMバイヤーが求める価格と品質の両立を図るためには、どの部位にどんな縫製仕様を採用するかの「メリハリ設計」がとても重要です。

サプライヤー側の営業担当や生産管理担当は、お客様の用途・ターゲット価格・ブランドコンセプトをしっかりヒアリングしたうえで、最適な仕様提案をするのが信頼獲得のカギとなります。

パーカーの耐久性や風合いを決める「糸番手」の選び方

糸番手とは？パーカーに最適な番手の考え方

糸番手とは、縫製で使用される糸の太さや種類を示す指標です。

一般的に「糸番手が小さいほど太い糸、番手が大きいほど細い糸」となります。

OEMパーカーの縫製に使われる糸番手は、20番手前後が標準的ですが、意匠性や用途によって12番手、30番手など幅広い選択肢があります。

糸番手とパーカーの強度・見栄えの関係

パーカーは裏毛やスウェット素材を使うことが多く、縫い合わせる生地自体が分厚いケースが大半です。

– 20番手の糸
一般的なパーカーでは20番手のスパン糸またはコアスパン糸を採用することで、バランスの良い強度と見栄えが得られます。

– 12番手の糸
ワークウェアやヘビーオンスのパーカーで特に耐久性を求める場合は、さらに太い12番手糸を使い、縫い目そのものもデザインアクセントとして活用することもあります。

– 30番手の糸
逆に、薄手の素材やライトウェイトなパーカーには30番手程度の細い糸を使うことで、縫い代のゴワつきを抑え、軽い仕上がりにできます。

縫製糸の素材選びも重要なポイント

パーカーの用途によっては、ポリエステル芯を持つコアスパン糸で耐久性を高めたり、コットン100％の糸でナチュラルな風合いを引き出すのも一案です。

特に家庭用洗濯機での縮みや色落ちが心配なOEMパーカーでは、糸自体に防縮加工・防色加工が施されているかにも注目したいところです。

最新では再生ポリエステルやリサイクル糸の採用事例も増えており、サステナブルな観点からも糸選びの幅が広がっています。

昭和から抜け出せないアナログ現場のリアルと、今後の展望

職人頼みの旧来型とデジタル化の狭間で

日本の多くの縫製工場は、昭和時代から続く熟練職人に頼った生産体制がいまだ主流です。

ミシンの微調整や糸の締め具合など「経験がモノをいう」世界であるため、現場ごとのバラつきや属人的ノウハウの伝承が令和になった今も大きな課題です。

一方で海外では、自動化やAIによる画像検査システムなどが急速に普及しており、縫製品質の「見える化」や「均質化」が進んでいます。

バイヤー・サプライヤーが知っておくべき最新動向

– デジタル仕様書（テクニカルパック）の導入が加速
– 自動縫製機の実装や多工程の一元化
– 糸・縫製強度の客観的な数値管理
– サスティナブル素材・糸の導入要求

OEMバイヤーは、工場ごとの「手作業依存度」や「最新設備の保有状況」についても積極的に確認することで、納期遅延や品質トラブルのリスクを低減できます。

サプライヤーもまた、従来型の「職人頼み」から一歩抜け出し、設備投資やDX推進によって新たな付加価値旋風を起こす時代に突入しています。

ラテラルシンキングで「仕様提案型パートナー」へ

価格や短納期だけを競い続ける時代は終わりつつあります。

バイヤーから本当に求められるのは、「仕様提案型」のOEMパートナーです。

縫製仕様や糸番手、その背後にある工場の生産体制や品質管理、さらには商品の用途・販売チャネルまでを見据えて提案できるかどうかは、これからのサプライヤーにとって最大の差別化ポイントとなるでしょう。

まとめ：「縫製」と「糸」を制する者がOEMパーカーを制す

OEMパーカーの品質を左右するキーポイントは、売場やEC写真からは見えにくい「縫製仕様」と「糸番手」の選定にこそあります。

バイヤーは仕様書の中で必ず縫製仕様や糸番手を明文化し、現場サイドともすり合わせを行うことで、製造トラブルを未然に防ぎやすくなります。

サプライヤー側は、自社工場で対応可能な縫製仕様の特徴や強みを正しく理解し、それを顧客視点で翻訳して提案する姿勢が不可欠です。

昭和の「言わなくてもわかる」職人芸から、令和の「仕様で語れる」ものづくりへ。

OEMパーカー製造の現場では、今こそ縫製と糸にもう一度スポットライトを当て、バイヤーとサプライヤーが“共創”する新しい品質基準を築いていく時代だと、私は確信しています。